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職場のランチ・飲み会はどう評価されているか

― 「職場のコミュニケーションに関する調査」より ―

 第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所(社長 矢島 良司)にて、ライフデザインレポート『職場のランチ・飲み会はどう評価されているか― 「職場のコミュニケーションに関する調査」より ―』を公表いたしました。


図表1 「お互いの状況をある程度把握しているなど、相互理解が図れている」とする割合

<職場における相互理解に対する意識>
 当研究所では、2014年9月に全国の企業に勤務する人1,440人を対象に「職場のコミュニケーションに関する調査」(インターネット調査)を実施した。サンプルの構成としては、中小企業(従業員数300人未満)と大企業(従業員数300人以上)についてそれぞれ720人ずつを抽出し、正規職員の管理職と非管理職、非正規職員に対して同数ずつを調査対象とした。それらを性別にみた12区分のサンプル数はそれぞれ120である。さらに、2010年に実施した同様の調査から、2014年調査にあわせた条件で731サンプルを取り出し、比較を行った。

 この結果によれば、職場(ここでの「職場」とは、勤め先の中で主に仕事をしている部・課などを指す)において「お互いの状況をある程度把握しているなど、相互理解が図れている」という設問に対し「そう思う」(「そう思う」と「まあそう思う」の合計)とする割合は、大企業の女性管理職を除くと2010年調査に比べて低下している(図表1)。他の調査項目をみても、大企業の女性管理職はコミュニケーション能力に対する自己評価が突出して高く、職場でのランチや飲み会への参加率が高いことがわかっている(図表省略)。
 2010 年・2014 年調査ともに、非管理職より管理職で、男性より女性で「そう思う」とする割合が高い。2014 年調査においては非正規社員についてもたずねたが、職場の相互理解が図れていると考えている割合は非正規社員の男性で最も低く、特に中小企業の非正規社員男性では2割程度だった。

<職場でのランチ・飲み会の実態>
 職場のコミュニケーションを活性化する機会は、ランチや終業後の飲食(以下、「飲み会」)のような場で多く持たれてきたが、その実態は今日どのようになっているのだろうか。
 図表2・3は、職場におけるランチ・飲み会についての実態をたずねたものである。
 「ランチタイムは職場の人と過ごすことが多い」とする人は、全体的に減少傾向にあり、特に大企業よりも中小企業で回答割合が低かった。特に正規社員の非管理職では、大企業・中小企業を問わず減少幅が大きいことがわかる。
 一方、「飲み会などの会合や付き合いがよくある」についてみると、全体として「ランチタイムは職場の人と過ごすことが多い」よりも回答割合が低く、「飲み会などの会合や付き合い」自体がここ数年あまり多くない実態が垣間見える。これについても、大企業よりも中小企業で回答割合が低い。
 近年、女性管理職が増加し、非正規社員の占める割合も上昇した。また、育児や介護に携わる就労者が増え、働き方や就労時間も多様となった。特に飲み会に関しては時間帯が夜ということもあり、小さい子どもがいたり家族に要介護者がいたりする場合などは参加しにくいという事情がある。さらに就業時間外のプライベートな時間に職場の人と集うことに対して、個人の事情を優先できる空気も広がったように思われる。こうした様々な変化や多様化が、職場におけるランチや飲み会の機会を減少させたものと推察される。

<職場でのランチ・飲み会の評価>
 それでは、職場でのランチ・飲み会といった交流の機会は、就労者にどのように評価されているのだろうか。「ランチタイムに職場の人たちと交流すること」「業務終了後に職場の人たちと飲みに行くこと」それぞれについて、回答してもらった(図表4・5)。その結果、ランチ・飲み会ともに、「必要」「楽しい」としたのは大企業の管理職男性で最も多かった。
 ランチ・飲み会ともに、「必要だと思う」とする人は全体平均で約4割だが、「楽しい」と考えている人は全体平均で約55%いるとの結果となった(図表省略)。

<職場での交流をどう図るか>
 今回の調査から、3つの点が指摘できる。まず第1に、職場の相互理解が図れていると感じている人の割合が減少している点である。第2に、職場の人とのランチ・飲み会の機会が減少していることがあげられる。ただし職場の人とのランチ・飲み会について、「職場で必要」と考えている人は4割程度で、2010 年調査と比して減少してはいるものの、「楽しい」と感じる人はある程度の割合を占めていた。第3に、これらの結果において、管理職と非管理職、正規社員と非正規社員でかなりのギャップがあることが確認された。特に今回、非正規社員の男性は職場の相互理解が図れていないと感じている人が他の属性より多く、ランチ・飲み会についても楽しいと感じている人が相対的に少ないとの結果を得ている。

 ランチ・飲み会のとらえ方は立場や相手によって異なるものであり、単にそうした機会を持てばコミュニケーションが図られるということには直結しない。しかし、調査で明らかとなったように、ランチや飲み会の機会を「楽しい」と感じる人は全体の半数以上おり、多くの人がこうした交流の機会に否定的であるというわけではないことが確認された。ランチや飲み会の機会を創出することで、コミュニケーション活性化につなげられる余地はあると思われる。
 むろん、職場の親睦を図るためのコミュニケーションは必ずしもランチや飲み会で行わなければならないものではない。ランチタイムや業務終了後はプライベートな時間であり、職場の人と一緒に過ごす義務はない。しかも、育児・介護中の人や時短勤務の人など、通常と異なる勤務形態の人は、一般的な勤務時間で就労する人たちと時間を合わせることが難しいケースも多い。近年では、コミュニケーションスペース等を設けるなど交流を意識した職場レイアウトを模索したり、ワールド・カフェ方式*1でのミーティングを導入して業務に交流やコミュニケーションの要素を取り入れる職場もある。
 1日の大半を過ごす職場で円満な人間関係を構築・維持するためには、個人の状況や事情に配慮しつつ、職場それぞれに応じた工夫を施しながらコミュニケーションの機会を持つ必要がある。相互理解の高まりとともに職場のコミュニケーションも活性化し、社員の満足度の向上も図れるのではないだろうか。

上席主任研究員 宮木 由貴子(研究開発室 みやき ゆきこ)

【注釈】
*1 1990 年代にアメリカで考案された手法。カフェにいるようなリラックスした環境で、少人数のテーブルごとに、自由に対話をする。キーワードを可視化するなどして情報を共有しつつ、メンバーの組み合わせを数回変えながら対話を発展させ、相互理解を進めながら新しい発想や集合知を形成する手法。

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