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    プレスリリース
    2026年10月24日 22:45
    弁護士法人若井綜合法律事務所

    別れた恋人から「今まで使ったお金を全部返して」と高額請求されたら?デート代・プレゼント・同棲費用は本当に返す必要がある?

    「別れた途端、元恋人から『今までデートに使ったお金を全部返して』『プレゼント代も返せ』『同棲中の生活費も精算しろ』と言われた」

    恋人との別れをきっかけに、それまでの交際中に支払われたお金をめぐって、思わぬ金銭トラブルに発展することがあります。特に、LINEやDMで突然「○年間で使った○百万円を返してほしい」などと請求されると、「払わなければ訴えられるのではないか」「本当に返す義務があるのか」と不安になる方もいるでしょう。

    しかし、交際中に相手が支払ったデート代や食事代、旅行代、プレゼント代などが、別れたことを理由にすべて返還しなければならないとは限りません。

    一方で、「後で返す約束をしていたお金」や「相手が負担するはずだった費用の立替金」など、返還義務が問題となるケースもあります。重要なのは、単に「相手がお金を払った」という事実だけではなく、そのお金が何のために渡されたのか、返す約束があったのかという点です。

    さらに、請求された金額を確認しないまま「分かった、返す」「少しずつ払う」などと返信してしまうと、その後の交渉や法的手続で問題となる可能性もあります。請求がエスカレートし、内容証明郵便や裁判所からの書類が届いた場合には、別の対応も必要になります。

    では、デート代・プレゼント代・現金・同棲中の家賃や生活費・婚約指輪などについて、どこまで返還義務が生じるのでしょうか。

    本記事では、別れた恋人から「お金を返せ」と請求された場合について、**返還義務が問題になりにくいケースと、返還を求められる可能性があるケースを整理します。**あわせて、LINEや振込記録など、どのような証拠を確認すべきなのか、請求への対応方法、内容証明や裁判所から書類が届いた場合の注意点まで、弁護士が解説します。

    出発点|渡し終えたものは、原則として戻らない

    プレゼントを渡す行為は、法律上は贈与契約にあたります。一方が財産を無償で与える意思を示し、相手方がこれを受諾することで成立する契約で、書面は必要ありません(民法549条)。

    ここでよく誤解されるのが「書面のない贈与はいつでも取り消せる」という説明です。民法550条は、書面によらない贈与は各当事者が解除できると定めていますが、ただし書で「履行の終わった部分については、この限りでない」としています。解除できるのは、まだ渡していない部分に限られるということです。

    品物であれば相手の手に渡った時点で、飲食代や旅行代であれば支払いを済ませた時点で、通常は履行が終わったと評価されます。裁判例にも、交際中の男女間の贈り物は相手への好意から出るもので、後日の返還を予想してされるものではないという考え方を示したものがあります。

    名目ごとに見る「生じるケース・生じないケース」

    1.デート代・食事代・旅行代

    原則として返還義務は生じません。支払いを済ませた時点で履行が終わっており、後から一方的に取り戻すことはできないのが基本です。金額が大きいという理由だけで結論が変わるものでもありません。

    例外は、支出の時点で「後で精算する」「半分は立て替えておく」といった取り決めが実際にあった場合です。この場合は贈与ではなく、精算の合意があったかどうかが争点になります。

    2.プレゼントとして渡した品物

    渡した時点で履行が終わっているため、こちらも原則として返還は求められません。衣類やアクセサリーのような身の回りの品について、後から「貸していたつもりだった」という説明は通りにくいといえます。

    一方、自動車や高額な貴金属など、通常は簡単に贈与しない財産については、渡した経緯や当時の関係性を踏まえて慎重に判断されます。自動車のように登録名義が残るものは、所有権が誰にあるのかという別の争点も生じます。

    3.現金の手渡し・振込

    最も争いになりやすい類型です。同じ「10万円を渡した」という事実でも、贈与であれば返還義務はなく、貸したもの(消費貸借。民法587条)であれば返す義務が生じます。分かれ目は、渡した当時に返す約束があったかどうかです。

    4.立替え・名義貸し

    本来は相手が負担すべき費用を代わりに支払った場合は、扱いが変わり得ます。相手名義の携帯料金や税金、相手の借金の肩代わりなどがこれにあたります。これらは相手の債務を消滅させる支出であり、贈与の趣旨だったと明らかでない限り、立替金として返還を求める余地があります。

    自分が名義人となってローンを組み、実際には相手が使っていたという場合も同様です。契約上の支払義務は名義人が負うため、支払った分について相手に負担を求めるという構成になります。

    5.同棲中の家賃・生活費

    未婚のカップルには、夫婦の生活費分担に関する規定(民法760条)はそのまま適用されません。誰がいくら負担するかは当事者の取り決めに委ねられます。

    したがって、明確な分担の約束がないまま一方が多く負担していた事案で、後から折半に引き直して差額を精算するという請求は、通常は認められにくいと考えられます。負担の偏りを了解したうえで生活が続いていた以上、その都度の合意があったとみられるためです。

    他方、「家賃の半分を毎月入れる」といった具体的な取り決めがあり、それが履行されていなかった場合には、未払分の請求として構成される余地があります。関係が事実婚(内縁)と評価される場合には、扱いが異なるとする議論もあります。

    6.結納金・婚約指輪・結婚準備の費用

    これらは婚姻の成立を前提として渡されるものであり、単なる贈与とは性質が異なります。婚約が解消され、婚姻に至らなかった場合には、その前提が失われたとして返還が問題になり得ます。

    ただし、常に返還されるわけではありません。裁判例には、破約の原因がもっぱら渡した側にある場合について、信義則に照らして返還請求を認めないとした考え方が示されています。また、婚姻届は出していなくても共同生活が一定期間続いていた場合には、渡した目的が相応に達せられたとみる余地もあります。

    前提として、そもそも婚約が成立していたといえるかどうか(口頭の約束にとどまるのか、指輪の授受や両家への挨拶といった外形があるのか)が争点になることも少なくありません。

    7.対価性がうかがわれる金銭

    公序良俗に反する関係を維持する目的で渡された金銭については、返還請求が認められないという考え方があります(不法原因給付。民法708条)。渡した側が「返せ」と言っても、法がその回収に手を貸さないという趣旨です。

    逆に、当初から交際する意思がないのに恋愛感情を装って継続的に金銭を出させたような事案では、詐欺による取消し(民法96条1項)や不法行為(同709条)が問題になり得ます。もっとも、この領域は事実関係の評価が分かれやすく、一般論だけで結論を出せる場面ではありません。

    争いになったとき、証明する責任はどちらにあるのか

    見落とされがちですが、ここが実務上は決定的です。

    「貸したのだから返せ」と主張する場合、貸したことを証明する責任は請求する側にあります。民法587条は、返還の約束と金銭の受領によって消費貸借が成立すると定めており、単にお金が動いた事実だけでは足りません。

    したがって、振込記録や送金明細は「渡した事実」を示すにとどまり、それだけで「貸した」ことの裏づけにはなりません。実務で意味を持つのは、借用書のほか、「貸してほしい」「来月返す」「もう少し待ってほしい」といったやり取りや、既にされた一部返済の履歴です。

    自分で作成した家計簿や集計表も、支出の記録としての意味はありますが、相手が返還を約束していたことを示すものではありません。「過去数年分を積み上げた一覧表」を突きつけられても、それ自体が支払義務を生じさせるわけではないということです。

    「返す」と言ってしまった後は、前提が変わる

    もともと返還義務がなかったとしても、「返します」と応じた時点で新たな合意が成立したと評価される可能性があります(和解。民法695条など)。

    一部だけ支払って穏便に済ませようとする対応にも注意が必要です。債務を認めたものと受け取られかねず、時効との関係でも、権利を承認したものとして時効が更新される扱いになり得ます(民法152条1項)。義務の有無を確かめないまま口にした一言が、後の交渉で最も不利に働くことがあります。

    期間の制約|請求できる期間と、答えるべき期限

    請求する側から見れば、権利には期間の制限があります。貸金や不当利得の返還請求権は、権利を行使できることを知った時から5年(民法166条1項1号)、不法行為に基づく請求は損害と加害者を知った時から3年(同724条)が一つの目安です。

    請求を受けた側にとって重要なのは、別の意味での期限です。LINEや電話、内容証明郵便それ自体に支払いを強制する力はありません。内容証明は、いつどのような文面を差し出したかを郵便局が証明する制度であって、請求の正当性を証明するものではないからです。

    これに対し、裁判所から届く書類は性質が異なります。支払督促であれば、受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てなければ手続が進み、強制執行が可能な状態に至ることがあります。訴状であれば、答弁書を出さずに期日を欠席すると、相手の主張を認めたものとして扱われるおそれがあります。60万円以下の金銭請求では少額訴訟が用いられることもあり、原則として1回の期日で審理が終わります。

    本来は返す義務がなかった事案でも、手続を放置したために支払いを命じられることはあり得ます。裁判所名義の書類だけは、内容にかかわらず期限を確認してください。

    請求の仕方が一線を越えている場合

    返還を求めること自体は、権利の主張として行われる限り違法ではありません。しかし、態様が社会通念上の範囲を超えると、害悪を告げて畏怖させれば脅迫罪(刑法222条)、そのうえで金銭を交付させれば恐喝罪(同249条)、義務のないことを無理にさせれば強要罪(同223条)にあたり得ます。

    また、自分の所有物であっても、相手が占有している物を無断で持ち去れば窃盗罪の問題が生じ、そのために住居に立ち入れば住居侵入罪(同130条)にもなり得ます。これは請求する側にとってのリスクでもあります。

    まとめ

    交際中に渡し終えたお金や品物は、原則として返す必要がありません。もっとも、結論を分けるのは金額ではなく、そのお金の名目です。

    返還義務が生じにくいのは、デート代・旅行代、渡し終えたプレゼント、取り決めのないまま偏っていた同棲中の生活費。返還が問題になり得るのは、返す約束を伴って渡された金銭、相手が本来負担すべき費用の立替え、婚姻を前提とした結納金や婚約指輪です。

    そして、争いになれば、返還を求める側が「返す約束があった」ことを示さなければなりません。請求された側は、金額の妥当性を検討する前に、まず義務の有無を確認することが出発点になります。その場で答えを出さず、やり取りの記録を残したうえで、請求の根拠を一つずつ確かめていく。それが、どちらの立場であっても遠回りに見えて確実な進め方です。


    この記事の監修者

    若井 亮(わかい りょう)
    代表弁護士 弁護士法人若井綜合法律事務所(東京弁護士会所属)

    男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の脅迫的な言動にも毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために尽力している。

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    当事務所は、恐喝・脅迫被害をはじめとする男女間のトラブルを数多く取り扱ってまいりました(男女トラブルのご相談は類型23,000件以上お受けしてまいりました)。「家族や勤務先に影響が及ばないように」という点に最大限配慮しながら、内密かつ穏便な解決を最優先に対応いたします。すでに個人情報を知られてしまっている場合や、要求がエスカレートしている場合も、状況に応じて被害の拡大を防ぐ手立てがあります。

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