プレスリリース
半導体IP市場の売上、動向、市場規模、市場シェアの分析レポート2026-2032

半導体IPの定義や市場規模概要
半導体IPとは、半導体集積回路の設計において再利用可能な機能ブロックや設計資産を指す。プロセッサコア、インターフェース回路、メモリコントローラ、アナログ回路などが代表例であり、ライセンス形態で提供されることが一般的である。設計期間の短縮や開発コストの削減、設計品質の安定化に寄与する点が大きな特長とされる。近年は先端プロセスやシステムオンチップの高度化に伴い、半導体IPの重要性が一層高まっており、SoC設計における中核要素として位置付けられている。

QYResearchが発表した新たな市場調査レポート「半導体IP―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」によると、世界の半導体IP市場規模は2024年の約4923百万米ドルから2025年の5145百万米ドルへと順調に拡大すると見込まれ、予測期間中は年平均成長率(CAGR)5%で成長し、2031年には6894百万米ドルに達すると予測されている。
図. グローバル半導体IP市場規模(百万米ドル)、2024-2031年

成長を支える重要要因
1.自動車産業の電動化・知能化による構造的需要
世界の自動車産業において、日本は長年にわたり技術と産業統合の中核を担ってきた。その日本市場におけるEV(電気自動車)および自動運転への移行は、半導体IPに対する構造的な需要を直接的に押し上げている。EVシステムでは、電力管理、バッテリー制御、車載電子アーキテクチャの高度化が進み、高耐圧パワーデバイス関連IP、バッテリー管理IP、MCUアーキテクチャIP、各種車載センサーIPの採用が一層深化している。
さらに、ADASやインテリジェントコックピットの進展により、高性能プロセッサIP、センサーフュージョンIP、高速インターフェースIPは車載半導体設計における中核要素となっている。こうした自動車エレクトロニクスを起点とする長期的な需要は、日本市場における半導体IPの安定的かつ持続的な適用基盤を形成している。
2.産業オートメーションおよびIoTの進展
日本はスマートマニュファクチャリング、産業オートメーション、精密機器分野において深い技術的蓄積を有しており、この産業構造は高信頼性・長寿命の半導体ソリューションへの強い依存を生み出している。工場自動化、ロボット制御、産業システム運用を背景に、アナログ制御、リアルタイム演算、産業用通信に関連する半導体IPの需要は継続的に存在している。
また、製造現場や社会インフラにおけるIoTの普及により、低消費電力プロセッサIP、無線通信IP、エッジコンピューティング関連IPの適用範囲が拡大しており、半導体IPは単一機能モジュールからシステムレベルの組み合わせへと進化を遂げつつある。
3.技術的強みを背景とした特定分野向けIP需要
日本は半導体サプライチェーン上流に位置する材料・製造装置分野で長年の技術優位性を有しており、その強みは特定の下流分野において安定した応用エコシステムを形成している。この技術基盤は半導体IPの需要構造にも反映されている。
例えば、イメージセンサーやパワー半導体といった競争力の高い製品分野では、高性能画像信号処理IPや高耐圧パワーデバイス関連IPといった、用途指向性の明確な半導体IPが求められている。こうした優位デバイスを起点とするIP需要は、日本市場においてアプリケーション主導型の差別化された発展経路を形成している。
生み出す市場拡大の機会
1.Chipletおよび先端パッケージングを通じたIP価値の拡張
先端プロセスの微細化進展が鈍化する中、Chipletアーキテクチャや2.5D/3D先端パッケージングは、システム性能向上の重要な手段として位置付けられている。日本においても先端パッケージング関連の取り組みが強化されており、半導体IPに新たな適用機会をもたらしている。
チップレット間接続、高速通信、システム検証といった領域では、物理層IP、インターフェースIP、検証IPが異種集積における基盤要素となる可能性が高い。新たなパッケージングエコシステムにおいて技術的ポジションを確立することで、半導体IPは単一ライセンス提供からシステム支援型の役割へと拡張する余地を有している。
2.日本国内アプリケーションを起点としたカスタマイズIP開発
汎用計算分野における競争が激化する中、日本は自動車、ロボット、高度製造といった垂直産業分野において相対的な強みを有している。これらの分野で蓄積されたシステム知見を活用することで、半導体IPは用途特化型へと深化する可能性がある。
特定用途向けAI推論IP、センサーフュージョンIP、高信頼性・高安全性を重視した機能モジュールなどは、その代表例である。特に車載分野では、機能安全規格に対応した専用IPが差別化要因となり、半導体IPを汎用部品からシステム中核資産へと昇華させることが期待される。
3.日本国内製造基盤と連動した「IP+設計支援」モデルの展開
日本国内における先端製造能力の強化に伴い、半導体IPと設計支援サービスとの連携余地は拡大している。IPベンダーは単なるライセンス供与にとどまらず、チップ統合や設計最適化プロセスに関与することで、「IP+設計支援」という付加価値の高い提供形態を構築できる。このような製造およびアプリケーションに近接したサービスモデルは、設計リスクの低減に寄与すると同時に、産業全体における半導体IPの不可欠性を一層高めると考えられる
主な課題
1.高度設計人材不足による半導体IP開発制約
半導体IPの開発に不可欠な先端ロジック設計および複雑なシステムアーキテクチャ分野において、日本では設計人材の構造的不足が顕在化している。過去における高性能デジタルチップやプロセッサアーキテクチャへの継続投資が限定的であったことから、設計ノウハウの蓄積や技術継承に断絶が生じている。
その結果、高性能プロセッサIP、高速インターフェースIP、複雑なSoC向け半導体IPの開発力に制約がかかっており、技術蓄積と長期的進化を競争力の源泉とする半導体IPにとって重要な課題となっている。
2.産業構造の分化によるIP拡張性の制限
世界の半導体市場は、先端ロジックおよびメモリを中心とした成長構造を示している一方で、日本の半導体産業はアナログやパワーデバイスといった特定分野への集中度が高い。この産業構造は、システムレベルでのチップアーキテクチャ主導力を相対的に弱め、汎用プロセッサIPやプラットフォーム型半導体IPの需要拡大を抑制する要因となっている。次世代システムを定義するプラットフォーム企業が限定的である状況下では、半導体IPは既存用途を前提とした部分最適に留まりやすく、システム革新を牽引する力を発揮しにくい。
3.高水準の投資負担と激化する国際競争
プロセスノードの高度化およびシステム複雑化に伴い、先端半導体IPの開発にはアーキテクチャ設計、検証、互換性確保、長期保守に至るまで多大な研究開発投資が求められる。世界の半導体IP市場は、少数の国際的リーディング企業が主導する構造となっており、日本のIPベンダーは資金規模、エコシステム構築力、市場浸透力の面で大きな競争圧力に直面している。加えて、他のアジア地域における成熟したIPエコシステムとの競争も、日本の半導体IPが国際市場で技術的存在感を高める上での大きな課題となっている。
【まとめ】
本記事では、半導体IPという注目製品に焦点を当て、市場を牽引する成長ドライバー、拡大のチャンス、そして克服すべき課題をわかりやすく紹介し、読者が短時間で市場の現状を把握できるようにしています。さらに、完全版レポートでは市場規模や成長予測、地域別・用途別・製品タイプ別の需要特性、潜在リスクや構造的課題、主要企業の競争環境、技術革新のトレンド、サプライチェーン分析や市場機会の詳細評価までを網羅的に収録し、半導体IP市場を総合的に理解するための情報を提供します。この一冊で業界の全体像をつかみ、事業戦略の立案や新規参入の判断に直結する実践的な知見を得ることができます。
本記事は、市場調査会社QYResearchの調査データと分析に基づいて執筆しています。
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QYResearch会社概要
QYResearch(QYリサーチ)は2007年に設立され、市場調査レポート、リサーチレポート、委託調査、IPOコンサル、事業計画書の作成などを提供するグローバルリサーチ企業です。当社は、米国、日本、韓国、中国、ドイツ、インド、スイス、ポルトガルの8カ国に拠点を持ち、世界160ヵ国以上の企業に産業情報サービスを提供してきました。市場調査、競争分析、業界動向、カスタマイズデータ、委託調査などの分野で、幅広い企業にご活用いただいています。
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