UBS/PwCビリオネアレポート2019: ビリオネア支配企業のリターンは、市場平均のほぼ2倍  ビリオネア保有資産は5年にわたって増加した後、2018年に下落

UBS証券株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:中村 善二)は、ビリオネアの資産形成について継続的に調査を行うレポート2019を発表いたしました。


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主な調査結果:

・2018年末までの15年間におけるビリオネアが支配する上場企業のリターンは17.8%(MSCIオールカントリー・ワールド指数(ACWI)のリターンは9.1%)

・ビリオネアが保有する資産は5年間増加した後、ドル高と株式市場の変動性の高まりにより8兆5,000億米ドルに減少

・米州ではビリオネアが保有する資産がわずかに増加。この12カ月で33人の新たなビリオネアが誕生。

・既存企業と創造的破壊をもたらす新たな市場参入者によって活気づけられ、2018年はテクノロジーセクターのビリオネア資産が最も増加

・ビリオネアは、社会貢献活動を通じてインパクトを起こす活動に自らのビジネス経験を活用

・女性ビリオネアの数は過去5年間で46%増加



チューリッヒ/ロンドン、2019年11月8日 ― ビリオネアが支配する企業(以下、「ビリオネア企業」)のリターンは、過去15年で市場の平均パフォーマンスのほぼ2倍 ― UBSとPwCの年次レポート、ビリオネア・インサイトの2019年版『ビリオネア・インサイト2019:ビリオネア効果』で明らかになった調査結果のひとつです。さらに同レポートでは、ビリオネアが保有する資産(以下、「ビリオネア資産」)が5年にわたって増加した後、2018年に3,880億米ドル減少したという事実も明らかにされています。


アジアのビリオネアの資産は、約4倍に増加した成長著しい5年を経て、調整局面に入りました。対照的に米州では、傑出した米テクノロジーセクターの起業家に牽引される形で、ビリオネア資産は2018年にわずかながら増加しました。昨年に成長が鈍化しましたが、ビリオネア資産は5年前より3割超(34.5%)、金額にして2兆2,000億米ドル増加しています。


UBSグローバル・ウェルス・マネジメント、ウルトラ・ハイ・ネット・ワース責任者、ジョセフ・スタッドラーは今回のレポートに関して次のように述べています。「過去5年間にわたるビリオネアブームを経て、自然な調整局面に入りました。ドル高に加えて、厳しい地政学的環境を背景にした株式市場の不確実性の高まりが、今回の下落の要因です。」

「それでもなお、ビリオネアのビジネスが繁栄し続けることは明白です。ビリオネアは、株式市場の平均を常に上回るパフォーマンスを上げる企業を創設し、経営しています。ビリオネアは、より影響力をもった環境的、社会的変化を促す新たな方法を模索しており、こうしたビジネスマインドを社会貢献活動にも取り入れています。この『ビリオネア効果』は世界中で散見され、減速する兆しはほとんどありません。」


本調査ではさらに以下のような事実が明らかになりました:


■パフォーマンスを向上させる「ビリオネア効果」

・2018年末までの15年間で、株式市場に上場するビリオネア企業のパフォーマンスは、世界的なベンチマーク指標を8.7%上回りました。

・上場、非上場を問わず、ビリオネア企業の2018年末までの10年間の自己資本利益率(ROE)は16%超でした。これに対して、MSCIオールカントリー・ワールド指数の平均は11%をわずかに上回る程度でした。

・こうした「ビリオネア効果」は、賢くリスクを取り、長期的観点から投資を行うビリオネアの性質にその要因を見出すことができるでしょう。


PwCスイス、パートナー兼スイス・ヘッド・ウェルス・マネジメント、マルセル・チャンツは次のように述べています。

「まずEUがサステナブル・ファイナンスに対する取り組みを始め、続いて国連の持続可能な開発目標(SDGs)がいかに個人と組織がサステナビリティを促進するべきかを世界に示しました。この数年でより良い社会を目指して自らの行動を変え、刷新し、より戦略的に実践しているのは一代で資産を築いた起業家たちですが、一般市民はその後を追えばよいというものではありません。」

「ビリオネアが所有する8兆5,000億米ドルの総資産を全額寄付したとしても、年間7兆米ドルとも言われるSDGsの資金不足額を埋めることはできません。自分たちの社会的責任を感じ、世界に蔓延する問題に積極的に取り組むビリオネアが増えています。ビリオネアのリーダーシップのもと、テクノロジーを発展させ、変化を起こすことこそが私たち全員が担うべき役割なのです。」



■世界の社会貢献事業を変えるビリオネア

・一代で資産を築いたビリオネアは、世界をより良い場所に変える新たな方法を模索しています。伝統的に行われてきた助成金の支給は戦略的な社会貢献活動へと進化し、彼らの野心を支えています。

・変化をもたらすために、他のビリオネアやNGO、慈善団体、政府機関と協働する社会貢献活動家が増えています。

・ビリオネアは自らの財産、問題解決能力、ネットワーク、影響力を使って、大きなインパクトを及ぼす新たな社会貢献活動のモデルを考案しようとしています。



■ビリオネアランキングに入る女性が増加

・女性ビリオネアの数は5年間で46%増加し、同期間の男性ビリオネアの増加率(39%)を上回りました。2013年は160人だったのに対して、現在は233人の女性ビリオネアがいます。

・アジアでは、女性ビリオネアの半数以上(57%)が一代で資産を築いた人たちです。

・一代で資産を築いて2018年にビリオネアとなった女性の10人のうち4人が、消費・小売セクターで起業した人たちです。



■起業投資家色を強めるビリオネア

・UBSの顧客アドバイザー10人に約4人(39%)が、ビリオネアの顧客が過去1年以内に事業を購入したと話しています。同時に、多くの顧客アドバイザー(33%)が過去12カ月で自分の顧客が第三者への株式売却かIPOを通じて事業を売却したと話し、またほぼ同数の顧客アドバイザー(30%)が、自分の顧客が来年売却を行うだろうと予想しています。

・顧客アドバイザーの5分の1超が、ビリオネアの顧客が、5年前から記録的に増加した資産を守るために投資戦略を大幅に変えたと話しています。また、13%のアドバイザーは、今後12カ月で自分の顧客が投資戦略を変更するだろうと予想しました。



地域別の特徴は次の通りです:

・全体の減少傾向に反し、米州はビリオネア資産総額が0.1%増加しました。ビリオネアの総人数も2018年末までに4.8%増加して749人になりました。この増加は米テクノロジーセクターの有力ビリオネアが牽引したためですが、従来からのビリオネアの資産も増加を維持し、新しいビリオネアも大幅に資産を増やしました。

・欧州・中東・アフリカ地域では、ビリオネア資産が約6.8%減少し、2兆4,000億米ドルになりました。欧州のビリオネアの数は4.9%減少し、598人になりました。

・アジア太平洋地域は引き続き、世界で最も多くのビリオネアを抱える地域です。しかし、同地域のビリオネアの数は2018年に7.4%減少して754人になりました。この人数を見るだけでは大きな入れ替えがあったことが見えませんが、実際には169人がビリオネアとしての地位を失い、新たに110人がビリオネアになりました。中国は2018年の1年間で56人のビリオネアを輩出し、これは1週間に1人のペースにあたります。


5年目となったビリオネア・インサイト・レポートは、UBSとPwCの広範な顧客ネットワークとデータへのアクセスを活用し、世界のビリオネアについての一層深い理解を促すために作成されました。調査の過程で、ビリオネアとその後継者との30回超におよぶ対面インタビューを実施したほか、今回の調査では初めて100人を超えるUBSのアドバイザーにアンケートを行いました。


2019年UBS/PwCビリオネアレポートとこれまでのレポートは、下記のURLからダウンロードいただけます。

英語版 : https://www.ubs.com/billionaires または https://www.pwc.ch/billionaires

日本語版: https://www.ubs.com/global/ja/wealth-management/uhnw/billionaires-report/billionaires-report-2019.html



■UBSについて

UBSは、世界各国の富裕層個人、法人、機関投資家およびスイス国内のリテール顧客に対し、金融アドバイスとソリューションを提供しています。グループの運営組織は、グローバル・ウェルス・マネジメント、インベストメント・バンク、アセット・マネジメント及びパーソナル&コーポレート・バンキング4つの事業部門と、管理部門を統括するコーポレート・センターで構成されています。UBSの事業戦略は、事業部門それぞれが有する競争力を基に、各部門の株主に対する魅力的で持続的な利益還元を実現すべく、特に秀でた分野に経営資源を集中することで、事業を展開する業務や地域において成長するというものです。全ての事業が高い資本効率を誇り、活動する個々の市場で競争優位性による恩恵を享受しています。

スイスのチューリッヒに本拠を置くUBSは、世界の主要金融市場を含む50の市場で事業を展開し、約67,000名の従業員を擁します。内31%が米州、32%がスイス、19%がスイス以外の欧州・中東・アフリカ地域、18%がアジア太平洋地域に在籍しています。UBSの株式はスイスおよびニューヨークの各証券取引所に上場されています。日本においてはUBS証券株式会社、UBS銀行東京支店、UBS SuMi TRUSTウェルス・アドバイザリー株式会社、UBSアセット・マネジメント株式会社、UBSジャパン・アドバイザーズ株式会社の五法人を通じて、法人・機関投資家および富裕層個人のお客様向けに様々な金融商品とサービスを提供しています。



■PwCについて

PwCでは社会における信頼を築くこと、そして重要な問題を解決することを目的としています。弊社は157カ国にわたる事業者のネットワークで構成されており、27万6,000人を超える従業員は保証、アドバイザリー、税務の各分野においてクオリティの提供にまい進しています。PwCスイスは、スイス国内14拠点とリヒテンシュタイン公国内1拠点に3,300人を超える従業員とパートナーを抱えています。詳しい情報を知りたい方、ご自身にとって重要な事柄を私たちに伝えたい方は、 https://www.pwc.ch にアクセスしてください。PwCとは、PwCのネットワーク、またはそれぞれが別々の法人である、1社もしくは複数のPwCのメンバーファームを意味します。詳細については、 https://www.pwc.com/structure をご参照ください。



■レポート作成手法

第1節の調査手法

第1節のリサーチに当たり、まずはビリオネア企業を特定する必要がありました。そのため、2018年末時点のデータベースに含まれている2,101人のビリオネアから、次の支配の定義を用いて、ビリオネア企業を特定しました。

・企業の株式を20%以上保有する

・企業の議決権を30%以上保有する

・株式の保有が20%、議決権の保有が30%に満たない場合でも、ビリオネアが企業を経営していることが明らかである



■目標と範囲

私たちは、下記の3つの方法でビリオネア企業のパフォーマンスを評価しました。

・公開株式市場の株価パフォーマンスを通して(指数を作成して)

・異なる所有モデルのビリオネア支配企業の収益性を比較して

・IPO前後の収益性を分析して


これら3分野の分析で用いられる方法については、以下をご参照ください。



■公開株式市場の株価パフォーマンス

2003年末、2008年末、2013年末、2018年末時点でのビリオネア企業を特定した上で、支配するビリオネアの資産の主な源泉である企業を絞り込みました。絞り込んだ中から、ブルームバーグをデータソースとして用い、2003年1月1日から2018年12月31日までの604社の株価パフォーマンスデータを収集しました。絞り込んだ企業について2003年、2008年、2013年の平均年率リターンを計算し、選択バイアスを減らすために、5年ごとにビリオネア企業のグループが変わる指数を作成しました。この指数を、MSCI ACWIのセクターおよび地域加重が反映されるように調整します。私たちは、時価総額加重型ポートフォリオよりも、単純平均型ポートフォリオのリターンを重視しました。対象企業の数に関して言うと、どちらの構成企業(ビリオネア企業とMSCI ACWI)も過去15年で増加しました。しかしながら、割合(%)では、ビリオネア企業の増加のほうが上回りました。



■異なる所有モデルの下での収益性

この分析のために、2018年のリストに含まれているビリオネア企業に注目し、それに非上場企業も追加しました。そして、ビリオネアの資産の主な源泉と判断され、2008年から2018年の10年間のデータが入手可能な535社を選びました。1年当たりの平均自己資本利益率(ROE)を計算し、異常値を除き、収集したデータがすべての地域およびセクターをカバーしていることを確認しました。その後、ROEをMSCI ACWIの平均と比較しました。



■IPO前後の収益性

ブルームバーグのデータに基づき、2009年から2019年までに新規上場した102のビリオネア企業(例外的な企業を除く)を特定しました。これら企業について、新規株式公開(IPO)までの3年間と、その後の6年間の平均ROEを計算しました。その後、平均ROEを、2009年1月から2019年7月までにIPOを行った9,069の非ビリオネア企業の平均ROEと比較しました。

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