プレスリリース
ローズマリーの成分であるロスマノール※1が老化細胞に及ぼす影響 世界で最も権威のある国際化粧品技術者会連盟世界大会(IFSCC※)にて発表
株式会社ナガセビューティケァ(本社 東京都中央区、代表取締役社長 鳥江孝治)は、真皮の老化細胞においてコラーゲン等の産生促進に重要な因子(TGF-β※2)の応答性が低下することを確認しました。さらに、ローズマリーの成分であるロスマノール※1がこの応答性を高めることでセノモルフィック※3な効果を示すことを見出しました。この研究成果を、化粧品業界において最も権威のある学術大会である第36回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC※)オーストラリア大会(パース 2026年9月30日-10月1日)にて発表しました。
*世界各地81地域、51の協会が加盟し、総会員数約16,000名におよぶ組織。年に1度の学術大会では各国の化粧品技術者が一堂に会し、最新の研究成果を発表します。

発表タイトル「老化細胞におけるTGF-β※2応答の低下とローズマリー成分による影響 “Reduced transforming growth factor-β responsiveness in senescent human dermal fibroblasts and the effect of a rosemary ingredient”」
発表カテゴリー「Well Aging and Longevity」
研究背景
真皮の線維芽細胞はコラーゲンやエラスチン等の細胞外マトリックスの調節を通じて皮膚を支えており、皮膚老化の過程において重要な役割を果たしています。近年、個々の細胞における老化が生体の老化要因であることが明らかとなり、老化細胞に関する研究が活発に進められています。老化細胞を除去すること(セノリティック※4)や老化細胞の働きを抑えること(セノモルフィック※3)により、老化の進行を制御する試みがなされています。本研究では、ヒト真皮線維芽細胞を用いて長期間培養による老化細胞を樹立し、RNAシークエンス※5によりその代謝変化を検証しました。さらに、ローズマリーテルペノイドであるロスマノール※1の老化細胞に及ぼす影響を評価しました。
学会発表内容
ヒト真皮線維芽細胞を短期間培養した群(短期培養群)、及び継代を重ねて長期間培養した群(長期培養群)について、老化細胞の指標であるSA-β-ガラクトシダーゼ活性※6を評価しました。長期培養群では、SA-β-ガラクトシダーゼ活性※6が高い老化細胞の存在が確認されました。両群についてRNAシーケンス※5により遺伝子発現変化を確認したところ、短期培養群にて発現が高く、長期培養群にて発現が低い因子として、TGF-β※2シグナルを促進することで知られるSOX11やPOSTNがみられました(図1)。

これらの結果から、老化細胞ではTGF-β※2に対する応答が低下していると考え、TGF-β※2添加時のコラーゲン遺伝子の発現量を指標にTGF-β※2応答性を評価しました。その結果、短期培養群では、長期培養群と比較してコラーゲン遺伝子発現量が低下していることが確認されました(図2)。

続いて、ロスマノールを添加した培地で長期間培養した群(ロスマノール※1添加長期培養群)を準備し、先ほどと同様にTGF-β※2応答性を評価しました。その結果、ロスマノール※1添加長期培養群は長期培養群と比較して、TGF-β※2添加時のコラーゲン遺伝子の高い発現量を示しました。また、1型コラーゲンタンパク質の高い産生量が確認されました(図3)。以上の結果から、長期培養により低下したTGF-β※2の応答性をロスマノール※1が抑制することが示されました。

まとめ
本研究により、老化した皮膚線維芽細胞ではTGF-β※2に対する応答性が低下することが確認されました。ロスマノール※1は、老化細胞において低下したTGF-β※2の応答性を高める働きがあることが確認されました。本成果により、ロスマノール※1は老化細胞に対してセノモルフィック※3な働きを示し、健やかな肌の維持に役立つことが期待されます。
今後も、ローズマリーなどハーブがもつ力を科学の力で明らかにしていきます。
(専門用語)
※1 ロスマノール
ローズマリー等のシソ科植物に含まれるテルペノイド成分の1つ。
※2 TGF-β
トランスフォーミング増殖因子の略称。
コラーゲン等の細胞外マトリックスタンパク質の産生や沈着促進に働く重要内因子であり、生体の恒常性を維持
する重要なサイトカインの1つ。
※3 セノモルフィック
老化細胞を選択的に除去するのではなく、老化細胞が誘導する負の作用のみを阻害すること。
※4 セノリティック
選択的に老化細胞に細胞死を誘導し、老化細胞のみを除去すること。
※5 RNAシーケンス
次世代シーケンサーを用いて転写産物であるRNAの配列を決定することにより、細胞や組織中の遺伝子発現
を網羅的に解析する手法。
※6 SA-β-ガラクトシダーゼ活性
老化細胞において増加するリソソーム中の-ガラクトシダーゼ活性。老化細胞のマーカーとして広く利用さ
れている。