Bluetooth(R) 長距離通信機能(LE Coded PHY)に関する 評価結果を発表  長距離通信機能により最大距離約210mを安定的に通信、 Bluetooth Classic Class 1と比較し圧倒的な通信距離を発揮

安定したBluetooth通信を実現するには、通信環境下における障害物の有無が鍵

 株式会社ムセンコネクト(本社:東京都港区、代表取締役:水野 剛、以下『ムセンコネクト』)は、Bluetooth 5.0から採用された長距離通信機能であるLong Range(LE Coded PHY)に対応したBluetooth Low Energy(以下、『BLE』)モジュール『LINBLE-LR1』を開発し、様々なシチュエーションにおける通信性能評価を実施しましたのでお知らせいたします。

 これまで良好な環境下におけるLong Range対応Bluetoothモジュールの最大通信距離性能に関する報告実績はありましたが、最近の様々なシチュエーションにおけるBluetooth製品の開発・応用事例が増加する中、長距離通信機能に関する実態やその課題を定量化し、特に産業機器メーカーのエンジニアに資する有益な情報公開を行うことを目的に本評価を実施しました。



<調査結果概要>

(1)直線の見通しが確保できる場所での通信

 PHYによって、通信距離性能が異なり、2M PHY < 1M PHY < LE Coded PHYの順に通信距離が長くなる。


図表1.LINBLE-LR1のPHY違いによる通信距離比較


 同環境でBluetooth Classic Class 1モジュール(Tx Powerは+17dBm)との比較計測を行った結果、長距離通信機能を用いたLINBLE-LR1(Tx Powerは+8dBm)の最大通信距離は約3倍以上に伸びていることが判明。Tx Power(通信最大出力)が小さいLINBLE-LR1の不利な条件を考慮しても、LE Coded PHYの通信距離性能は飛躍的に向上していると推察される。


図表2.LINBLE-LR1(LE Coded PHY)とZEAL-S01(Classic Class1)の通信距離比較


(2)屋外・住宅地での通信

 LE Coded PHYで計測した結果、全22箇所の観測点の内、定点との通信が確認できたのは直線の見通しが確保できていた6箇所(全体の27%)のみに留まった。一方、定点から建物を隔てた真裏に位置するポイント(10)(定点からの直線距離42m)をはじめ、通信できなかった残りの16箇所は建物などの障害物により電波を遮蔽されてしまい、通信することが難しくなったと推察される。


図表3.LINBLE-LR1の屋外・住宅地通信評価結果(×が定点、黄色い〇が通信確認ができたポイント)


(3)屋内での通信

 オフィス2階の端に定点を設け、2階と1階にそれぞれ3箇所、計6箇所の観測点を設置。LE Coded PHYで計測した結果、同じ階の全てのポイントにおいて定点との通信が確認できた。


図表4.LINBLE-LR1の屋内通信評価結果(×が定点)


 但し、距離が定点から離れる(通信距離が長くなる)ほどスループットが低下した。更に異なる階層間(1階と2階)ではスループットが大きく低下することが判明。ポイント(5)、(6)では通信自体ができなかった。建物構造上同じ階の壁などよりも階層を構成する鉄骨構造などの方が遮蔽物としての影響が大きく、電波を通しにくくしていると推察される。



■LINBLE-LR1の屋内通信評価結果(スループットデータ)

観測ポイント(直線距離、階数):【参考】定点から1m地点

Write Command(kbps)     :39.5

Notification(kbps)     :39.5


観測ポイント(直線距離、階数):(1)(13m、2階)

Write Command(kbps)     :27.4

Notification(kbps)     :25.0


観測ポイント(直線距離、階数):(2)(25m、2階)

Write Command(kbps)     :9.4

Notification(kbps)     :6.0


観測ポイント(直線距離、階数):(3)(38m、2階)

Write Command(kbps)     :3.4

Notification(kbps)     :3.5


観測ポイント(直線距離、階数):(4)(15m、1階)

Write Command(kbps)     :6.9

Notification(kbps)     :2.8


観測ポイント(直線距離、階数):(5)(26m、1階)

Write Command(kbps)     :-

Notification(kbps)     :-


観測ポイント(直線距離、階数):(6)(40m、1階)

Write Command(kbps)     :-

Notification(kbps)     :-



(4)高層ビルの高層階と地上間での通信

 地上18階(高さ約72m)と真下に位置する地上との間で通信した結果、LE Coded PHYは通信成功率が100%だった一方、1M PHY及び2M PHYは通信成功率0%の結果となった。


写真1.高層階での通信評価例(モジュールは窓に貼り付けた状態)


 なお、高層階側のLINBLE-LR1を窓から1mずつ遠ざけていくにつれ通信成功率が低下し、窓から1mの距離で通信成功率は60-80%、窓から2mの距離で通信成功率は20-40%、窓から3mの距離で通信成功率は0%となった。この結果から、LE Coded PHYの電波は直進性が強く、あまり回折現象は期待できないことが推察される。


※尚、本評価結果については、以下のWEBページにて全データを公開中

https://www.musen-connect.co.jp/blog/course/product/coded-phy-long-range-ble-module-communication-distance/


<評価結果からの考察>通信距離の長さに関わらず安定したBluetooth通信を実現するには、通信環境下における障害物の有無が鍵となる。


 今回の評価では、長距離通信機能に関する様々な優位性や課題を定量的に確認できた。最後に安定したBluetooth通信を実現するという課題に対して、特にBluetooth機器の製品開発側がどういった点に気を付けるべきかについて考察したい。

 今回の評価によって、見通しがよい場所においてはBluetooth 5.0の長距離通信(LE Coded PHY)機能を用いることで、従来技術(Classic Class 1)よりも長距離通信が可能であることが分かった。その一方、通信距離の長さに関わらず障害物による電波の遮蔽やBluetooth本来の特徴である直進性の影響を受けると安定したBluetooth通信が難しいことも確認できた。特に、あらゆるシチュエーションでの安定的なBluetooth通信を担保したい場合、最大通信距離や通信最大出力等のカタログ数値からモジュールを選定することは必ずしも有効ではない。

 それよりも、障害物があるようなユーザーの利用シーンを想定し、モジュール選定後に行う実地上での評価プロセス及びその結果に、より重点を置くべきである。

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