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    プレスリリース
    2026年2月25日 14:00
    学校法人近畿大学

    「鬼滅の刃」の禰豆子が咥えている竹は本物とは違う? 口枷と実際の竹を科学的に比較

    竹のイメージ画像
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    近畿大学農学部(奈良県奈良市)環境管理学科教授 井上昭夫(イノウエアキオ)は、人気マンガ「鬼滅の刃」に登場するヒロイン・竈門禰豆子の口枷について、実際の竹と比較する科学的検証を行いました。その結果、マンガに描かれた口枷における節の間隔は、実在する竹とは異なる特徴をもつことを明らかにしました。本研究は、森林科学の手法を用いてマンガを分析する新しい試みであり、今後、竹の構造を理解する教材として、理科教育や数学教育、野外環境学習での活用につながることが期待されます。
    本件に関する論文が、令和8年(2026年)2月7日(土)に、オランダのElsevier社発行の竹に関する学術雑誌"Advances in Bamboo Science(アドバンス イン バンブー サイエンス)"に掲載されました。

    【本件のポイント】
    ●人気マンガ「鬼滅の刃」のヒロイン・竈門禰豆子の口枷について、節の間隔を実際の竹と科学的に比較
    ●マダケ属の竹の実測データと数理モデルに基づいて、その特徴を科学的に検証
    ●本研究成果は、竹を使った理科教育や数学教育、野外環境学習の教材としての活用に期待

    【本件の背景】
    マンガ「鬼滅の刃」は、近年において世界的に人気の高い作品の一つです。本作の主人公・竈門炭治郎の妹・竈門禰豆子は、鬼に襲われたことをきっかけに自身も鬼へと変化してしまいます。そのため、禰豆子は人を襲うことがないように、鬼殺隊の冨岡義勇によって竹の口枷をはめられます。
    この口枷には、4つの節(3つの節間※1)がありますが、その間隔を観察すると、実際の竹とは異なります。実際の竹では、節間の間隔(節間長)は一般に稈※2 の中央付近が最も長く、両端に向かって徐々に短くなることが知られています。口枷を観察すると、中央の節間が長く、隣接する節間が短いため、口枷の中央節間が最大節間長に対応することがわかります。しかし、口枷の節間長の分布は、隣接する節間が中央節間に比べて過度に短いように見えて、不自然です。
    「鬼滅の刃」は、歴史学・哲学・文学・民俗学・宗教学・ポストヒューマニズムなどの観点から研究されていますが、自然科学あるいは植物科学分野の研究はあまりなく、特に、マンガにおける竹の口枷の描写を検討した研究はありませんでした。

    【本件の内容】
    本研究では、マンガに描かれた禰豆子の口枷を対象に、実際の竹と比較する科学的な検証を行いました。禰豆子が竹の口枷を着用しているマンガのシーンを計150例抽出し、それぞれについて中央の節間および隣接する節間の長さを測定しました。測定値から算出した節間比を実際の竹と比較したところ、マンガにおける節間比は0.45でしたが、実際の竹では0.94であり、約2倍の違いがありました。
    分析の結果から、マンガに描かれた禰豆子の口枷における節の間隔は、実際の竹とは異なる特徴をもつことが明らかになりました。また、経験的な検証に加え、数理モデルを用いた理論的な解析からも、マンガの口枷の節の間隔は、実在する竹では再現が難しいことが示されました。本研究は、森林科学の手法を用いてマンガを分析する新しい試みであり、今後、竹の構造を理解する教材として理科教育や数学教育、野外環境学習への応用が期待されます。
    なお、本研究は、このマンガ作品を批判するものではなく、このマンガを通じて、竹への市民の関心の喚起や科学リテラシーの向上に貢献することをめざしたものです。

    【論文掲載】
    掲載誌:Advances in Bamboo Science(インパクトファクター:3.7@2025)
    論文名:Nezuko’s bamboo muzzle differs from actual bamboo (Phyllostachys spp.)
        (禰豆子の竹の口枷は実際の竹とは異なる)
    著者 :井上昭夫
    所属 :近畿大学農学部環境管理学科(近畿大学アグリ技術革新研究所兼務)
    URL  :https://doi.org/10.1016/j.bamboo.2026.100225
    DOI  :10.1016/j.bamboo.2026.100225

    【本件の詳細】
    本研究では、マンガ作品に描かれた口枷の形状をできるだけ客観的に評価するため、禰豆子が正面を向いて描かれている場面を中心に約150例抽出し、節間の長さを定規で測定しました。また、作画や縮尺の違いによる影響を避けるため、絶対的な長さではなく、中央の節間に対する両側の節間の比率(節間比)に着目して分析を行いました。
    比較対象として、「鬼滅の刃」に描かれている時代(大正時代)に国内に広く分布し、栽培されていたマダケ属の竹(本研究では、モウソウチクとハチク)、合計112本の実測データを用いました。実際の竹では、節間の長さは稈の中央付近で最大となり、そこから根元や先端に近づくにつれて徐々に短くなることが知られています。そこで、この実測データから、稈中央部付近の最大節間長とその両側の節間長との節間比を求め、マンガに描かれた口枷の節間比と比較しました。
    その結果、口枷の節間比は0.45であったのに対し、実際の竹での節間比は0.94となり(いずれも平均値)、約2倍の違いがあり、有意差もあることがわかりました。この結果は、実測データに基づく節間長の数理モデルを用いた解析からも支持されました。以上の結果より、マンガに描かれた口枷の節間は、実在する竹の形態からは再現が難しいことが示されました。
    また最大節間長の平均は、モウソウチクで35cm、ハチクで25cmでした。日本人を含む女性の顔の長さ(生え際から顎先まで)の平均は18.28cmであるため、節間長の方が顔よりも長いことが示唆されています。しかしマンガでは、口枷に対する顔の長さが0.66で、口枷の方が短く見えています。この結果から、禰豆子の竹の口枷は、節間比および口枷-顔の長さの比の両方において、実際の竹とは異なることが示唆されました。
    本研究で用いた観察の手法は、定規と巻尺のみで実施できるため、竹の構造を理解する教材として、理科教育や野外環境学習への応用が期待されます。また、数理モデルによる解析は、微分や極値の概念を理解するための数学教育にも活用できる可能性があります。
    なお、本研究で発見したマンガでの描写と実際の竹との違いは、作品の表現を批判するものではありません。身近な文化的題材を通じて竹の科学への関心を高め、研究者と社会との間にある理解のギャップを埋める試みの一つとして位置づけられます。

    禰⾖⼦の⼝枷とマダケ属2種における節間⽐の⽐較
    禰⾖⼦の⼝枷とマダケ属2種における節間⽐の⽐較

    【研究者のコメント】
    井上昭夫
    所属  :近畿大学農学部環境管理学科、近畿大学アグリ技術革新研究所
    職位  :教授
    学位  :博士(農学)
    コメント:私もマンガ「鬼滅の刃」のファンの一人で、本研究は、竹とマンガ作品の両方への親しみが出発点になっています。本論文を読んでくださった皆さんも、ぜひ、身近に生えている竹の節の間隔を観察していただければと思います。禰豆子の口枷を作ることはできるでしょうか。このような素朴な疑問をきっかけに、一人でも多くの方が竹の不思議な生態や、私たち人間との関わりについて興味をもっていただければ幸いです。

    【研究支援】
    本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究(A)(18H03818),基盤研究(B)(18KT0037)および近畿大学アグリ技術革新研究所の支援を受けました。

    【用語解説】
    ※1 節間:竹において隣り合う節と節の間の部分。
    ※2 稈(かん):竹の幹にあたる部分。竹のようなイネ科の植物における幹の呼称。

    【関連リンク】
    農学部 環境管理学科 教授 井上昭夫(イノウエアキオ)
    https://www.kindai.ac.jp/meikan/2292-inoue-akio.html

    農学部
    https://www.kindai.ac.jp/agriculture/
    アグリ技術革新研究所
    https://www.kindai.ac.jp/atiri/