報道関係者各位
    プレスリリース
    2026年10月29日 14:00
    学校法人近畿大学

    加熱式たばこ使用者は高血圧発症リスクが高いことを確認 約3万人のデータを分析し紙巻きたばこ使用者等のリスクとも比較

    図 喫煙状況別の高血圧発症率および発症リスクの比較:発症リスクは、統計学的な調整を行い非喫煙者と比較
    図 喫煙状況別の高血圧発症率および発症リスクの比較:発症リスクは、統計学的な調整を行い非喫煙者と比較

    近畿大学医学部(大阪府堺市)内科学教室(循環器内科部門)特命准教授 松村光一郎らの研究グループは、日本国内の大規模な医療・健康データベースを用いて、加熱式たばこの使用と高血圧の新規発症※1 との関連を調査しました。
    その結果、調査開始時点で高血圧ではなかった30,979人を分析したところ、加熱式たばこの現在使用者では、たばこの利用歴がない人と比べて、高血圧を新たに発症するリスクが23%高いことが明らかになりました。また、紙巻きたばこの現在使用者、加熱式たばこと紙巻きたばこの併用者、過去の喫煙者についても、高血圧の新規発症リスクが高いことが確認されました。
    加熱式たばこは、紙巻きたばこと比べて健康への影響が少ないと認識されることがありますが、本研究により、加熱式たばこの現在使用と高血圧の新規発症に関連があることが示されました。ただし、本研究は観察研究※2 であり、加熱式たばこの使用が高血圧を直接引き起こすことを証明したものではありません。
    本研究成果は、令和8年(2026年)9月24日(木)に、国際学術誌「Hypertension Research」にオンライン掲載されました。

    【本件のポイント】
    ●日本国内の大規模な医療・健康データベースを用い、約3万人を対象に、加熱式たばこの使用と高血圧の新規発症との関連を調査
    ●加熱式たばこの現在使用者は、たばこの使用歴がない人と比べ、高血圧の新規発症リスクが23%高いことを確認
    ●今後は、より長期的な追跡調査を通じて心血管疾患への影響を明らかにするとともに、日本およびアジア地域における、高血圧予防対策や循環器リスク評価の確立に期待

    【本件の背景】
    高血圧は、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患につながる重要な危険因子です。また、喫煙は血圧の上昇や血管機能の障害に関与することが知られており、心血管疾患の予防において、たばこの使用を減らすことは喫緊の課題です。
    近年、たばこ葉を燃焼させずに加熱してニコチンを含むエアロゾル※3 を発生させる「加熱式たばこ」の使用が広がっており、日本は普及率が高い国の一つです。加熱式たばこは、紙巻きたばこと比べて健康への影響が少ないと認識されることがありますが、長期的な心血管系への影響については、十分に明らかになっていません。
    これまでにも、加熱式たばこの使用と高血圧との関連を示す研究は報告されていました。しかし、対象が特定の職域集団に限定されているなど、大規模な実社会の医療・健康データを用いた研究は限られていました。
    そこで研究グループは、健康診断結果、診療報酬請求データ※4、生活習慣に関する質問票、健康支援アプリの利用情報を統合した日本の大規模データベースを用いて、加熱式たばこを含む喫煙状況と高血圧の新規発症との関連を調べました。

    【本件の内容】
    研究グループは、令和3年(2021年)から令和7年(2025年)までに詳細な喫煙に関する質問票に回答した人のうち、調査開始時点で高血圧ではなく、必要な健康診断データがそろっている30,979人を対象に分析しました。平均年齢は46.8歳で、女性は全体の37.0%でした。
    まず対象者を、たばこを一度も使用したことがない人、加熱式たばこの現在使用者、紙巻きたばこの現在使用者、加熱式たばこと紙巻きたばこの併用者、過去の喫煙者の5群に分類しました。年齢や性別、体格、生活習慣、既往歴などの違いを統計学的に調整し、追跡期間中に高血圧を新たに発症するリスクを分析しました。
    その結果、追跡期間中に高血圧を新たに発症した割合は、たばこを一度も使用したことがない人で5.1%、加熱式たばこの現在使用者で8.2%、紙巻きたばこの現在使用者で9.3%、両者の併用者で8.2%、過去の喫煙者で9.0%でした。
    さらに、統計学的な調整を行い、年齢や性別、通常時の血圧といった基本属性に加えて、生活習慣、健康状態等を加味した解析では、たばこを一度も使用したことがない人と比べて、加熱式たばこの現在使用者では高血圧の新規発症リスクが1.23倍(23%増)、紙巻きたばこの現在使用者では1.28倍(28%増)、併用者では1.47倍(47%増)、過去の喫煙者では1.17倍(17%増)となり、いずれも統計学的に有意な関連が認められました。
    本研究は、健康診断結果や診療報酬請求データに加え、生活習慣に関する情報も活用することで、加熱式たばこの使用と高血圧の新規発症との関連を大規模に検証したものです。一方で、本研究は観察研究であり、加熱式たばこの使用が高血圧を直接引き起こすという因果関係を証明するものではありません。また、過去の紙巻きたばこの使用歴や加熱式たばこの使用期間・頻度など、詳細な情報が得られていないという限界があります。
    今後は、過去の喫煙歴や累積的なたばこの使用などを詳しく評価した研究を進め、加熱式たばこの長期的な心血管系への影響を明らかにすることが求められます。また、急速に使用が拡大する日本およびアジア地域において、加熱式たばこも含めた高血圧予防対策や循環器リスク評価の確立が期待されます。

    【論文掲載】
    掲載誌:Hypertension Research(インパクトファクター:5.0@2025)
    論文名:Association between current heated tobacco product use and incident hypertension:
        A nationwide real-world cohort study
        (加熱式たばこの現在使用と高血圧の新規発症との関連:
         全国規模のリアルワールドコホート研究※5)
    著者 :松村光一郎1、田淵貴大2、今野弘規3、箱崎頌平1、上野雅史1、田中秀和1、中澤学1
    所属 :1 近畿大学医学部内科学教室(循環器内科部門)、
        2 東北大学大学院医学系研究科 公衆衛生学専攻公衆衛生学分野、
        3 近畿大学医学部公衆衛生学教室
    URL :https://doi.org/10.1038/s41440-026-02817-z
    DOI :10.1038/s41440-026-02817-z

    【研究者のコメント】
    松村光一郎(マツムラコウイチロウ)
    所属  :近畿大学医学部内科学教室(循環器内科部門)
    職位  :特命准教授
    学位  :博士(医学)
    コメント:日本は世界に先駆けて加熱式たばこが普及した国であり、その健康影響を明らかにすることは社会的に重要な課題です。しかし、加熱式たばこの歴史は浅く、特に心血管疾患への長期的な影響については十分に解明されていません。本研究では、加熱式たばこの使用が高血圧の新規発症リスク上昇と関連することを明らかにしました。今後、さらなる研究を通じて心血管疾患への影響を解明し、科学的根拠に基づく健康リスクの周知や予防対策につなげていきたいと考えています。

    【用語解説】
    ※1 高血圧の新規発症:本研究では、追跡期間中の健康診断で収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上が確認された場合、あるいは診療報酬請求データから降圧薬の使用開始が確認された場合と定義。
    ※2 観察研究:対象者や集団に対して、薬の投与や治療といった介入をせず、自然な状態のままデータを集めて分析する研究方法。
    ※3 エアロゾル:気体中に浮遊する微細な粒子。加熱式たばこは、たばこ葉を燃焼させずに加熱することでニコチンを含むエアロゾルを発生させる。
    ※4 診療報酬請求データ:医療機関が患者に提供した診療内容や処方、病名などを記載し、医療費を保険者へ請求するために作成する明細書データ。
    ※5 リアルワールドコホート研究:健診結果や診療報酬明細(レセプト)などの実際の臨床・生活データ(リアルワールドデータ)を用い、特定集団を追跡して病気の発症リスクなどを検証する研究手法。

    【関連リンク】
    医学部 医学科 講師 松村光一郎(マツムラコウイチロウ)
    https://www.kindai.ac.jp/meikan/2625-matsumura-koichiro.html
    医学部 医学科 教授 今野弘規(イマノヒロノリ)
    https://www.kindai.ac.jp/meikan/2794-imano-hironori.html
    医学部 医学科 教授 中澤学(ナカザワガク)
    https://www.kindai.ac.jp/meikan/2383-nakazawa-gaku.html
    医学部 医学科 准教授 上野雅史(ウエノマサフミ)
    https://www.kindai.ac.jp/meikan/1608-ueno-masafumi.html
    医学部 医学科 准教授 田中秀和(タナカヒデカズ)
    https://www.kindai.ac.jp/meikan/3436-tanaka-hidekazu.html

    医学部
    https://www.kindai.ac.jp/medicine/