報道関係者各位
    プレスリリース
    2026年8月18日 18:00
    NTTドコモビジネス株式会社

    NTTドコモビジネス、AI分野の最高峰国際会議IJCAI 2026に論文採択

    〜安全な運用を止めずに生産指標を最適化する因果推論を用いた新技術〜

     NTTドコモビジネス株式会社(旧 NTTコミュニケーションズ株式会社、以下 NTTドコモビジネス)が開発した製造プラントなどのシステムを稼働させたまま、安全に生産指標を最適化する新たな最適化手法「Causal Newton Optimization(因果ニュートン最適化、以下 CNO)」に関する論文(以下 本論文)が、2026年8月18日からドイツ・ブレーメンで開催される人工知能分野の国際会議「IJCAI 2026(International Joint Conference on Artificial Intelligence 2026)」の本会議(Main Track)に採択されました。本論文は、滋賀大学大学院データサイエンス研究科との連名による成果です。


    1.「IJCAI」の概要

     IJCAIは、国際的なコンピュータサイエンス分野の会議格付け指標であるICORE Conference Rankings※1において最高ランクの「A*」に位置づけられ、AI分野の歴史あるトップカンファレンスの一つです。例年の採択率は10〜20%であり、優れた研究成果の中から厳選された論文のみが採択されます。


    2.本論文の概要

    論文名:

    Causal Newton Optimization: Online Calibration with Iterative Local Linear Modeling and Newton Updates(因果ニュートン最適化:繰り返し局所線形モデリングとニュートン法更新に基づくオンライン補正)

    主著:

    藤原 大悟(NTTドコモビジネス イノベーションセンター、滋賀大学大学院データサイエンス研究科博士後期課程 在籍)

    共著:

    泉谷 知範(NTTドコモビジネス イノベーションセンター)

    清水 昌平(滋賀大学大学院データサイエンス研究科 教授)


    3.技術開発の背景

     製造プラントをはじめとする産業システムでは、生産効率や品質などの各指標をより高めるための運用条件の最適化が重要な取り組みとなっています。こうした最適化はほかにも金融・ヘルスケア・農林水産業など、幅広い分野に求められていますが、「どのような入力をすると、どのような結果が得られるのか」といった原因と結果の関係を正しくとらえる必要があります。従来は、その関係を高い精度で把握するために、システムの稼働を一時停止して実験を行うか、強化学習※2やベイズ最適化※3などの手法を用いて、運用中に特定の入力を加えて試行錯誤を行う方法が用いられてきました。これらは有効なアプローチである一方で、設備の稼働停止による生産機会の損失や、システムにさまざまな条件の入力を試すことにより設備への負荷やリスクにつながる可能性があります。そのため、実際の製造現場などでは、適用が難しいケースもありました。


    4.開発技術の概要と成果

     今回開発したCNOは、製造プラント現場などのシステムにおいて、現在の準最適な運用状態(手動操作や古典制御※4、AIによる自動運転など)を起点に、データを集めながら少しずつ補正して最適化を進める手法です(別紙:図1、図2を参照)。システムの稼働を停止したり、リスクを伴う大きな試行錯誤を行ったりする必要がなく、運用状態を悪化させにくいため、安全かつ運用に影響を与えない実導入が可能です。CNOでは、システムを停止しての実験や試行錯誤を行わない代わりに、データの原因と結果の関係を正しく考慮する「因果推論※5」を活用することで、運用データから生じる偏りを除去し精度を高めます。また、データの利用効率に優れた「ニュートン法※6」による最適化をベースとすることで、短時間で最適な運用状態へと導き、最適解に至る過程における生産損失を小さく抑えられることも大きなメリットです。さらにこれらを組み合わせたシンプルな構成により、高精度かつ、なぜその結果に至ったのか理解しやすく、現場の担当者が納得して活用可能な最適化技術を提供します。

    今回、化学プラントシミュレータを含む多様な環境での実験により、古典制御、強化学習やベイズ最適化などの既存手法と比較を行いました。その結果、CNOは多様な環境下においても、比較手法と同等以上の高い精度を維持し、一貫して安定した動作が可能なことを確認しました(別紙:図3を参照)。本手法は、因果推論分野で知られる構造的因果モデル※7として記述できるシステムであれば適用できる汎用性を備えており、製造プラントの生産指標最適化にとどまらず、さまざまな分野への応用が期待されます。


    5.今後の展開

     NTTドコモビジネスは、本技術を化学業界や水処理業界などでのプラント自動制御、電力需要の予測および制御におけるNode-AI※8との連携、フィジカルAIにおける動作制御、NaaS※9における利用状況に応じたネットワーク帯域制御、データセンターにおける空調温度制御など、自動化が求められている各業界DX向けに幅広く適用を進めます。AI時代に最適な次世代ICTプラットフォーム「AI-Centric ICTプラットフォーム(R)※10」構想のもとAI事業を推進していきます。


    「NTTコミュニケーションズ株式会社」は2025年7月1日に社名を「NTTドコモビジネス株式会社」に変更しました。私たちは、企業と地域が持続的に成長できる自律・分散・協調型社会を支える「産業・地域DXのプラットフォーマー」として、新たな価値を生み出し、豊かな社会の実現をめざします。

    https://www.ntt.com/about-us/nttdocomobusiness.html


    ※1:ICORE Conference Rankingsとは、コンピュータ科学や関連分野の国際会議の品質・重要性を評価し、ランク付けする国際的な評価システムです。詳細は以下をご確認ください。

    https://portal.core.edu.au/

    ※2:強化学習とは、試行錯誤を繰り返しながら、報酬を最大化する行動を学習するAI技術です。

    ※3:ベイズ最適化とは、少ない試行回数で効率よく最適な条件やパラメータを探索する手法です。

    ※4:古典制御とは、数学モデルに基づいてシステムを安定かつ目標どおりに動作させる制御理論です。

    ※5:因果推論とは、データと原因・結果の向きやつながりに関する事前知識を使い、「ある原因を意図的に変化させたとき、結果がどう変わるか」といった効果について、相関を超えて正しく推定する手法です。

    ※6:ニュートン法とは、関数の傾きや曲率を利用して解や最適値を高速に求める数値計算法です。

    ※7:構造的因果モデルとは、変数間の原因と結果の関係をグラフと数式で表す仕組みです。

    ※8:Node-AIとは、AIモデルの開発から運用までを、現場主導で一気通貫に実現するNTTドコモビジネスのノーコードAIツールです。https://nodeai.io/

    ※9:NaaSとは、ネットワークや付随するセキュリティ機能などをクラウドサービスのように提供するもので、ユーザーはサブスクリプション型で利用できます。

    ※10:AI-Centric ICTプラットフォーム(R)とは、企業がAIを活用して、生産性の抜本的改善、競争力強化やビジネスモデル変革を進めるAI時代に最適な次世代ICTプラットフォームのことです。



    【別紙】

    ・CNOを使った製造プラント現場などのシステムで、現在の準最適な運用状態からデータを集めながら少しずつ補正して最適化を進める計算手法や最適化のイメージは以下の通りです。

    <図1 繰り返し局所線形モデリングとニュートン法更新の計算イメージ>


    <図2 システムを止めない因果を考慮したオンライン最適化のイメージ(化学プラントの例)>


    ・化学プラントシミュレータを含む多様な環境での実験により、CNOが古典制御、強化学習やベイズ最適化などの既存手法と同等以上の精度を保ちつつ、大きく上回る安定性を示すことを確認しました。実験結果については以下の通りです。


    <図3 プラントシミュレータでの実験結果>


    ※1:Confounders(交絡因子)とは、原因と結果の両方に裏で影響を与え、見せかけの誤った因果関係を作り出してしまう隠れた要因のことです。

    ※2:BOとは、「Bayesian Optimization(ベイズ最適化)」の略称です。

    ※3:SACとは、強化学習の手法の一つである「Soft Actor-Critic」の略称です。

    ※4:PIDとは、代表的な古典制御手法の一つである「Proportional-Integral-Derivative Controller」の略称です。