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    プレスリリース
    2026年7月24日 11:00
    株式会社property technologies

    住まいを選び直す自由 ー住宅流動性と人生設計の経済学ー (第3回:住宅はなぜ動かないのか──「一生もの」から「選び直せる資産」へ)|PropTech-Lab

    清水 千弘・PropTech-Lab 所長
    一橋大学大学院ソーシャルデータサイエンス研究科教授、社会科学高等研究院都市空間不動産解析研究センター・センター長。1994年 東京工業大学大学院理工学研究科博士課程中退。東京大学博士(環境学)。財団法人日本不動産研究所研究員、リクルート住宅総合研究所主任研究員、麗澤大学教授、日本大学教授、東京大学特任教授を経て、現職に至る。

    ある夫婦の話から

    40代の共働き夫婦が、子どもの小学校入学に合わせて郊外の建売住宅を購入したとしよう。35年ローンを組み、頭金を入れ、引越しを済ませる。それから10年、子どもは成長し、夫婦の働き方も変わった。在宅勤務が増え、片道1時間半の通勤が重荷になってきた。 都心のマンションに住み替えたい、そう思った時、彼らの前に立ちはだかる壁は、想像以上に高い。

    売却すれば住宅ローン控除はそこで終わる。買い替え先で新たに団体信用生命保険に入り直すと、保険料は10歳分上がる。建物の価値は税務上ほぼゼロと評価され、土地価格に依存する売却額ではローン残債を返しきれないかもしれない。仲介手数料、登記費用、引越し費用、不動産取得税。あれこれ計算するうち、夫婦は結論する。「この家で定年まで頑張ろう」と。

    これは特殊な話ではない。多くの日本の家庭が、人生のどこかで似たような計算をする。そして似たような結論に至る。住み替えという選択肢が、合理的な計算の結果として消える。 住み替えを選ばないのではなく、選べないのである。

    本連載では、なぜこの「選べなさ」が生まれているのかを、四つの層に分けて解剖していく。金融、技術、人口動態、資産観。それぞれが独立した壁ではなく、互いに絡まり合いながら、消費者を一つの家に縛りつけている。

    ここで一つ、本連載全体を貫く視点を明示しておきたい。問題は、住宅が高価であることではない。高価な意思決定であるにもかかわらず、選び直す制度が十分に整っていないことである。日本の住宅市場の重さは、慎重な国民性の結果ではない。過去の合理性が制度として残り続けた結果である。中古住宅市場の薄さは、消費者の好みだけでは説明できない。建物価値を測る制度、履歴を記録する仕組み、金融機関が評価する基準が、十分に連動してこなかったからである。これら三つの命題に、本章のすべての分析が支えられている。

    住宅は本当に「動かせない資産」なのか

    経済学では、ある資産がどれだけ自由に売買できるかを「流動性」と呼ぶ。株や債券は秒単位で売買できるから流動性が高い。 住宅は売却に数ヶ月かかるから流動性が低い。これはある程度仕方のないことだ。住宅は世界に二つと同じものがなく、買い手を探すのに時間がかかる。

    しかし、住宅市場が「ある程度低い流動性を持つ」ことと、「日本の住宅市場が世界でも特異に低い流動性を持つ」ことの間には、決定的な差がある。前者は財の本質に由来するが、後者は制度設計の結果である。

    日米英の住宅市場流動性

    年間中古住宅取引件数:米国では通常期に数百万件規模の中古住宅取引が行われてきた。近年は金利上昇の影響で取引が低迷しているが、それでも日本とは比較にならない厚みを持つ。日本の中古住宅流通件数は概ね20万件前後で推移しており、 ストック規模に対する取引比率(回転率)の差は極めて大きい。

    中古住宅の取引比率(既存住宅流通シェア):国土交通省の集計では、日本の既存住宅流通シェアは平成25年(2013年)時点で約14.7%にとどまる。同省は欧米諸国との比較において、英国・米国はいずれも70~90%水準にあると説明している。日本市場の「新築信仰」がストック流通の薄さに直結している。

    住宅・土地統計調査(2023年):日本の住宅総数は6,504.7万戸、 空き家は900.2万戸、空き家率は13.8%。 空き家のうち相当部分が「動かせない資産」として固定化されている。

    生涯移動回数:米国センサス局の推計では、米国人は生涯に十数回の移動を経験するとされる。日本人の生涯引越回数は4~5回程度とされ、購入回数も米国の3回以上に対して概ね1回である。

    これらの数字が示すのは、単に「日本は少ない」という事実ではない。日本の住宅市場が、世代を超えて人々を一つの家に固定化する制度として機能しているという事実である。

    冒頭の夫婦が「動けない」と感じた理由は、大きく四つの層に分けて考えることができる。金融、技術、人口、そして資産観である。それぞれを順に見ていこう。


    この先、日本の住宅市場に立ちはだかる「四つの壁」の正体に迫ります。
    夫婦の住み替えを阻む「第一の壁(住宅ローンが住み替えを罰する仕組み)」とは?そして、住まいを「選び直せる資産」に変えるための解決策とは?

    【続きはプロパティ・テクノロジーズ 公式サイトで読む 】
    https://pptc.co.jp/column/20260724_1100/


    『PropTech-Lab(プロップテック・ラボ)』について

    『PropTech-Lab』は、不動産市場に新たな価値をもたらし、人々が住まいを選ぶ際の新たな基準や簡便さ、価値観を醸成し、提供することを目指します。市場のニーズに応え、価格高騰のスパイラルを抑制し、より多くの人々が質の高い住宅を手に入れられるよう努めてまいります。

    『PropTech-Lab』 所長 清水 千弘 について

    一橋大学大学院ソーシャルデータサイエンス研究科教授、社会科学高等研究院都市空間不動産解析研究センター・センター長。1994年 東京工業大学大学院理工学研究科博士課程中退。東京大学博士(環境学)。財団法人日本不動産研究所研究員、リクルート住宅総合研究所主任研究員、麗澤大学教授、日本大学教授、東京大学特任教授等を歴任。
    2022年1月より、当社グループ参画。社外取締役を経て、2024年7月より、当社研究・開発組織『PropTech-Lab』所長に就任。

    <専門分野> 指数理論 / 応用計量経済学 /多変量解析
    <専門分野> 指数理論 / 応用計量経済学 /多変量解析

    株式会社property technologies(プロパティ・テクノロジーズ)について

    「UNLOCK YOUR POSSIBILITIES. ~テクノロジーで人生の可能性を解き放つ~」というミッションを掲げています。年間36,000件超の不動産価格査定実績やグループ累計約15,000戸の不動産販売で培ったリアルな取引データ・ノウハウを背景に、「リアル(住まい)×テクノロジー」で実現する「誰もが」「いつでも」「何度でも」「気軽に」住み替えることができる未来に向け、手軽でお客様にとって利便性の高い不動産取引を提供しています。

    <会社概要>
    会社名:株式会社property technologies
    代表者:代表取締役社長 濱中 雄大
    URL:https://pptc.co.jp/
    本社:東京都渋谷区本町3-12-1 住友不動産西新宿ビル6号館12階
    設立:2020年11月16日
    上場:東京証券取引所グロース市場(5527)