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「今まで使ったお金を全部返せ」と客から突然請求されたら?風俗・水商売のキャストが知っておきたい返金請求の正しい対応

「今まであなたに使ったお金を全部返して」「店で使った分も含めて返せ」「返さないなら家族や勤務先に連絡する」――。
風俗店や水商売で働くキャストと客との関係が終わった後、これまで店で使った金額や個人的に受け取ったお金、プレゼントなどについて、突然「返金してほしい」と請求されるケースがあります。
なかには、単に返金を求められるだけではなく、「詐欺で警察に行く」「店に行く」「勤務先や家族に知らせる」などと言われ、対応に困ってしまうケースもあります。
しかし、客が「返してほしい」と主張している金額が、すべて同じ法律上の性質を持つとは限りません。
店で支払われた飲食代・指名料などの料金なのか、キャスト個人に贈られたお金やプレゼントなのか、それとも「後で返す」という約束で渡されたお金なのか――。お金が渡された経緯や当事者間のやり取りによって、返還が問題になるかどうかは変わります。
さらに重要なのが、返金を求める「方法」です。
「返さないなら家族や勤務先に知らせる」「店に押しかける」「SNSで名前を公開する」など、金銭の請求を超えた行為に発展している場合には、返金の問題とは別に、脅迫・恐喝などの法的問題が生じる可能性があります。
そこで本記事では、風俗・水商売のキャストが客から「今まで使ったお金を返せ」と言われた場合について、
店で支払われた料金まで返す必要があるのか
個人的にもらったお金やプレゼントは返さなければならないのか
「貸したお金だ」と主張された場合はどう考えるのか
「詐欺だ」「警察に行く」と言われたときの注意点
店や勤務先に押しかけられた場合、どう対応すればよいのか
その場で返金したり、念書・借用書にサインしたりすることにどのようなリスクがあるのか
について、弁護士の視点から整理します。
「返せと言われたから、とりあえず払おう」とすぐに対応するのではなく、まず相手が何のお金を、どのような根拠で請求しているのかを整理することが重要です。
「今まで使った金」は、ひとつのまとまりではない
まず、相手が挙げている総額を分解するところから始めます。実際には、性質の異なるお金が合算されていることがほとんどです。
店の会計として支払われた代金(飲食代、指名料、ボトル代、サービス料など)
店を通さず、個人に手渡しや送金で渡されたお金
プレゼントとして贈られた物
「立て替えておく」「貸しておく」と説明されて渡されたお金
このうちどれに当たるかによって、そもそも請求の相手が誰なのか、返す義務が生じ得るのかが変わります。総額のまま扱うと、本来切り離せるはずの部分まで自分の問題として抱え込むことになります。
店に支払われた代金は、請求の宛先が違う
店で支払われた代金について、契約の相手方は店です。キャストは店との間で雇用または業務委託の関係にあり、客が店に支払った代金をそのまま受け取っているわけではありません。報酬としてその一部が支払われる仕組みです。
そのため、料金が高すぎた、説明と違ったという不満であっても、それは店との間の問題であり、キャスト個人が返還の名あて人になるのが原則ではありません。ここは請求書やレシート、店の伝票で切り分けられる部分です。
一方で、店の枠外で個人に渡されたお金は、これとは別の評価になります。以下は、その部分についての話です。
個人的に受け取ったお金は、渡し切りなら原則として戻らない
「あげる」という趣旨で渡されたお金は、法律上は贈与にあたります。書面によらない贈与は解除できるという定めがありますが、すでに渡し終わった部分については解除できないとされています(民法第550条ただし書)。
したがって、後から気持ちが変わった、関係が終わったという理由だけで、渡し切りのお金の返還が認められるわけではありません。プレゼントとして贈られた物も同じ整理になります。
「返す約束があった」と示すのは、請求する側
貸したお金だという主張であれば、返す約束があったことを示す必要があるのは、請求する側です。振込の記録や送金アプリの履歴は、お金が動いた事実を示すにとどまり、それだけで返還の合意まで証明するものではありません。
逆に、返すと書いたメッセージ、借用書、返済として一部を渡した記録などが残っていれば、貸したお金だと評価されやすくなります。
ここで大切なのは、やり取りの記録を消さないことです。自分に不利に見えるものも含めて残しておくほうが安全です。相手が都合のよい部分だけを切り取って示してくることがあり、前後の文脈が残っていれば、それを補うことができます。
返還が問題になり得るのは、受け取った時点の説明に事実の食い違いがある場合
相手が「だまされた」と主張するとき、その言い分は次の三つの層に分けて考えると整理しやすくなります。
感情の表現。好意を示す言葉は、真偽を確かめる手立てがなく、責任の対象になりにくい層です。
将来についての話。いつか一緒になる、店を辞めるといった内容は、実現しなくても心変わりと区別しづらい層です。
その時点の事実。家族が入院している、支払期限が迫っている、来月退店するといった話は、当時本当だったかを確かめられる層です。
争いになりやすいのは三つ目です。しかも、その事実が相手がお金を出す決め手になっていたのかまで問われます。ここが認められた場合には、意思表示の取消しを経て、不当利得としての返還が問題になります。感情のやり取りそのものが直ちに責任につながるわけではありません。
「もう使ってしまった」は、断る理由になりにくい
返還の問題になったとき、お金については利益が残っていると推定されるのが一般的な扱いです。生活費や借入れの返済に充てた場合は、その分だけ自分の財産の減少を免れているため、利益は残っていると評価されます。
遊興のために費消した部分については残っていないと扱われる余地がありますが、その事情は主張する側が具体的に示す必要があります。手元にないというだけでは、断る理由として通りにくいと考えておいたほうがよいでしょう。
請求の中身と、請求のやり方は別に評価される
仮に返す部分があるとしても、求め方が度を超えれば、それ自体が別の問題になります。裁判所の考え方として、権利を持つ人であっても、その実行の方法が社会通念上許される範囲を超えれば違法となり、恐喝の問題が生じ得るとされています。このとき、請求できる金額がいくらであったかにかかわらず、受け取った金額の全体が問題とされる点も押さえておく必要があります。
もっとも、「訴える」「被害届を出す」といった予告と、「返さないなら家族や昼の職場に知らせる」といった予告は、評価が同じではありません。前者は権利行使の予告という側面があり、それだけで直ちに違法とはいえません。後者は、請求そのものと関係のない不利益を告げるもので、線を越えやすい類型です。
相手の言い分に根拠がまったくないとは限らないため、脅し文句だから無視してよい、と単純化しないことも大切です。
勤務先を知られているという、この仕事に固有の事情
店に来られる、出勤日に待たれる、SNSに勤務先や源氏名を書き込まれる。こうした形をとると、対応の枠組みが変わります。
退店を求めた後も居座る、大声を出して営業を妨げるといった行為があれば、店自身が被害を受ける立場に立ちます。店の名前で警察に相談することができ、本人が一人で矢面に立たずに済みます。入店を断ることも、店の判断で行えます。
つきまといについては、相手の目的によって当てはまる枠組みが変わります。金銭の回収だけが目的である場合、ストーカー規制法が想定する目的の要件には乗りにくい場面があり、その場合は各都道府県の迷惑防止条例や業務妨害の枠組みが受け皿になります。
また、防犯カメラの映像や入店記録、伝票は、一定期間で失われます。必要になりそうであれば、早い段階で店に保存を頼んでおくことになります。
その場で応じることが、後の交渉を狭める
負担が大きくなりやすいのは、次のような対応です。
一部でも支払うこと。債務があることを認めたと受け取られ、時効の進行にも影響し得ます。
その場で借用書や念書に署名すること。後から内容を争うのが難しくなります。
とりあえずの金額で収めようとすること。同じ相手から続けて求められる形になることがあります。
金額や期限をその場で答える必要はありません。確認したいことがあるので持ち帰ります、と伝えて時間を置くほうが、結果として選べる手が増えます。

相談先をどう使うか
店に事情を伝えておくこと、警察相談専用電話の#9110、そして弁護士が主な選択肢です。店を通さない個人的なやり取りが問題になっている場合、店が対応してくれるとは限らないため、外部の窓口を早めに用意しておくほうが安全です。
弁護士に依頼すると、連絡の窓口を一本化できます。相手からの直接の連絡が止まるだけでも、日々の負担はかなり変わります。
こちらの対応が問題になる場面
立場は入れ替わり得ます。相手の家族や勤務先に事情を知らせる、SNSに相手の名前や写真を出す、相手にやり取りの削除を求めるといった対応は、いずれも自分の側の責任を生じさせたり、後の主張を弱めたりする方向に働きます。感情的な反応を控え、記録を残しながら淡々と扱うことが、結果として自分を守ります。
よくあるご質問
「詐欺で警察に行く」と言われました。 警察に相談すること自体は誰でもできます。もっとも、刑事の詐欺として扱われるかどうかは、受け取った時点で事実と異なる説明があり、それが交付の決め手だったといえるかが問われます。感情のやり取りだけを理由に成立するものではありません。呼び出しを受けた場合は、その前に弁護士に相談しておくことをおすすめします。
店で使った分まで含めて請求されています。 店の会計として支払われた代金と、個人的に受け取ったお金は分けて考えます。前者は店との契約の問題であり、キャスト個人が返す立場にあるのが原則ではありません。伝票や請求の記録で切り分けたうえで、その旨を伝えることになります。
一度だけ返してしまいました。 支払った事実が、債務を認めたものとして扱われる可能性はありますが、それで全額の支払義務が確定するわけではありません。どういう経緯で渡したのかを記録に残し、以降の支払いは止めて相談してください。
まとめ
「今まで使った金」は、性質の異なるお金の合算であることがほとんどです。
店に支払われた代金は、契約の相手である店との問題であり、個人が返す立場にあるのが原則ではありません。
渡し切りのお金は、後から気持ちが変わったという理由だけでは戻りません。
返す約束があったことを示す必要があるのは、請求する側です。
争いになりやすいのは、受け取った時点の事実についての食い違いです。
返す部分があるとしても、求め方が度を超えれば別の問題になります。
その場で払う、その場で署名することが、後の選択肢を狭めます。
この記事の監修者
若井 亮(わかい りょう)
代表弁護士 弁護士法人若井綜合法律事務所(東京弁護士会所属)
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の脅迫的な言動にも毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために尽力している。
弁護士法人若井綜合法律事務所
https://wakailaw.com/
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当事務所は、恐喝・脅迫被害をはじめとする男女間のトラブルを数多く取り扱ってまいりました(男女トラブルのご相談は類型23,000件以上お受けしてまいりました)。「家族や勤務先に影響が及ばないように」という点に最大限配慮しながら、内密かつ穏便な解決を最優先に対応いたします。すでに個人情報を知られてしまっている場合や、要求がエスカレートしている場合も、状況に応じて被害の拡大を防ぐ手立てがあります。
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