化学エネルギーのみで駆動するゲルポンプの機能を実証 医療デバ...

化学エネルギーのみで駆動するゲルポンプの機能を実証  医療デバイスやソフトロボット分野での応用期待

芝浦工業大学(東京都港区、学長:村上 雅人)機械機能工学科前田真吾准教授ら国際的な研究グループは、化学エネルギーのみで駆動する人工心臓のようなゲルがポンプとして機能することを実験的に証明しました。ゲルのベローゾフ・ジャボチンスキー(BZ)反応による自発的な運動を動力源とするため、電子部品などの複雑な機構を必要としません。このポンプは生体との親和性が高く、自動的に薬を服用するドラッグデリバリーなどの医療分野への応用が考えられます。また、化学反応を力学的エネルギーへ変換し利用を考える多くの研究分野で活用が期待できます。

(A)化学液中で収縮と膨張を繰り返すBZゲル(B)BZゲルの振動エネルギーを、伸縮性膜を通じてオイルの流れへエネルギー変換する様子


※本研究成果はオンラインジャーナルのScientific Reports に7月30日に掲載されました。

https://www.nature.com/articles/s41598-020-69804-3



■ポイント

BZゲル(BZ反応で動く刺激応答性高分子ゲル)の熱力学的サイクルを最大化することで,BZゲルが収縮・膨張する量を拡大し、ゲルと膜による単一構成物でできたポンプを実現させた。

BZゲルの基本的な物理構造、力学的エネルギー量を調査、最終的に人工心臓のような働きをする、電子部品を必要としない自律型ポンプが完成した。


(A)化学液中で収縮と膨張を繰り返すBZゲル

論文名    :Autonomous oil flow generated by self-oscillating polymer gels

掲載ジャーナル:Scientific Reports

DOI      :10.1038/s41598-020-69804-3

(B)BZゲルの振動エネルギーを、伸縮性膜を通じてオイルの流れへエネルギー変換する様子



■研究背景

あらゆるメカトロニクス機器は、ウェアラブルデバイスなどの進化に複雑さと小型化が進んでおり、機器に必要な部品点数も増加しています。今回Scientific Reports誌で発表した研究は、このメカトロニクス機器における複雑さを根本から解消するものです。機器の動力源を電力ではなく、化学反応に代替することで、電源、アクチュエータ、電子部品などの要素をBZ反応で動く刺激応答性高分子ゲルに集約し、シンプル化することを提案しています。しかし、これまでBZゲルの力学的エネルギーは変化量が小さく、またゲル自体を化学液中に浸す必要があったため、応用に限界がありました。そこで、実用可能な形を提案できるよう実証実験を行いました。



■研究概要

まず、BZゲルの膨張・収縮によって発生する力学的エネルギーを増幅させる手法を確立しました。事前にBZゲルを収縮させた状態で化学液と共にカプセルに閉じ込めることで、BZゲルの膨張量を最大化し、化学液の扱い辛さを軽減させます。そして、BZ反応による動きが伸縮性のある膜の変形を介して外部の油を加圧します。このことで、加圧された油が力学的エネルギーを媒介し、人工心臓のように液体を前後に動かすエネルギーとなります。このコンセプトを実証したものが今回の発表となります。


研究助成

本研究はJSPS科研費、新学術領域研究「ソフトロボット学」JP18H05473, 基盤研究(B) JP16H04306の助成を受けたものです。


主要論文著者

芝浦工業大学 知能材料学研究室

・Prof. Shingo Maeda

・Dr. Zebing Mao


スイス連邦工科大学ローザンヌ校

・Dr. Vito Caccuciolo(Ecole Polytechnique Federale de Lausanne, EPFL)

Soft Transducers Laboratory, Institute of Microengineering, School of Engineering

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