プレスリリース
岐阜の山里・石徹白から全国へ。 「たつけ」を伝える認定講師が60名を超えました
岩手から沖縄まで全国62名。直線裁断の衣服と、その背景にある暮らしの知恵を伝える輪が広がっています。
岐阜県郡上市石徹白(いとしろ)地区を拠点に活動する石徹白洋品店(代表:平野馨生里)は、石徹白に受け継がれてきた作業着「たつけ」を伝える認定講師制度を運営しています。
2026年8月、この認定講師が全国62名となりました。
認定講師は、最北の岩手県から最南の沖縄県まで全国に広がり、それぞれの地域でワークショップを開催しています。
洋裁講師、会社員、裁断職人、農ある暮らしの実践者など、その背景はさまざまです。しかし、共通していることがあります。
それは、「昔の服だから残したい」のではなく、「今の暮らしに必要だから伝えたい」という思いです。

写真:年に1度行われる「認定講師ギャザリング」では、全国から15名ほどが集まります
石徹白で受け継がれてきた「たつけ」
人口約200人の山里、石徹白。
この地では、麻の栽培から糸づくり、機織り、藍染、服の仕立てまで衣服を自給してきました。布は非常に貴重なものだったため、布を無駄にしない直線裁断の知恵が受け継がれてきました。
「たつけ」は、その代表的な衣服です。
田畑や山仕事での作業がしやすく、丈夫で、傷んだら繕いながら長く着続けることができます。
石徹白洋品店は、この衣服を単なる昔の服として残すのではなく、現代の暮らしの中で再び息づく文化として伝えるため、アパレル製品としての製造・販売に加えて、その作り方を伝えるワークショップや講座を続けてきました。
ワークショップを開催すると、「日本にこんな作りの服があったとは驚き」「動きやすくてたつけしか穿けなくなりました」「布を無駄にしない素晴らしい服ですね」など参加者からの反応に、この服の作りをより広く伝えていきたいという思いが強くなりました。

写真:石徹白での「たつけワークショップ」の様子
現代に伝える手段としての「認定講師」
その思いを実現するため、2023年より始めた取り組みとして「認定講師」制度があります。「たつけ」など、石徹白に伝わる服づくりを教えるための講師を育成し、全国に広めていく仕組みです。
2泊3日で石徹白に滞在しながら、たつけワークショップ開催の方法を学ぶ講座で、講座の受講と宿題の提出を経て、講師として認定されます。
現在までに、第16期まで修了し、62名もの「認定講師」が生まれています。
全国へ広がる認定講師の輪

認定講師には、さまざまな背景を持つ人たちがいます。
東京都・松本博美さん(40代)
服づくりを行ってきた松本さんは、その過程で大量の端切れが生まれることに違和感を抱いていました。
石徹白のたつけに出会い、「布を無駄にしない」という考え方に強く惹かれたといいます。現在は、たつけや服のリメイク教室を開催しています。
奈良県・西村多代さん(50代)
裁断の仕事に携わってきた西村さんは、「四角と三角だけで、自分サイズのズボンができたことに感動した」と話します。
「ただただ『たつけ』が好き。だから認定講師になってしまったんです。」
佐賀県・北崎まなみさん(40代)
地方での自給的な暮らしを営む北崎さんは、「反物を無駄にしない」という考え方に魅力を感じ、活動を始めました。
現在は福岡、佐賀、愛知を中心に活動しています。
東京都/ 宮城県(仙台)・秋野貴子さん(50代)
秋野さんは、手仕事を通して人がつながる場を大切にしています。
「石徹白民衣の輪を広げていきましょう。」と定期的に仙台と東京にてたつけ作りの場作りをされています。
なぜ石徹白なのか
代表の平野は、初めて石徹白へ通った頃のことを、次のように振り返ります。
石徹白のおじいちゃん、おばあちゃんたちは、ただ立ち話をしているだけなのですが、とても楽しそうでニコニコとしながら日常を生きています。
食べるものを作り、家を直し、服を縫い、娯楽までも自分たちで生み出していました。
私が惹かれたのは、「たつけ」だけではありません。その背景にあるこの土地の人々の日常の暮らしそのものだったのです。
石徹白に残されていた「たつけ」は、一枚のズボンであると同時に、土地の記憶そのものでもありました。
限られた布を大切に使うこと。
自分たちの暮らしに必要なものを、自分たちの手で作ること。
家族や地域の人たちが集まり、手を動かしながら語り合うこと。
そこには、今の時代にも受け継ぎたい知恵と心が息づいています。
「たつけ」の輪、全国へ広がる
認定講師が60人を超えたことは、単に技術を教える人が増えたということではありません。
それは、石徹白の暮らしの中で育まれてきた知恵や価値観に共感する人が、全国に60人以上いるということでもあります。
石徹白洋品店では、本店でのワークショップに加え、全国各地の認定講師による講座やオンライン講座を開催しています。
石徹白を訪れて学ぶ人。
地域で学びを深める人。
自宅で手を動かしながら学ぶ人。
それぞれの暮らしの中で、「たつけ」の輪は少しずつ広がっています。
私たちは、服の形だけを伝えたいのではありません。
布を大切にすること。
手を動かすこと。
土地の記憶を受け継ぐこと。
そして、人と人とが、「好き」という気持ちでつながること。
そうした豊かさを、次の世代へ手渡していきたいと考えています。
私たちは、石徹白の暮らしから学び、受け継いだ知恵と心を、次の世代へ手渡していきます。
取材をご希望の方は、ぜひ石徹白へお越しください。