プレスリリース
田植え機ゼロ・耕作放棄地16枚・1.3haでスマート農業 岡山・西粟倉村のmisora、ドローン直播で9月に初収穫へ
赤字は家族が埋め、長時間労働は家族が背負い、機械が壊れた時点で終わる、 そんな"昭和の農業"に、ドローンとスマート農業で挑む。
岡山県西粟倉村の合同会社misora(代表社員:白籏 ちえみ)は、田植え機を所有せず、16枚の耕作放棄地で稲作を再開しました。測量から種まき、散布までをドローンでつなぐスマート農業によって、田植え機という大きな設備投資と、それにまつわる労働・維持費の負担そのものをなくす挑戦です。2026年4月から耕作放棄地の稲作ができるように整備を開始、自社米は2026年9月中旬に収穫を予定しています。

ドローンによる農業支援
【本リリースのポイント】
・岡山県西粟倉村のmisora、田植え機を持たず、耕作放棄地16枚(水田計17枚・1.3ha)でスマート農業による稲作を再開
・村土の約95%が森林を占める中山間地域で、大型機械や区画整理に頼らないスマート農業を実践
・産業用ドローン「Matrice 30T」のRTK測量データを、農業用ドローン「AGRAS T25P」の自動航行に活用し、種もみを直接まく“直播”を実施
・地域約80軒の農家の散布作業も支援。2026年度の請負面積は延べ250ha、9割以上が完全自動航行
・パートナー企業・佐藤建設株式会社(勝央町)の農業事業部でも約4反の農地再生を支援
■村の95%は山。平らな土地は、最初からほとんどない
西粟倉村は、村土の約95%を森林が占める中山間地域です。言い換えれば、この村で米をつくれる平らな土地は、最初からごくわずかしかありません。一枚一枚の田んぼは、山の斜面を削り、何世代もかけて拓かれてきた、かけがえのない場所です。
中山間地域は全国の耕地面積・総農家数・農業産出額のそれぞれ約4割を占め、日本の農業を支える重要な地域です。それでも傾斜地が多いため、ほ場の大区画化も、大型農業機械の導入も、農地の集積・集約化も、平地のようには進みません。「うちの田んぼには、大型トラクターも田植え機も、まっすぐ入らない」――中山間地域で米をつくる農家なら、一度は感じたことのある不便さのはずです。
耕作放棄地は、高齢化が進み、後継ぎがおらず、傾斜地の多い地域ほど発生しやすいと言われています。そして山と隣り合う田んぼでは、一枚が荒れるだけで、そこがそのまま鳥獣の通り道になります。鳥獣害、病虫害、土砂崩れ――misoraが自社の田んぼで経験した鹿による食害も、この構造の延長線上にある出来事です。
田んぼを一枚手放すことは、単に収穫が減ることではありません。山との境界線が、村の中心に向かって一枚分、狭まるということです。大型の田植え機や区画整理を前提にした従来型のスマート農業は、こうした小さく不整形な田んぼには、そのまま当てはめにくい面があります。misoraが田植え機を持たず、ドローンによる測量と自動航行だけで16枚の田んぼに向き合っているのは、この中山間地域の現実に対する一つの答えです。
■その田んぼ、あと何年、続けられますか
西粟倉村で生まれ、この村で結婚し、子どもを育ててきた白籏。幼い頃から変わらない田んぼの景色。その景色を守ってきた農家が、年々減っていく現実を、隣近所として見てきました。
misoraが日々接している西粟倉村の農家のほとんどは、年金を受け取りながら米づくりを続けています。裏を返せば、年金という支えがなければ、今の田んぼの多くはとうに姿を消していたということです。「後継ぎがいない」「体力的にもう厳しい」「機械の更新費用が出せない」――そうした声は、この村に限った話ではないはずです。
「昭和からの景観を守るために、昭和の農業を終わらせる」。
白籏がこの言葉に込めているのは、農家が一人で抱えてきた負担を、次の世代にそのまま引き継がせたくないという想いです。
「私が終わらせたい『昭和の農業』とは、農業そのものではありません。赤字を家族が埋め、長時間労働を家族が背負い、機械が壊れた時点で続けられなくなる仕組みです。」
田植え機が壊れた。後継ぎがいない。それだけで、何十年も守ってきた田んぼを手放す――そんな終わり方を、misoraは変えようとしています。
■「じゃあ自分たちがやってみよう」。口先の提案で終わらせない
農業支援を掲げる会社は数多くあっても、実際に自分たちの手で田んぼを耕し、赤字と鹿害のリスクを負う会社は多くありません。misoraは2026年度から自社の稲作を本格化し、計17枚・合計1.3haを作付け。このうち16枚は、他の担い手が見つからず放棄されていた田んぼです。
栽培の過程では、鹿による食害も実際に経験しました。種をまいて終わりではなく、収穫まで稲を守り育てる仕事は続きます。人に勧める前に、自分たちの田んぼで確かめる。misoraが農家に提案するスマート農業は、この自社実践の上に成り立っています。
■田植え機を、そもそも持たない。測量ドローン×農業用ドローンという発想
米づくりに導入したのは、農業用ドローン「DJI AGRAS T25P」。その自動航行の精度を支えているのが、測量や災害対応など幅広い用途で使われる産業用ドローン「DJI Matrice 30T」による農地の測量データです。衛星測位の誤差を補正し、高精度に位置を求める「RTK」測量を、農地にも転用しました。
取得した測量データをT25Pに取り込み、設定した経路を完全自動航行しながら、種もみを田んぼへ直接まく「直播(ちょくは)」、そして肥料・農薬散布まで行います。田植え機という工程そのものを持たず、測量・種まき・散布をドローンの技術一つでつなぐ――これが、misoraが実践するスマート農業の中身です。区画整理や大型機械の導入を前提としないため、中山間地域の小さく不整形な田んぼにも適用できます。
この自動航行は、自社の田んぼだけでなく、農家から請け負う散布作業でも実践しています。misoraが支援する農家は約80人。2026年度の散布請負面積は延べ250haに達し、その9割以上ですでに完全自動航行による散布を行っています。「使いこなせるか分からない」という不安を、まず自社の米づくりで引き受けているのが、misoraのスマート農業の進め方です。
■概算金の発表を待つだけでは、何も変わらない
JA晴れの国岡山は2026年8月31日、令和8年産の主食用うるち米・もち米の全品種・銘柄について、検査時に60キログラム当たり10,200円の「出荷一時払金」を支払うと発表しました。米の販売代金の前払いにあたる概算金は11月中の提示を目指しており、決定後に概算金との差額を追加で支払う方針です。
価格が決まる前にも、収穫の季節はやってきます。価格が決まってから経営を考え直すのでは遅い――misoraはこの発表を受け、従来通りの栽培方法を続けることへの危機感を強めています。家族の働く時間、機械の持ち方、そして誰が田んぼを引き継ぐのか。数字が出る前に変えられることから、変えていく必要があると考えています。
■佐藤建設株式会社の農業事業部でも、約4反の再生を支援
この動きは、misora一社にとどまりません。パートナー企業である佐藤建設株式会社(岡山県勝田郡勝央町)の農業事業部にも、農地再生の支援を行っています。対象は、自社で再生した16枚には含まれない、約4反(約0.4ha)の田んぼ1枚。misoraはドローンによる直播、肥料散布、除草剤散布、病害虫を抑える防除を実施しました。建設業という異業種からも、中山間地域のスマート農業への参入が始まっています。
■田んぼと一緒に、続けられる方法を残す
自社米は2026年9月中旬に収穫を予定しています。16枚の耕作を再開した取り組みは、これから収穫という節目を迎えます。
今年、米を収穫する。その先に、来年も耕せる田んぼを残す。白籏が目指しているのは、村土の95%が山であっても、田んぼの景色と、そこで農業を続けられる方法を、次の世代に一緒に手渡すことです。
田植え機がなくても、米はつくれる。後継ぎがいなくても、田んぼは残せる――misoraは、自ら米を育て、地域の農家の仕事を支えながら、その証明を、これからも現場で積み重ねていきます。同じ不安を抱える岡山県内の農家の方は、下記までお問い合わせください。
■出典
JA晴れの国岡山「令和8年産米出荷にかかるお支払いについて」(2026年8月31日公表、2026年9月6日確認)
https://www.ja-hareoka.or.jp/member/member_oshirase/29140/
国土地理院「GNSS測位とは」(2026年9月6日確認)
https://www.gsi.go.jp/denshi/denshi_aboutGNSS.html
農林水産省「中山間地域等について」(2026年9月6日確認)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/tyusan/siharai_seido/s_about/cyusan/
全国町村会「岡山県西粟倉村/森林が村と人を育む」(2026年9月6日確認)
https://www.zck.or.jp/site/forum/1332.html
■会社概要
会社名 : 合同会社misora
代表者 : 代表社員 白籏 ちえみ
所在地 : 〒707-0501 岡山県英田郡西粟倉村大茅435
設立 : 2024年11月(2022年7月創業)
理念 : 地域の未来を空から拓く
主な事業 : ドローンによる農業支援、自社稲作・農地再生、
機体販売・整備、講習、空撮・測量、防災支援など
公式サイト: https://misoradrone.com/
YouTube : https://www.youtube.com/@chiemi-drone