報道関係者各位
    プレスリリース
    2026年5月24日 20:50
    医療法人社団久視会いわみ眼科

    オルソケラトロジーを始める前に、知っておいてほしいこと

    子どもの近視治療として、オルソケラトロジーを希望される方が増えています。

    「夜に専用のレンズをつけて寝る」
    「朝に外すと、昼間は裸眼で見える」

    この分かりやすさは、オルソケラトロジーの大きな魅力です。

    眼鏡をかけずに学校へ行ける。
    スポーツがしやすい。
    黒板が見やすい。
    日中にコンタクトレンズを扱わなくてよい。

    特に小学生のお子さまにとって、日中を裸眼で過ごせることは、生活の質に大きく関わります。

    一方で、オルソケラトロジーは「便利そうだから、とりあえず始める」だけの治療ではありません。

    目に直接レンズをのせる治療です。
    夜間に装用する治療です。
    そして、近視の進行を長く見ていく治療です。

    だからこそ、始める前に知っておいてほしいことがあります。

    オルソケラトロジーは「眼鏡を外す治療」だけではない

    オルソケラトロジーは、寝ている間に専用のハードコンタクトレンズを装用し、角膜の形をやさしく整える治療です。

    角膜とは、黒目の表面にある透明な膜です。

    近視では、遠くから入った光が網膜より手前でピントを結ぶため、遠くがぼやけて見えます。オルソケラトロジーでは、角膜の中央部分のカーブを少し平らに整えることで、遠くにピントが合いやすい状態を作ります。

    その結果、日中を裸眼で過ごしやすくなります。

    ただし、私がオルソケラトロジーで大切だと考えているのは、それだけではありません。

    子どもの近視では、目の奥行きである「眼軸長」が伸びることで近視が進むことが多くあります。眼軸長が過剰に伸びると、将来、強度近視となり、網膜剥離、緑内障、近視性黄斑症などのリスクが高くなります。

    つまり、小児近視治療の目的は、今の見え方をよくすることだけではありません。

    将来の目のリスクを、少しでも減らすこと。

    ここまで含めて考える必要があります。

    保護者が管理できることは大きなメリット

    小児近視治療には、いくつかの選択肢があります。

    低濃度アトロピン点眼。
    近視管理眼鏡。
    多焦点ソフトコンタクトレンズ。
    そして、オルソケラトロジー。

    どの治療にも、それぞれの良さがあります。

    その中で、オルソケラトロジーの大きな特徴は、保護者が管理しやすいことです。

    多焦点ソフトコンタクトレンズは、日中にお子さま自身が装用し、管理する必要があります。眼鏡は安全で扱いやすい一方で、学校で外してしまったり、フレームを歪ませてしまったりすることもあります。

    オルソケラトロジーは、寝る前に保護者がつけ、朝に保護者が外すことができます。

    特に低学年のお子さまでは、「本人任せにしなくてよい」という点は大きなメリットです。

    もちろん、最終的にはお子さま自身もレンズに慣れていく必要があります。しかし、治療の入り口で保護者が関われることは、継続のしやすさにつながります。

    最初は怖くて当然

    オルソケラトロジーで最初の壁になるのは、「怖さ」です。

    目にレンズを入れるのが怖い。
    痛そう。
    自分にできるか不安。

    これは当然です。

    大人でも、初めてコンタクトレンズを入れるときには緊張します。子どもならなおさらです。

    私は、最初から完璧にできる必要はないと考えています。

    まずは、レンズに慣れること。
    目に触れられることに慣れること。
    装用後に「見える」という実感を持つこと。

    この段階が大切です。

    一度、日中の見え方の変化を実感すると、多くのお子さまは治療に前向きになります。

    「黒板が見やすい」
    「眼鏡なしで過ごせる」
    「スポーツがしやすい」

    この体験は、治療を続ける大きなモチベーションになります。

    子どもの治療では、理屈だけでは続きません。

    本人が「やってよかった」と感じること。
    保護者が「これなら続けられそう」と思えること。

    その両方が大切です。

    誰にでも同じようにできる治療ではない

    オルソケラトロジーは、誰にでも同じように処方できる治療ではありません。

    角膜の形。
    近視の強さ。
    乱視の程度。
    睡眠時間。
    レンズ管理ができるかどうか。
    本人がレンズに慣れていけるかどうか。

    こうした条件を見ながら、その子に合うかどうかを判断します。

    処方の現場では、実際にテストレンズをつけて、目に合っているかを確認します。

    ここで大切になるのが、レンズの内側のカーブです。専門的には「ベースカーブ」と呼びます。

    このカーブが角膜の形に合っていないと、レンズがずれたり、効果が不十分だったり、角膜に負担がかかったりすることがあります。

    つまり、オルソケラトロジーでは「どのレンズを選ぶか」が非常に重要です。

    他院で「オルソケラトロジーは難しい」と言われたお子さまでも、詳しく確認すると処方できる場合があります。

    一方で、必要なレンズの形がメーカーの製造範囲を超えている場合もあります。その場合は、無理に処方するべきではありません。

    「できる可能性を丁寧に探ること」と、
    「無理に行わない判断をすること」。

    この両方が、安全な治療には必要です。

    オルソケラトロジーが合わない場合もある

    オルソケラトロジーは有力な近視治療の一つですが、すべてのお子さまに最適とは限りません。

    角膜の形が合わない。
    近視や乱視の程度が適応から外れる。
    睡眠時間が短い。
    レンズ管理が難しい。
    本人の恐怖心がどうしても強い。

    このような場合には、無理に続けるよりも、別の方法を考えた方がよいことがあります。

    大切なのは、オルソケラトロジーにこだわりすぎないことです。

    近視治療には、ほかにも選択肢があります。

    多焦点ソフトコンタクトレンズ。
    近視管理眼鏡。
    リジュセアミニ点眼。

    その子にとって、安全で、現実的で、続けられる方法を探すことが大切です。

    近視治療は、ひとつの方法に固執するものではありません。

    お子さまの目の状態、性格、生活、保護者の管理のしやすさまで含めて、治療を選ぶべきだと考えています。

    視力が出ていても、近視が止まったとは限らない

    オルソケラトロジーを始めて、日中の裸眼視力がよくなると安心される方は多いです。

    もちろん、よく見えることは大切です。

    しかし、小児近視治療では、視力だけを見ていてはいけません。

    大切なのは、眼軸長です。

    眼軸長とは、目の奥行きの長さです。子どもの近視では、この眼軸長が伸びることで近視が進むことが多くあります。

    裸眼視力が良いことと、近視の進行が完全に止まっていることは同じではありません。

    オルソケラトロジーは、眼軸長の伸びをおよそ3〜6割抑えることが期待される治療です。ただし、完全に近視の進行を止める治療ではありません。

    だからこそ、治療中も近視そのものが進んでいないかを確認する必要があります。

    今よく見えること。
    将来のリスクを少しでも減らすこと。

    この両方を見ていくことが、小児近視治療では大切です。

    アレルギーがある子は注意が必要

    オルソケラトロジーでは、アレルギー性結膜炎の管理も重要です。

    目がかゆい。
    目をこする。
    炎症がある。
    レンズがずれる。
    角膜に傷がつく。

    このような流れが起きると、オルソケラトロジーを安全に続けることが難しくなる場合があります。

    特に、春先や秋など、アレルギーが悪化しやすい季節には注意が必要です。

    アレルギーがあるから必ずできない、というわけではありません。

    しかし、かゆみや炎症を放置したままレンズを続けるのは危険です。

    オルソケラトロジーを安全に続けるためには、レンズだけでなく、目の表面の状態を整えることも大切です。

    目をこすらない。
    かゆみを我慢しない。
    充血や違和感があれば早めに相談する。

    こうしたことも、治療の一部です。

    一番怖い合併症は感染症

    オルソケラトロジーで最も注意すべき合併症の一つが、角膜感染症です。

    特に、緑膿菌やアカントアメーバなどによる感染症は、重症化すると視力に大きな影響を残すことがあります。

    だからこそ、レンズケアは非常に重要です。

    感染症を防ぐためには、3つのケアを組み合わせることが大切です。

    1つ目は、こすり洗いです。
    レンズ表面の汚れを物理的に落とします。

    2つ目は、ポビドンヨードを含む毎日の洗浄です。
    毎日の消毒によって、細菌や微生物の増殖を防ぎます。

    3つ目は、次亜塩素酸などを用いた定期的な化学洗浄です。
    通常の洗浄だけでは落としきれない汚れや微生物への対策として行います。

    オルソケラトロジーの感染症についての調査では、感染症の発生率は1万人年あたり5人と報告されています。

    1万人年あたり5人とは、1万人が1年間オルソケラトロジーを行った場合に、約5人が感染症を起こすという意味です。

    これは、1dayタイプのソフトコンタクトレンズ使用時と大きく変わらない水準とされています。

    ただし、これは正しい管理が前提です。

    報告の中で感染症を起こした方では、3ステップケアのいずれかが不十分でした。

    つまり、オルソケラトロジーは「危ない治療」なのではなく、「正しいケアを続けることが非常に重要な治療」だと考えるべきです。

    つけ方。
    外し方。
    洗い方。
    保管の仕方。
    違和感があるときに無理をしないこと。

    こうした基本を守ることが、安全性につながります。

    見えにくいときには原因を分けて考える

    オルソケラトロジー中に、視力が十分に出にくいことがあります。

    そのときに大切なのは、原因を分けて考えることです。

    単に「レンズが合っていない」と決めつけるのではなく、いくつかの可能性を順番に確認します。

    まず、レンズによって角膜の形がきちんと変化しているか。

    変化が弱い場合には、睡眠時間が足りない、装用していない日がある、レンズ装着時に空気が入っている、レンズの位置がずれている、といったことが関係している場合があります。

    次に、近視そのものが進んでいないか。

    角膜の形が整っていても、眼軸長が伸びて近視が進んでいる場合には、視力が出にくくなることがあります。

    さらに、角膜の変化にも近視の進行にも大きな問題がない場合には、調節緊張を考えます。

    調節緊張とは、近くを見る時間が長いことで、目のピント調節が過剰に働き続けている状態です。

    スマートフォン、タブレット、読書、勉強などで近くを見る時間が長いお子さまでは、ピントが近くに固定され、遠くが見えにくくなることがあります。

    この場合には、姿勢、近くを見る時間、遠くを見る習慣などを見直す必要があります。

    見えにくい理由は、一つではありません。

    だからこそ、視力が出にくいときほど、丁寧に原因を分けて考える必要があります。

    目標は、日中をしっかり見える状態で過ごすこと

    私は、オルソケラトロジーを使用している間は、できる限り裸眼視力1.0を目指したいと考えています。

    もちろん、目の状態や近視の程度によって個人差はあります。

    それでも、日中にしっかり見えることは、子どもの生活にとって大きな意味があります。

    黒板が見える。
    スポーツがしやすい。
    眼鏡を気にせず遊べる。
    自分の目で見える実感がある。

    これは、生活の質に直結します。

    一方で、視力が出ればそれで終わりではありません。

    眼軸長はどうか。
    アレルギーは落ち着いているか。
    レンズケアはできているか。
    生活習慣に無理はないか。
    本人と保護者が続けられる治療になっているか。

    ここまで見ていくことが大切です。

    オルソケラトロジーは、レンズを渡して終わりの治療ではありません。

    お子さまが無理なく続けられること。
    保護者の方が安心して管理できること。
    今の見え方と将来の近視リスクの両方に向き合うこと。

    これからオルソケラトロジーを試してみたい方には、ぜひこの視点を持って検討してほしいと思います。

    便利な治療であると同時に、丁寧な管理が必要な治療です。

    だからこそ、正しく理解し、納得したうえで始めることが大切です。


    医療法人社団久視会 いわみ眼科
    理事長:岩見 久司(医学博士・日本眼科学会認定 眼科専門医)
    所在地:兵庫県芦屋市公光町11-2 CH158 BLDG HANSHIN ASHIYA 2F
    公式サイト:https://iwami-eyeclinic.com/
    TEL:0797-35-0183