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乳酸菌が作る機能性脂肪酸「HYA」が ピロリ菌の増殖を抑制することを発表

 医薬品の製造販売を手掛ける日東薬品工業株式会社(本社:京都府向日市、代表取締役社長:北尾 哲郎)は、3月15日(木)~18日(日)に名城大学で開催された日本農芸化学会2018年度大会にて、京都大学大学院農学研究科 小川 順教授、北里大学北里生命科学研究所 松井 英則講師とランチョンセミナーを開催し、機能性脂肪酸HYA(以下 HYA)のピロリ菌増殖抑制効果について発表しました。


HYA


 HYA(10-ヒドロキシ-シス-12-オクタデセン酸)は、植物油中に多く含まれるリノール酸[*1]に乳酸菌を加えて反応させることで作られる脂肪酸で、小川教授らの研究により発見されました。HYAは、これまでに血糖値改善作用、脂肪合成抑制作用、腸管バリア保護作用など、様々な効果を示すことが分かっています。



■ピロリ菌とは?

 ピロリ菌(Helicobacter pylori[*2])の感染は、胃炎や胃癌の発症の多くに関与することがわかっています。このピロリ菌は抗生物質による治療で約90%除菌できますが[文献1]、耐性菌の出現や、下痢、腹痛、味覚異常、アレルギーなどの副作用の問題があります。副作用の主な原因は、抗生物質の大量投与による腸内細菌叢の変化と考えられています[文献2]。

 この度、松井講師と当社の共同研究により、HYAがピロリ菌に対して特異的に作用し、かつ腸内細菌叢のバランスを乱さず、耐性菌を作らないピロリ菌増殖抑制剤としての可能性を見出しました。



■HYAがピロリ菌の増殖を抑制する

【実験方法】

 5週齢のマウスに、試験開始7日前~試験18日目まで、乳酸菌等が食事由来の脂肪酸から作る脂肪酸(HYA, HYB, KetoA, KetoB, KetoC, LA, OA, DHA, EPA)[*3]を0.2mMの濃度でそれぞれ飲水に混ぜて投与しました。同時に、試験0、2、4日目にはピロリ菌(SS1株)を経口投与して感染させました。試験18日目にマウスを解剖して胃粘膜を集め、胃内のピロリ菌数を測定しました。


【実験結果】

 飲水にHYAを混ぜてマウスに投与した場合、その他の脂肪酸を混ぜた場合と比較して、より強いピロリ菌増殖抑制効果が認められました。


 さらにHYAは、ピロリ菌の近縁で胃癌に深く関連することが知られているハイルマニイ菌が引き起こす胃MALTリンパ腫[*4]の抑制効果も確認されています。



■注釈

[*1] リノール酸:

 不飽和脂肪酸の一つ。人は体内でリノール酸を合成できないため、食品から摂取する必要があるとされる必須脂肪酸。


[*2] Helicobacter pylori:

 正式には学術名「Helicobacter pylori」は斜体表記。


[*3] HYA, HYB, KetoA, KetoB, KetoC, LA, OA, DHA, EPA:

 それぞれ、10-ヒドロキシ-シス-12-オクタデセン酸、10-ヒドロキシオクタデカン酸、10-オキソ-シス-12-オクタデセン酸、10-オキソオクタデカン酸、10-オキソ-トランス-11-オクタデセン酸、リノール酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、の略。全て乳酸菌などの腸内細菌が食事由来の脂肪酸から作る、脂肪酸である。


[*4] 胃MALTリンパ腫:

 胃に生じる悪性リンパ腫の1つ。粘膜に関連したリンパ組織からリンパ球の中のB細胞が腫瘍化する。



■参考文献

[文献1] 日本ヘリコバクター学会, Helicobacter pylori 感染の診断と治療のガイドライン 2009改訂版、日本ヘリコバクター学会誌 Vol.10 Supplement


[文献2] Matsui H, Takahashi T, Murayama SY, Kawaguchi M, Matsuo K, Nakamura M (2017) Protective efficacy of a hydroxyl fatty acid against gastric Helicobacter infections. Helicobacter, 22: e12430.



■会社概要

名称  : 日東薬品工業株式会社

代表者 : 代表取締役社長 北尾 哲郎

所在地 : 京都府向日市上植野町南開35-3

事業内容: 医薬品の研究開発、製造販売、機能性食品の研究開発

URL   : http://www.nitto-pharma.co.jp/

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