報道関係者各位
    プレスリリース
    2026年1月15日 12:30
    株式会社フライトソリューションズ

    インバウンド時代、日本の医療制度は 「支払い」まで設計できているか

    ■インバウンド拡大が突きつける、日本の医療制度の盲点

    訪日外国人の増加は、日本経済にとって欠かせない成長要素の一つです。日本政府観光局(JNTO)の統計によれば、2024年の訪日外国人旅行者数は約3,690万人と統計開始以来の最高を記録し、2025年11 月推計値(2025年12月発表)*1では、累計で過去最高を更新するなど増加傾向が続いています。
    こうしたコロナ禍以降のインバウンドの回復と拡大が進む中で、これまで表面化していなかった医療現場の課題が、制度設計の問題としてあらためて浮かび上がっています。

    それが、「外国人患者による医療費未払い」です。

    この問題は、決して一部の医療機関に限った特殊事例ではありません。厚生労働省が2024年に公表した「医療機関における外国人患者の受入れに係る実態調査」によれば、外国人患者を受け入れた医療機関のうち、約 16.3%の病院が、外国人患者による医療費の未払いを経験しているとの結果が示されています*2。さらに未収金の平均件数は3.9件、総額は約49.8万円という報告もあり、こうした未収金の発生は、偶発的なトラブルではなく、制度と運用の空白が生み出す構造的リスクとして認識され始めています。

    ■問題の本質は「国籍」ではなく支払いの仕組み

    重要なのは、この問題を「外国人患者のマナー」や「個別の未払い事案」として捉えないことです。
    本質的な課題は、インバウンド医療を前提とした支払いの仕組みが、日本の医療制度の中で十分に設計されてこなかった点にあります。
    現行制度では、インバウンド医療における支払いに関する役割分担や運用が整理されておらず、

    • 外国人患者の保険加入状況の確認
    • 診療前、診療後における支払い能力の担保
    • 帰国後を含めた医療費回収リスクへの対応

    といった要素が、医療機関の現場対応に委ねられているケースが少なくありません。
    その結果、未収リスクだけでなく、事務負担や現場の業務負荷が増大し、医療機関が外国人患者の受け入れそのものを慎重に判断せざるを得ない状況も生まれています。
    これは、医療機関における問題であると同時に、安心して医療を受診したい外国人患者にとっても不利益となり得る問題です。

    ■現場から聞こえてくる声と考えられる対策

    実際の医療現場から、下記のような声が上がってきています。病院の運営努力で解決できる問題ではなく、制度としてどう支えるかが問われる段階に来ていると言えます。

    • 「未収は一部だが、対応コストは確実に増えている」
    • 人手不足が進む中で、診療判断とは別の業務負荷が現場を圧迫している
    • ルールが曖昧なまま、現場判断に委ねられていることがリスク

    こうした現場の声を踏まえると、インバウンド医療における未収対策については、制度としていくつかの選択肢が考えられます。

    • 海外旅行保険の加入義務化(検討中)
    • 公的補填や自治体スキームによる支援
    • 出入国管理制度(電子渡航認証制度など)による未払い履歴の把握・抑止
    • 医療機関による受診前の支払い確保(事前デポジット)

    いずれも一定の合理性を持つ一方で、制度設計や運用面の課題も存在します。
    これらの対策を、どれか一つを選ぶのではなく、現場で実装可能な形で組み合わせていくことが重要となります。

    ■インバウンド医療を持続可能にするために

    インバウンドは、日本にとって「受け入れるか否か」ではなく、「どう受け入れ続けるか」を考えるフェーズに入っています。そのためには、診療体制や多言語対応だけでなく、支払いまで含めた医療制度設計が不可欠です。決済や支払いの仕組みを業界横断で捉えると、医療分野を含むさまざまな現場で、制度と事務の間に生じている課題が見えてきます。

    例えば、大学病院を含む医療機関の間でも、インバウンド医療における未収リスクへの対応や、支払いの仕組みをどう設計すべきかについて、検討や情報共有が進み始めています。
    あわせて、事前デポジットの支払い確保の仕組みについても、医療現場で実装可能な形を模索する動きが見られるようになってきました。

    現場の実務と制度の間を埋める取り組みが、少しずつ検討段階に入りつつあります。
    決済インフラを社会に提供する当社としては、医療分野を含むさまざまな領域において、支払いをはじめとする業務プロセスに関わるシステムを扱ってきました。

    また、本人確認や認証といった分野にも取り組んでおり、複数の領域にまたがる立場から、社会的課題の解決に向けて、当社独自の技術を駆使して貢献していく考えです。

    本リリースが、インバウンド医療をめぐる課題や制度設計について考える一助となれば幸いです。

    *1 出典:日本政府観光局(JNTO)2025年12月17日付 報道発表資料
    https://www.jnto.go.jp/news/press/20251217_monthly.html *2 出典:厚生労働省 令和 6 年度「医療機関における外国人患者の受入れに係る実態調査について(概要版)」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63743.html?utm_source=chatgpt.com
    ※本調査は2024年9月1日〜30日の1か月間におけるスナップショット調査であり、年間集計ではありません。ただし、同年は訪日外国人旅行者数が高水準で推移しており、9月もインバウンド需要が継続していた時期にあたります。出典データは、インバウンド回復局面における医療現場の未収金発生状況を把握する上で、現場の実態を示す参考情報として位置づけられると考えています。