報道関係者各位
    プレスリリース
    2024年5月12日 06:00
    あさ出版

    【5/12はME/CFS世界啓発デー】医師が解説「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」とは

    5月12日は、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」の世界啓発デーです。ナイチンゲールも闘病したことで知られる、このME/CFSとはどのような病気なのでしょうか。医師・医学博士である堀田修先生の著書『いつまでも消えないつらい疲れ・だるさの正体 慢性疲労を治す本』(2024年5月28日発売予定/あさ出版)より紹介します。

    筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とは

     「原因不明の激しい全身倦怠感に始まり、強度の疲労感とともに、微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感、思考力の低下や抑うつ等の精神神経症状が長期にわたって続くことで、健全な社会生活を送ることが困難になる病態」は1988年に一つの疾患として、米国疾病予防管理センター(CDC)によって「慢性疲労症候群」と名づけられました。

     一方、身体が衰弱して身動きもままならず、痛みや記憶力の低下、感覚過敏などさまざまな症状を伴う難病はすでに1938年から英国の医学文献に記されており、1988年に、英国の衛生省・英国医療協会により、「筋痛性脳脊髄炎」として認定されていました。
    当初、筋痛性脳脊髄炎は、ウイルス感染や免疫系の異常によって脳や脊髄に炎症が起こり、神経系の障害が引き起こされた病態と考えられ、慢性疲労症候群は、ストレスや睡眠障害などが原因で自律神経やホルモンバランスが乱れた病態であるとして、両者は別の病気として考えられていました。
     しかし、その後、この二つの名前の病気が実は同じ病態として認識されるようになり、現在では筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME : myalgic encephalomyelitis/CFS : chronic fatigue syndrome)(ME/CFS)と一般に呼ばれるようになりました。以下、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)を慢性疲労症候群と表記します。

    筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とは
    筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とは

    ◆ME/CFSの症状は

     最近の研究では「脳の炎症」が慢性疲労の原因として有力視されていますが、「慢性疲労症候群の原因は現時点では不明である」が一般的な認識です。また、特異的な検査もないため、患者さんの症状のみが診断のよりどころです。
     2015年に米国医学研究所が発表した慢性疲労症候群の一般的な症状を紹介しましょう。

    ・筋肉痛
    ・腫れや赤みのない関節痛
    ・新しいタイプあるいは重度の頭痛
    ・首や脇の下のリンパ節の腫れや痛み
    ・頻繁に起こる喉の痛み
    ・寒気や寝汗
    ・視覚障害
    ・光や音に対する過敏性
    ・吐き気
    ・食物・臭気・化学物質・薬物に対する過敏症(アレルギー)

    ◆ME/CFSの診断基準

     具体的な診断基準も示します。慢性疲労症候群は次の三つの中核症状のすべてに該当し、追加症状のうちの一つは満たすものと定義されています。

    【A】三つの中核症状

    ①大幅な活動レベルの低下
    仕事や学業など社会生活や日常生活において、発症前より活動レベルが著しく低下した状態が6カ月以上続き、以下のような疲労感を伴う。
    ・深い疲労を繰り返す
    ・新しく発症した疲労
    ・継続的、または過度な運動ではない疲労
    ・休息しても緩和されることがない

    ②労作後倦怠感(PEM :post exertional malaise)
    ・発症前は問題とならなかった身体的・精神的・感情的な労作後に症状が悪化する。
    ・PEMは病気をたびたび再発させ、一部の患者では、光や音に対する感覚過敏がPEMを誘発させる可能性がある。
    ・症状は通常、活動または曝露から12~48時間後に悪化し、数日または数週間続くこともある。

    ③睡眠で疲れがとれない
    ・特別な睡眠の変化がないにもかかわらず、一晩中睡眠をとった後でも気分がよくならず、疲れがとれないことがある。

    *このうち通称「クラッシュ」と呼ばれるPEMは特に重要な症状で、慢性疲労症候群にかなり特徴的であるだけでなく、治療を行う際にも注意が必要です。

    【B】追加症状

    ①認知機能障害
    ・患者には、思考、記憶、実行機能、情報処理に問題があり、注意欠如や精神運動機能の障害もある。
    ・これらは、労作、努力、長時間の直立姿勢、ストレス、時間的プレッシャーによって悪化し、患者が仕事を維持したり、フルタイムで学校に通ったりする能力に深刻な影響を与える可能性がある。

    ②起立性調節障害
    ・起立姿勢をとり、それを維持することによって症状が悪化するもので、起立時の心拍数や血圧の異常によって客観的に測定される。
    ・ふらつき、失神、疲労の増加、認知機能の悪化、頭痛、吐き気などの起立性症状は、日常生活で静かに直立した姿勢をとると悪化し、横になると改善する(必ずしも完全に解決するわけではない)。

     慢性疲労症候群の一つひとつの症状はありふれているため、原因がわからない場合には、安易に診断されてしまう恐れがあります。そこで疲労度を示す重症度分類(PS : パフォーマンス・ステータス)の基準を設けてPS3以上を慢性疲労症候群と診断しています。このように、安易な診断(過剰診断)を避けるために慢性疲労症候群の診断基準はとても厳しいものになっています。

    慢性疲労症候群の疲労度
    慢性疲労症候群の疲労度

    ◆診断基準にこだわりすぎてはいけない

     しかし、この診断基準を満たさないからといって、病気でないわけではありません。
     例えば、倦怠感や疲労感のほかにも頭痛、咽頭痛、吐き気など、慢性疲労症候群に合致する症状があり、仕事のない日は疲れ切って一日中、自宅のソファやベッドに横たわり、仕事のある日は頑張ってなんとかフルタイムで働いて、それでも数カ月に一日は体がつらくて仕事を休んでしまう……そんな人だとPS2に相当するため、診断基準では慢性疲労症候群には該当しなくなります。
    診断基準にこだわりすぎると慢性疲労症候群の本質を見失い、逆に「過少診断」つまり、体調不良が患者さんの「気のせい」や「心の病気」とされてしまう恐れもあるのです。
     重要なのは、この慢性疲労症候群の患者さんも、コロナ後遺症やワクチン接種後症候群の患者さんと同じように、重症度とは関係なく、上咽頭を診察すると高い確率で高度の慢性上咽頭炎があり、EAT(上咽頭擦過療法)の治療で改善する事実です。

    ME/CFSに対するEAT(上咽頭擦過療法)の効果
    ME/CFSに対するEAT(上咽頭擦過療法)の効果

    書籍情報

    いつまでも消えないつらい疲れ・だるさの正体 慢性疲労を治す本
    いつまでも消えないつらい疲れ・だるさの正体 慢性疲労を治す本

    タイトル:いつまでも消えないつらい疲れ・だるさの正体 慢性疲労を治す本
    著者:堀田 修
    ページ数:240ページ 
    価格:1,540円(10%税込) 
    発行日:2024年5月28日 
    ISBN:978‐4‐86667‐678‐4
    書籍紹介ページ:http://www.asa21.com/book/b643081.html

    amazon:https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4866676787/asapublcoltd-22/
    楽天:https://books.rakuten.co.jp/rb/17827680/

    著者プロフィール

    堀田修(ほった・おさむ) 先生
    堀田修(ほった・おさむ) 先生

    堀田修(ほった・おさむ)

    1957年、愛知県生まれ。防衛医科大学校卒業。医学博士。
    「木を見て森も見る医療の実践」を理念に掲げ、2011年に仙台市で医療法人モクシン堀田修クリニックを開業。特定非営利活動法人日本病巣疾患研究会理事長、IgA腎症根治治療ネットワーク代表、日本腎臓学会功労会員。
    2001年、IgA腎症に対し早期の段階で「扁摘パルス」を行えば、根治治療が見込めることを米国医学雑誌に報告。現在は、堀田修クリニックならびに社会医療法人明陽会成田記念病院(愛知県豊橋市)にて、同治療の専門外来、普及活動と臨床データの集積を続けるほか、扁桃、上咽頭、歯などの病巣炎症が引き起こすさまざまな疾患の臨床と研究を行う。近年はEAT(上咽頭擦過療法)による「新型コロナ後遺症」への取り組みも注目を集めている。著書に『つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい』(あさ出版)など。