報道関係者各位
    プレスリリース
    2026年7月30日 00:00
    学校法人近畿大学

    PMSなどの月経前疾患に対するエクオールの有効性を厳密な試験で検証 重症例で改善の可能性を示唆し、今後の研究に新たな知見

    女性がサプリメントを摂取するイメージ画像
    女性がサプリメントを摂取するイメージ画像

    近畿大学東洋医学研究所(大阪府堺市)所長・教授 武田卓らの研究グループは、月経前症候群(PMS)※1 および月経前不快気分障害(PMDD)※2 の症状を有する女性を対象に、大豆イソフラボンから腸内細菌によってつくられる成分である「エクオール※3」を含んだ食品(大豆胚芽乳酸菌発酵物含有食品)の有効性を、治療薬の臨床試験などにも使われる厳密な手法で検証しました。その結果、治療は不要でも症状が重い女性ではエクオールを摂取した際に症状が大きく改善し、重症例に対しては有効性がある可能性が示唆されました。
    本研究は、PMS・PMDDに対するサプリメントの効果を、厳密な評価方法で検証した世界的にも数少ない報告で、今後女性の健康支援に向けた研究の重要な基盤となる成果です。
    本件に関する論文が、令和8年(2026年)7月30日(木)AM0:00(日本時間)に、東北ジャーナル刊行会が発行する総合医学雑誌"The Tohoku Journal of Experimental Medicine(ザ トーホク ジャーナル オブ エクスペリメンタル メディシン)"に掲載されました。

    【本件のポイント】
    ●PMS・PMDDを対象に、エクオールの効果を厳密な臨床試験で検証
    ●全体では有意差は認められなかったものの、症状の重い女性では症状改善の可能性を示唆
    ●本研究は、PMS・PMDDに対するサプリメントの効果を、国際基準に基づく方法で厳密に評価した数少ない臨床試験で、今後の女性の健康支援につながる成果

    【本件の背景】
    PMSは、月経前の不快な精神・身体症状が特徴で、女性の約8~9割が何らかの症状を経験するとされ、日常生活や仕事のパフォーマンスに大きな影響を及ぼすことがあります。そのうち約5%に相当する重症型のPMDDは、生活の質(QOL)を著しく低下させることが知られています。
    現在のPMSやPMDDの標準治療には抗うつ薬(SSRI)や低用量ピルなどがありますが、副作用や服用への抵抗がある女性もいるため、誰もが利用できる治療法ではありません。そのため、安全性が高く継続しやすいサプリメントなどの非薬物療法への期待が高まっています。
    「S-エクオール」は大豆イソフラボンから腸内細菌によってつくられる天然型の成分で、女性ホルモン調節作用を有することから、更年期症状の改善などでエクオールが利用されています。大豆イソフラボンを摂取した際に、体内でエクオールを産生できる人は約30~60%程度と言われており、産生できない場合はサプリメントや食品等で補う必要があります。先行研究では、エクオールを自ら産生できない女性は、産生できる女性よりもPMSのリスクが高いことが示されているほか、エクオールは顔のほてりなどの更年期症状を緩和することが明らかになっていました。しかし、PMS・PMDDに対する効果については、厳密な臨床試験による先行研究がありませんでした。

    【本件の内容】
    研究グループは、20~45歳の女性のうち、治療を要しない程度のPMSまたはPMDD症状を有し、かつエクオールを産生できない女性を対象に、S-エクオール含有食品またはプラセボを3カ月間摂取してもらう試験を実施しました。
    症状評価には、参加者が毎日症状を記録する、国際的に治療薬の治験でも使用される厳密な手法を用いました。その結果、主要評価項目では、エクオール群はプラセボ群より症状改善量が大きい傾向を示したものの、統計学的有意差はありませんでした。一方、症状が重い女性を対象とした解析では、エクオール群でより大きな改善が認められ、重症例ではエクオールの有効性を示唆する結果が得られました。
    PMS・PMDDを対象として、治療薬の治験と同等レベルの評価方法でサプリメントの効果を検証した報告は世界的にも例がなく、本研究成果は今後、より大規模な臨床試験を実施する際に重要な知見になるとともに、フェムテック※4 を活用した女性の健康支援にもつながると期待されます。

    図 厳密な臨床試験により、投与前後の症状の改善度を比較
    図 厳密な臨床試験により、投与前後の症状の改善度を比較

    【論文掲載】
    掲載誌:The Tohoku Journal of Experimental Medicine(インパクトファクター:1.5@2025)
    論文名:Effectiveness of a Natural S-Equol Supplement for Premenstrual Symptoms:
        A Randomized Controlled Trial
        (月経前症候群に対する天然S-エクオールサプリメントの有効性―無作為化比較試験―)
    著者 :武田卓1*、甲斐冴2、椎名昌美1、千葉康敬3 *責任著者
    所属 :1 近畿大学東洋医学研究所、2 近畿大学医学部産科婦人科学教室、
        3 近畿大学病院臨床研究センター

    【本件の詳細】
    本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「『統合医療』に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究事業」によりスタートし、途中からは大塚製薬株式会社(東京都千代田区)からの受託研究として実施されました。
    研究グループは、治療を要しない程度のPMSまたはPMDD症状を有する20~45歳のエクオールを産生できない女性119人(途中脱落11人)を対象に、S-エクオール含有食品(10mg/日)またはプラセボを3カ月間摂取してもらう、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験※5 を実施しました。
    PMS・PMDDの治療効果を臨床試験で検証するには、対象者の選定と改善効果評価のために月経周期に合わせて症状を毎日記録・評価する必要があり、実施には多大な労力を要します。本研究では、治療薬の臨床試験で標準的に用いられる「Daily Record of Severity of Problems(DRSP)※6」という手法を元に、信頼性・妥当性が十分に検証された日本語版(DRSP-J)を用いて症状を毎日評価し、国際的に信頼性の高い手法でS-エクオール含有食品の有効性を検証しました。
    その結果、主要評価項目では、エクオール群とプラセボ群との間に統計学的な有意差は認められませんでした。一方で、症状が重い対象者の探索的解析では、エクオール群でより大きな症状改善が認められ、重症例の場合はエクオールが有効である可能性が示唆されました。これらの結果は、今後、対象者数を増やした大規模な臨床試験を実施するうえで重要な知見となります。
    また、PMS・PMDDに対するサプリメントの効果を、治療薬の効果検証で用いられるレベルの、厳密な無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験により検証した報告は、世界的にもほとんどなく、本研究は女性の健康課題の解決をめざす、フェムテック分野における科学的根拠の構築にも貢献することが期待されます。

    【研究者のコメント】
    武田卓(タケダタカシ)
    所属  :近畿大学東洋医学研究所
    職位  :所長/教授
    学位  :博士(医学)
    コメント:本研究は、AMEDの研究支援を受けて開始された研究プロジェクトの成果です。PMS・PMDDに対するエクオール含有食品の有効性を、厳格なプラセボ対照二重盲検比較試験で検証した点に大きな意義があります。全体では統計学的な有意差は認められませんでしたが、症状の重い方では有効性を示唆する結果を得られました。今後は、本研究で得られた知見や研究基盤を生かし、食品をはじめとする補完・代替医療についても質の高い臨床試験による科学的検証を進め、女性のQOL向上につながるエビデンス創出に取り組んでいきたいと考えています。

    【用語解説】
    ※1 月経前症候群(PMS):月経開始前3~10日頃から現れる精神的・身体的症状で、月経開始後に軽快・消失する疾患。
    ※2 月経前不快気分障害(PMDD):PMSの中でも精神症状が強く、日常生活に大きな支障を来す重症型。
    ※3 エクオール:大豆イソフラボンから腸内細菌によって産生される成分。女性ホルモンに似た働きを持つことが知られている。S-エクオールは天然型の成分。
    ※4 フェムテック:Female(女性)とTechnology(技術)を組み合わせた造語。月経や更年期など女性特有の健康課題を、医療やデジタル技術、食品・サプリメントなどを活用して解決・支援する取り組み。本研究で検証したS-エクオール含有食品も、女性の健康を支えるフェムテック関連製品の一つとして注目されている。
    ※5 無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験:研究対象者をランダムに試験食品群とプラセボ(偽の食品)群に分け、対象者・研究者ともにどちらを摂取しているか分からない状態で効果を比較する臨床試験。有効性を科学的に検証する最も信頼性の高い研究手法の一つ。
    ※6 Daily Record of Severity of Problems(DRSP):PMS・PMDDの症状を毎日記録し、重症度を評価する国際的な評価尺度。症状の有無や程度を月経周期に沿って毎日記録するため、記憶に頼る評価よりも精度が高く、PMS・PMDDの診断や治療薬の臨床試験で標準的に用いられている。

    【関連リンク】
    東洋医学研究所 教授 武田卓(タケダタカシ)
    https://www.kindai.ac.jp/meikan/818-takeda-takashi.html
    医学部 近畿大学病院 准教授 千葉康敬(チバヤスタカ)
    https://www.kindai.ac.jp/meikan/707-chiba-yasutaka.html

    東洋医学研究所
    https://www.med.kindai.ac.jp/toyo/
    近畿大学病院
    https://www.med.kindai.ac.jp/
    医学部
    https://www.kindai.ac.jp/medicine/