報道関係者各位
    プレスリリース
    2025年12月3日 15:40
    VORTEXA (ボルテクサ)

    日本の冬のエネルギー調達に転換点 LNGは減速、輸送用燃料はアジア依存が鮮明に ― Vortexa最新分析

    国際エネルギー分析企業Vortexaが、2025年11月初週に発表した最新の「Exclusive Japan Report 2025」によると、今冬の日本のエネルギー輸入は燃料種によって方向性が大きく分かれ、エネルギー調達の構造転換が一段と進む様相を見せている。LNGやLPG、ナフサのようなガス・石化原料が総じて弱含む一方、ガソリンや軽油など輸送用燃料はむしろ増加しており、国際市場での日本の立ち位置にも変化が生じているという。

    LNG:原発稼働率の上昇で日本の需要は鈍化

    同レポートによれば、北東アジアのLNG需要は今冬、季節平均を下回る水準にとどまる。最大の要因は中国の需要減退で、そこへ米国湾岸地域の新規プロジェクトなどによる供給増が重なることで、昨冬のような市場ひっ迫は起きにくいとされる。
    日本でも、11月から翌1月にかけて原発の再稼働が相次ぎ、発電向けのLNG需要は明確に減少する見通しだ。都市ガス需要も前年比1〜2%の減少が続いており、全体としてLNGの輸入量は落ち着いた推移となる。加えて、近年増えている米国産の受け入れでガスの軽質化が進み、これに伴う都市ガス会社のLPG混合需要の底堅さも指摘されている(画像1)。

    画像1
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    LPG・ナフサ:在庫高と石化マージン悪化で低調が続く

    ガス系燃料と並んで弱含むのがLPGやナフサだ。LPGは国内在庫が前年を上回る水準にあり、第4四半期の輸入は積み増しの必要性が低いとみられている(画像2)。さらに、石化マージンの悪化が国内外のスチームクラッカーの稼働を圧迫し、ナフサの輸入も引き続き抑制される。アジアでは日本・中国を含む複数地域でクラッカーの閉鎖・縮小計画が進んでおり、中期的にも需給緩和が続くとの見方が強い。

    画像2
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    輸送用燃料:韓国・中国からの調達が加速、米西海岸の供給不足が背景

    一方、輸送用燃料だけは例外的に輸入が増えている。日本国内の精製能力縮小を背景に、ガソリン、軽油、ジェット燃料などの調達を海外に依存する傾向が強まっており、特に韓国と中国からの輸入が急増している(画像3)。
    国際的には、米国西海岸(PADD5)で供給ギャップが続いていることから、アジア発の長距離輸送が拡大し、運賃は主要航路で上昇気味だ(画像4)。今後もMR2型タンカーを中心とした航海が活発化する可能性が高く、物流企業や商社にとっては引き続き収益機会となる。

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    原油:中東依存はさらに強まるが、世界的な供給増でJCCは軟化の可能性

    原油については、日本の輸入量が長期的に減少傾向にある中で、サウジアラビアやUAEなど中東湾岸産の比率はむしろ高まっている。世界市場では、制裁対象を含む複数の産油国で輸出が増加し、2025年9月には2020年4月を上回る過去最高水準に達した。
    このため、地政学リスクの高まりで強含んでいたJCC価格は、短期的には軟化する可能性がある。供給過剰感が市場に定着しつつあり、日本の調達コストにも影響が及ぶ可能性がある。

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    日本企業への影響:調達戦略の見直しが本格化へ

    レポート全体を通じて浮かび上がるのは、日本のエネルギー調達構造が転換点を迎えているという事実だ。電力部門で原発・再エネ比率が高まりLNG依存度が低下する一方、石化産業は縮小圧力に直面し、物流部門はアジア依存を強めている。原油は依然として中東への依存度が高く、国際市場の供給動向が調達コストを左右する状況が続く。
    エネルギー価格の変動が企業業績に直結する時代は変わらず、むしろ複雑さが増している。今冬の動向は、日本企業が調達戦略を見直す契機にもなりそうだ。