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刊行即1万部重版 細谷雄一『安保論争』(ちくま新書)  感情的な対立を超えて、地に足のついた平和主義を!

2016.08.02 10:00

 株式会社筑摩書房(所在地:東京都台東区、代表取締役社長:山野浩一)は、2016年7月7日(木)に刊行した細谷雄一著『安保論争』(ちくま新書)が、売行好調により、刊行直後に1万部重版が決定(累計2刷・22,000部)したことをお知らせします。


『安保論争』書影

URL: http://www.chikumashobo.co.jp/special/security_controversy/


 台頭著しい中国との領土問題、北朝鮮による軍事的挑発……近隣諸国との関係において、日本は今、非常に緊迫した局面を迎えています。またフランスをはじめバングラデシュやドイツまで、国際テロ組織による殺傷事件が多発するなか、国境を越えた平和実現のため、日本も世界各国と適切に連携していくことが求められています。
 こうした状況下で、日本はどのようにして近隣諸国との衝突を回避し、安全保障問題に関わっていくべきなのか? イギリスのEU離脱やアメリカの衰退など、目まぐるしく変化する世界情勢をどのように受け止め、自らの立ち位置を示していくべきなのか? テロリズムの脅威に適切に備えるにはどのような法整備が必要なのか? 「安全保障」についての問題を現実的に考えようとする風潮が、社会にできつつあります。
 しかしこのテーマをめぐる議論はいずれも感情的な争いとなってしまい、冷静な話をできる土壌があるとは言えません。それどころかメディアのなかには論点を明確にすることなく自らが運動主体となって危機感だけを煽るものすらあり、私たちは何が本当の問題なのかさえわからず不安を募らせています。
 そんな現状を鮮烈に打開し、誰もが安全保障環境を適切に理解して考えるための指針として、本書はまとめられました。国際政治の歴史という知見に立って、不毛な水掛け論に陥りがちな「安保論争」というテーマを、論理的かつ現実的な視点で論じた、平和を求めるあらゆる人にとって必読の書です。


【本書が投げかける問い】
■自国だけ平和ならそれでいいのか?
 戦後、日本国民が戦争被害を受けず平和を享受していた一方で、今も世界では無数の戦争・紛争が勃発しています。ウクライナ、シリア、南スーダン……近年でも数々の国が戦火に蹂躙されました。日本国憲法前文には「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という表現がありますが、はたして私たちは過去の経験に学び、国際社会で平和を確立するため何ができるかを十分に検討できているでしょうか。デモで「戦争反対」と叫ぶだけでは、目下行われている殺戮は止みません。
 戦争を嫌悪し平和実現をデモで叫ぶ人々が「自分たちだけが戦争に巻き込まれなければよい」と考えているとするならば、それは平和主義でなく自国中心主義的なエゴイズムである、と本書では述べられています。

■日本の弱体化で、東アジアの安定が揺らぐ?
 世界史をひも解くと、大国の衰退や新興国の急激な台頭によって各国間のパワーバランスが崩れた時、戦争が起こりやすくなるという現実が見て取れます。
 翻って現在の東アジア情勢に目を向けると、中国は年々軍事力を増強し、日本は存在感を徐々に低下させています。仮に日米同盟が形骸化して、日本の軍事力がさらに弱まるとしたら、それによって東アジアに「力の真空」が生じることは明らかです。世界情勢を正確に把握し、東アジアのパワーバランスを維持しながら、平和と安定を目指す姿勢が、日本には求められているのです。

■日本の「善意」は本当に伝わっているのか?
 19世紀、ベルギーは国際法上の中立の立場を守ることで自国の平和を維持できると考えていました。中立であれば侵略されることはないだろうと、国際社会の善意を信用して自国を守ろうとしたのです。しかしながら両大戦において、ベルギーはドイツに占領されました。軍事的必要性から作戦を実行したドイツが、ベルギーの国際法上の地位などにいちいち配慮することはなかったのです。
 このような歴史は、いくら日本が善意をもって中国に友好の精神を訴えても、急激に軍備を増し勢力拡大を目指す中国が必ずしも日本に譲歩するとは限らない、という冷たい現実を示唆しています。


【目次】
I 平和はいかにして可能か
1 平和への無関心
2 新しい世界のなかで

II 歴史から安全保障を学ぶ
1 より不安定でより危険な世界
2 平和を守るために必要な軍事力

III われわれはどのような世界を生きているのか――現代の安全保障環境
1 「太平洋の世紀」の日本の役割
2 「マハンの海」と「グロティウスの海」
3 日露関係のレアルポリティーク
4 東アジア安全保障環境と日本の衰退
5 「陸の孤島」と「海の孤島」
6 対話と交渉のみで北朝鮮のミサイル発射を止めることは可能か
7 カオスを超えて――世界秩序の変化と日本外交

IV 日本の平和主義はどうあるべきか――安保法制を考える
1 集団的自衛権をめぐる戦後政治
2 「平和国家」日本の安全保障論
3 安保関連法と新しい防衛政策
4 安保法制を理性的に議論するために
5 安保関連法により何が変わるのか


【著者略歴】
細谷雄一(ほそや・ゆういち)
 1971年千葉県生まれ。慶應義塾大学法学部教授。立教大学法学部卒業。英国バーミンガム大学大学院国際関係学修士号取得。慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了。『戦後国際秩序とイギリス外交』(創文社)でサントリー学芸賞、『外交による平和』(有斐閣)で政治研究櫻田會奨励賞、『倫理的な戦争』(慶應義塾大学出版会)で読売・吉野作造賞を受賞。その他の著書に『外交』(有斐閣)、『国際秩序』(中公新書)、『戦後史の解放I 歴史認識とは何か』(新潮選書)など。


【商品情報】
『安保論争』ちくま新書
刊行日 : 2016年7月7日(木)
ページ数: 288ページ
定価  : 880円(税別)
ISBN  : 978-4-480-069047
URL   : http://www.chikumashobo.co.jp/special/security_controversy/

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