プレスリリース
免税制度の経済的影響に関する独自調査を実施
~制度廃止を仮定した試算で訪日客数160万人減、GDP8,470億円縮小と推計~
一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)は、訪日外国人観光客向け消費税免税制度(TFS、正式名称「輸出物品販売場制度」)の廃止が、日本経済や観光産業、政府財政に及ぼす影響について、外部の独立した調査機関に委託し、最新の客観的データに基づく分析を実施しました。
その結果、免税制度の廃止は、日本のGDPや税収、観光産業全体に大きなマイナスの影響を及ぼすことが明らかとなりました。国際的な観光競争力を維持し、持続的な経済成長を実現するためにも、制度の継続と適正な運用が不可欠であることが示されています。
当協会は、免税制度を維持しショッピングツーリズムを振興することが、異文化理解や国際交流の促進、日本全体の活力向上、GDPの増加につながり、観光立国政策における課題の解決にも寄与すると考えています。
また、2026年11月に予定されている「リファンド方式」への免税制度移行についても、制度の不適切・不正な利用への対応と、引き続き日本経済の成長と競争力強化に資するものとして、当協会は制度の意義を広く発信し、その適正な運用と発展に貢献してまいります。
【経済調査結果の主なポイント】
●訪日観光客に対するTFSは、インバウンド観光の促進に資する重要な施策であり、日本の経済活動および成長の大きな原動力となっています。政策議論においてTFSの妥当性やメリットが問われている中、当協会が委託した調査研究により、TFSの継続は経済的観点から合理性を有することが示されました。
●本調査研究では、経済産業省、国税庁、観光庁、日本政府観光局の公的データと、免税事業者の独自の売上データを統合し、TFSが廃止された場合の日本経済への影響が分析されました。その結果、TFSを廃止した場合、訪日外国人旅行者の消費額および訪日者数が大幅に減少し、日本のGDPは推計で8,470億円縮小することが明らかになりました。さらに、買い物に対する消費税収が増加したとしても、TFS廃止の波及効果により純税収は530億円減少することが示されました。
【免税制度廃止による恒久的な影響:年間訪日客数:4.5%減、消費額:3,645億円減少】
●TFSは、訪日観光客にとって主要な旅行動機の一つです。経済調査では、同制度を廃止した場合、年間で160万人の訪日客が失われ、海外からの総来訪者数が4.5%減少すると推計されています。この訪日客数の減少は、ホテル、レストラン、交通サービスなど、観光産業全体に波及的な悪影響を及ぼすことが予想されます。
●さらに、訪日客の購買行動は価格変動に大きく左右されます。TFS廃止による10%の価格上昇は、観光客の消費パターンに強い影響を与えると考えられます。現在免税対象となっているカテゴリーにおける観光客によるショッピング支出は、3,645億円、22.8%の減少が見込まれます。
●このギャップは、TFSが再導入されない限り恒常的に続くと考えられます。つまり、今後数年のうちに訪日客数や一人当たり消費額がTFS導入前の水準まで回復する可能性はあるものの、TFSが維持されていた場合と比較すると、依然として低い水準にとどまることになります。
【免税制度は財政損失ではなく、経済刺激である:免税制度の廃止は税収の純減530億円を意味する】
●TFSは、日本における観光消費の主要な推進力です。2024年には、訪日外国人による消費額は合計8.1兆円に達し、そのうち1.44兆円が免税ショッピングインセンティブに直接起因しています。
●TFSによる消費規模の大きさを考慮すると、この制度を廃止することは日本経済に顕著なマイナス影響を及ぼします。調査によれば、GDPは直接的に8,470億円減少し、これは国全体の生産の0.13%に相当します。さらに、TFS廃止によって政府歳入が増加するとの一部主張に反し、本調査の試算では、TFS廃止によって観光客の消費と訪問者数が大幅に減少するため、消費税収が増えるにもかかわらず、全体の税収は530億円減少する見込みです(税収および印紙収入の0.07%減)。この結果から、免税制度は財政負担ではなく、中長期的には政府財政に一定のプラス効果をもたらす可能性が示唆されました。
【本経済調査について】
本調査は、日本の免税ショッピング(TFS)制度を「維持した場合」と「廃止した場合」の2つのシナリオを比較し、日本経済への影響を推計したものです。調査は以下の5つのステップで実施しました。
(1)観光庁、日本政府観光局、経済産業省の公開データに加え、免税事業者の独自データを収集・整理
(2)TFS廃止を価格上昇とみなして、対数-対数回帰分析を用いて訪日客の消費額の変化を推計
(3)価格が変化した際に需要や供給がどれだけ変動するかを示す価格弾力性モデルにより、訪日客数の減少を予測
(4)消費額および訪日客数の変化を産業連関表(インプット・アウトプットモデル)を用いてGDPへの波及効果として換算
(5)上記結果を、「維持した場合」「廃止した場合」のシナリオで比較し、経済への影響を試算