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    プレスリリース
    2026年8月22日 23:10
    弁護士法人若井綜合法律事務所

    別れ話の『隠し録音』は違法? 裁判で証拠になるケース・ならないケースを弁護士が解説

    「後から『そんなことは言っていない』と言われそうだから録音しておきたい。」

    交際相手との別れ話では、金銭や慰謝料、復縁、妊娠などをめぐって、"言った・言わない"のトラブルが少なくありません。

    そのため、相手に知らせず録音する「隠し録音」を考える方もいますが、「違法になるのでは」「裁判では使えないのでは」と不安に感じる方も多いでしょう。

    実際には、自分が参加している会話の録音は、原則として直ちに違法とは評価されません。ただし、録音の方法や録音後の使い方によっては、逆に法的責任を問われるケースもあります。

    本記事では、秘密録音の法的な考え方と、証拠として活用する際の注意点を弁護士が解説します。

    自分が参加している会話の録音は、原則として違法ではない

    会話の当事者の一方が、相手に知らせずに録音することを「秘密録音」と呼びます。結論からいえば、自分が参加している会話を相手の同意なく録音する行為は、原則として違法とは評価されていません。

    この点については、詐欺の被害を受けたと考えた人が自衛のために相手との会話を録音した事案について、2000年7月の最高裁判決が、一方の当事者が相手方との会話を録音することは、たとえ相手方の同意を得ないで行われたものであっても違法ではないという趣旨の判断を示しています。

    ただし、この判断は「録音ならいつでも何をしても自由」という意味ではありません。この事案では、被害を受けたと考えた側が自衛のために記録を残す必要があった、という事情がありました。録音の目的や方法があまりに悪質であれば、別の評価を受ける余地は残ります。

    なお、録音を禁止する一般的な法律があるわけではないため、別れ話を録音したこと自体で刑事罰を受けることは、通常は考えられません。

    「盗聴」とは分けて考える

    秘密録音と混同されやすいのが、いわゆる盗聴です。実務上の分かれ目は、自分がその会話に参加しているかどうかです。

    自分が加わっていない会話を録るために、相手の部屋に無断で立ち入って機器を置けば住居侵入罪(刑法130条)の問題になり得ますし、相手のスマートフォンに無断で監視・遠隔操作アプリを入れる行為は、不正指令電磁的記録供用罪(刑法168条の2)に当たり得ます。相手の持ち物にGPS機器や紛失防止タグを取り付けて位置情報を得る行為は、ストーカー規制法の規制対象です。

    また、憲法21条2項や電気通信事業法4条が定める「通信の秘密」は、他人の通信を対象とするものです。自分が話している通話を自分で録音する行為は、これとは別の問題として整理されます。

    別れ話が「あとで食い違う」場面

    当事務所のような男女トラブルを扱う法律事務所には、別れ話をきっかけに次のような相談が寄せられます。

    別れた後になって、交際中の費用やプレゼントの返還を求められた

    「別れるなら慰謝料を払え」と高額な金銭を請求された

    「職場や家族に言いふらす」と告げられ、連絡を断てない

    復縁を迫られ、連絡や訪問が続いている

    交際中の性的な出来事について、認識の食い違いを指摘された

    こうした場面では、その日の会話でどのような言葉が交わされたかが、後の交渉や手続の出発点になります。録音は、その出発点を客観的に残す手段のひとつです。

    もっとも、録音は万能ではありません。たとえば別れ話の録音があっても、それ以前の出来事について当事者の認識がどうであったかを直接証明できるわけではありません。録音でわかるのは、あくまで「その会話で何が話されたか」に限られます。

    裁判で使えるか──「証拠能力」と「証明力」は別の問題

    録音について語られるとき、この二つはしばしば混同されます。

    証拠能力は、その資料を証拠として取り調べてよいかという入口の問題です。民事訴訟法には証拠能力を一般的に制限する規定がなく、相手に無断で録音したというだけの理由で証拠から排除されることは、通常はありません。録音データは準文書として扱われ(民事訴訟法231条)、必要に応じて反訳書面を提出します(民事訴訟規則149条1項)。

    例外を示した裁判例として、東京高裁昭和52年7月15日判決があります。著しく反社会的な手段・方法で人格権を侵害して集められた証拠は違法の評価を受け、証拠能力が否定されるという枠組みを示したものです。相手を長時間拘束して発言を引き出したような場合が、これに近い例といえます。また近年には、録音が禁じられた非公開の会議を録音した事案について、訴訟上の信義則に反するとして証拠能力を認めなかった高裁の判断もあります。

    一方の証明力は、その証拠がどれだけ事実を裏づけるかという中身の問題です。誰の声か特定できるか、いつどこでの会話か、前後の文脈が残っているか。ここが弱いと、証拠として採用されても評価は高くなりません。都合のよい数十秒だけを切り出したデータは、加工や誘導を疑われ、かえって不利に働くこともあります。

    実際に問題になりやすいのは「録ったあと」

    見落とされがちですが、トラブルになりやすいのは録音行為そのものより、その使い方です。

    会話をしている当事者同士の間では、その内容についてある程度秘密性が放棄されているとも考えられます。しかし、その会話が第三者に聞かれることまで想定して話しているとは、通常は考えられません。そのため、録音を無関係な第三者に聞かせたり、SNSに投稿したりする行為は、プライバシーの侵害として損害賠償の対象になり得ます。内容が相手の社会的評価を低下させるもので、不特定または多数の人に伝わる形であれば、名誉毀損(刑法230条・3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の問題も生じます。

    さらに、「言うことを聞かなければこの音声を流す」と告げれば脅迫罪(刑法222条)、それによって何かをさせれば強要罪(刑法223条)、金銭を要求すれば恐喝罪(刑法249条)に問われるおそれがあります。仮に請求そのものに理由があったとしても、実現の手段が社会通念上許される範囲を超えれば違法と評価されます。

    録音は、自分の身を守るため、また弁護士や警察に事実を伝えるために残すものだと考えておくのが安全です。

    別れ話を録音するときの注意点

    法的に問題が生じにくく、かつ後で意味を持つ記録にするためのポイントを挙げます。

    通しで録る。会話全体を最初から最後まで残します。編集や切り貼りは、それだけで信用性を疑われます。

    冒頭で日時・場所を口にしておく。後から特定しやすくなります。

    誘導や挑発をしない。相手を追い詰めて言質を取ろうとすると、証拠としての価値が下がるだけでなく、録音の方法自体が問題視されかねません。

    自分の発言も同じ重みで残ることを意識する。「自分が悪かった」「払います」といった言葉は、責任を認めた、あるいは支払義務を認めた記録として、後に自分に向けられることがあります。

    元データを消さず、二重に保管する。端末の買い替えやアプリの削除で失われる例は珍しくありません。

    相手の持ち物や部屋に機器を仕掛けない。前述のとおり、これは秘密録音とは別の話になります。

    場所と時間を設計する。感情的になりやすい相手であれば、人目のある場所を選ぶ、長時間にしない、といった配慮のほうが、録音より優先されます。

    「録音していい?」と伝えるべきか

    告知は法律上の義務ではありません。伝えるかどうかは、目的次第です。

    伝えれば双方が冷静になりやすく、暴言や高圧的な要求を抑える効果が期待できます。「後で行き違いにならないよう記録させてほしい」と切り出す方法です。一方で、相手が身構えて本音を語らなくなる、あるいはその場で強い反発を招くことも考えられます。相手の言動そのものを記録に残したい場合は、告げないという選択も現実的です。

    録音に気づいた相手から「消してほしい」と言われた場合、直ちに削除しなければならない法的義務は、原則としてありません。ただし、その場の勢いで「消す」と約束してしまうと、後の交渉で立場を弱めることがあります。答えを保留し、持ち帰る対応で足ります。

    逆に、自分が録音されていた場合

    相手が録音していたとしても、同じ理屈で、それ自体が直ちに違法になるわけではありません。重要なのは、自分の発言もそのまま記録されているという点です。その場を収めるための謝罪や、深く考えずに口にした支払いの約束が、後に不利な材料として持ち出される例は実際にあります。

    録音の存在をほのめかされて金銭を要求されている、あるいはすでにインターネット上に公開されているという場合は、削除の請求や刑事・民事の対応を検討することになります。自分で相手とやり取りを続けるより、記録を保全したうえで早めに専門家に相談したほうが、選択肢が広がります。

    まとめ

    自分が参加している別れ話を相手の同意なく録音する行為は、原則として違法ではないと考えられています。

    自分が加わらない会話を録るための機器の設置やアプリの導入は、まったく別の問題であり、犯罪に当たり得ます。

    民事裁判では、無断録音であることを理由に証拠から排除されるのは例外的です。ただし、断片的な録音は評価が高くなりません。

    問題が起きやすいのは録ったあとの扱いです。第三者に聞かせる、SNSに上げる、公開をほのめかして要求するといった行為は、責任を問われる側に回りかねません。

    録音した内容には、自分の発言も含まれます。その場しのぎの謝罪や約束は避け、迷う点はいったん持ち帰るのが安全です。

    別れ話がこじれ、金銭の要求や執拗な連絡に発展している場合は、録音を含めた記録を手元に残したうえで、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。危険を感じるときは、警察相談専用電話(#9110)や、緊急の場合は110番の利用も検討してください。

    若井綜合法律事務所には、「別れ話を録音していました」「相手から録音データを突き付けられました」といった相談が継続的に寄せられています。スマートフォンで簡単に録音できる時代になり、男女トラブルでも音声データが証拠として提出されるケースは珍しくありません。一方で、「無断録音だから違法」「裁判では使えない」といった誤解も多く見られます。

    この記事の監修者

    若井 亮(わかい りょう)
    /代表弁護士 弁護士法人若井綜合法律事務所(東京弁護士会所属)
    男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の脅迫的な言動にも毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために尽力している。

    問い合わせ先
    弁護士法人若井綜合法律事務所
    https://wakailaw.com/
    TEL: 03-5924-6845

    当事務所は、恐喝・脅迫被害をはじめとする男女間のトラブルを数多く取り扱ってまいりました(男女トラブルのご相談は類型23,000件以上お受けしてまいりました)。「家族や勤務先に影響が及ばないように」という点に最大限配慮しながら、内密かつ穏便な解決を最優先に対応いたします。すでに個人情報を知られてしまっている場合や、要求がエスカレートしている場合も、状況に応じて被害の拡大を防ぐ手立てがあります。

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