プレスリリース
世界の心不全の市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の心不全の市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Heart Failure Epidemiology Forecast; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、心不全(Heart Failure)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。心不全は、心臓の構造的あるいは機能的異常によって、全身の代謝需要を満たすのに十分な血液を送り出せなくなる慢性・進行性の心血管疾患である。高齢化、高血圧、冠動脈疾患、心筋症、弁膜症などの心血管リスク因子の増加を背景に、世界的な疾患負担は拡大している。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、2023年には心不全が452,573件の死亡診断書に記載され、全死亡の14.6%に関与していたとされ、心不全が死亡、入院、医療資源利用の面で大きな負担をもたらしていることが示される。調査会社は、今後の心不全対策では早期診断、予防循環器学、長期的な統合疾患管理の重要性がさらに高まるとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病率、発症率、年齢、性別、病型、診断患者数などの疫学動向を分析している。
心不全は単一の疾患ではなく、さまざまな心疾患の最終的な臨床症候群として発症する。代表的な原因には、冠動脈疾患、高血圧、心筋症、心臓弁膜症などがある。長期間の高血圧では心臓が高い圧力に対抗して血液を送り出す必要があるため、左室肥大や心筋の構造変化が進み、最終的に収縮・拡張機能が低下する。冠動脈疾患や心筋梗塞では心筋が障害され、ポンプ機能が低下することで心不全へ進展する。
臨床的には、左室駆出率(LVEF)に基づいて、駆出率低下型心不全、駆出率保持型心不全、軽度低下型心不全などに分類される。これらは病態、患者背景、治療反応性が異なるため、心不全市場や疫学を評価する際にも重要な区分となる。
主な症状には、息切れ、易疲労感、運動耐容能低下、浮腫、体液貯留などがある。病状が進行すると、安静時にも呼吸困難が生じたり、肺うっ血や全身浮腫によって入院が必要になったりする。慢性心不全では増悪と安定を繰り返すことが多く、再入院が大きな医療負担になる。
Heart Failure Society of Americaの年次報告によると、世界では約6,000万人が心不全を抱えて生活しており、世界人口のおよそ1~3%に相当するとされる。したがって、心不全は単なる高齢者の希少な合併症ではなく、世界規模で数千万人に影響する主要な慢性心血管疾患である。
年齢との関連は非常に強い。Heart Failure Society of Americaによると、心不全有病率は65歳以降に大きく上昇し、とくに75歳以上で最も高い疾患負担が認められる。高齢になるほど、高血圧、冠動脈疾患、糖尿病、腎機能低下、心房細動、弁膜症など複数の危険因子を併存する割合が高くなるためである。
この強い年齢依存性は、2026~2035年の疫学予測において重要である。米国、欧州、日本などでは高齢者人口が増加しているため、年齢別の発症率が大きく変わらなくても、心不全を発症しやすい人口そのものが増えることで絶対患者数が拡大する可能性が高い。
また、循環器治療の進歩も患者数増加に関与し得る。急性心筋梗塞や重症冠動脈疾患で以前より多くの患者が救命されるようになると、その後に慢性心機能障害を残し、心不全として長期間生存する患者が増える可能性がある。そのため、心血管死亡の減少と心不全有病患者の増加が同時に起こる場合もある。
性別については、提示資料に注意が必要である。Global Cardiology Academyに関する記述では、米国で女性の心不全有病率がやや高いとしながら、「約3,500万の男性症例に対し約2,900万の男性症例」と記載されており、男女のラベルまたは数字に明らかな不整合がある。そのため、この箇所から正確な男女別患者数を判断することはできない。少なくとも原文は「女性でやや高い有病率」という方向性を示しているが、具体的症例数は慎重に扱う必要がある。
民族・人種別では、非ヒスパニック系黒人で心不全有病率が高く、その次に白人、ヒスパニック系が続くとされる。こうした差には、高血圧、糖尿病、肥満などのリスク因子の分布だけでなく、医療アクセス、社会経済的要因、診断時期、治療への到達度なども関係する可能性がある。
アジア系集団でも心不全は重要な問題である。提示資料では、東南アジア系集団で6.84%という有病率が報告されている。ただし、この数値は特定の対象集団や研究条件に基づく可能性があり、アジア全体の一般人口有病率として直接適用するには注意が必要である。
米国では心不全の患者規模が大きい。Heart Failure Society of Americaによると、20歳以上の米国人約670万人が現在心不全を有している。今後は2030年に約870万人、2040年に約1,030万人、2050年には約1,140万人まで増加すると予測されている。
この予測は、心不全市場の長期的な拡大を示す重要な指標である。2025年から2050年にかけて患者数が数百万人規模で増える見通しであり、慢性治療、モニタリング、入院管理、医療機器、在宅管理などへの需要もそれに伴って拡大する可能性がある。
米国では死亡負担も大きい。2023年に452,573件の死亡診断書に心不全が記載され、全死亡の14.6%に関与していたというCDCのデータは、心不全が単なる併存症ではなく、多くの死亡症例に関与する主要な臨床状態であることを示している。
ただし、「死亡診断書に心不全が記載された」ということは、必ずしも心不全が全例で直接の死因だったことを意味しない。心不全が基礎疾患、直接死因、併存病態のいずれかとして記載されている可能性があるため、この14.6%は「心不全単独による死亡率」として解釈すべきではない。
欧州では国によって発症率に差がある。Global Cardiology Academyによると、心不全発症率はイタリアで1,000人年あたり1.99例、ドイツで6.55例とされ、かなりの地域差がみられる。この差には、人口の年齢構成、心血管リスク因子、診断基準、医療アクセス、登録方法などが関係している可能性がある。
ドイツでは提示された欧州諸国の中で比較的高い発症率が示されているため、高齢化や心血管疾患負担と合わせて大きな心不全患者集団を形成していると考えられる。一方、イタリアでは発症率が相対的に低いとされるが、絶対患者数や高齢者の有病率については別途評価が必要である。
英国では、2002~2014年に心不全の発症率または関連する疫学指標が約7%低下したとされる。これは予防、冠動脈疾患管理、高血圧治療などの改善を反映している可能性がある。ただし、高齢人口が増加すれば、一人あたりの発症率が低下しても患者の絶対数は増える場合がある。
フランス、スペイン、日本、インドについては、提示資料では具体的な心不全有病率・発症率は詳しく示されていない。ただし、これらの国でも高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、人口高齢化などが心不全患者数の主要な決定要因となる。
特に日本では高齢者人口の割合が非常に高いため、心不全は高齢者医療における大きな課題となる可能性が高い。一方、インドでは人口規模の大きさに加え、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患などの増加が将来的な心不全患者数を押し上げる可能性がある。
市場・疫学上で重要なのは、心不全が単なる有病率の問題ではなく、入院と再入院を繰り返す疾患である点である。慢性心不全患者は、感染、食塩・水分過剰、不整脈、血圧変動、薬剤中断などを契機として急性増悪し、救急受診や入院が必要になることがある。
したがって、心不全患者数の増加は、外来薬物療法だけでなく、救急医療、入院病床、心エコーなどの画像診断、バイオマーカー検査、遠隔モニタリング、在宅ケア、リハビリテーションなど幅広い医療資源需要を押し上げる。
治療の目的は、症状を改善するだけでなく、心機能を安定化させ、入院回数を減らし、生存期間を延長することである。慢性疾患であるため、短期的な症状改善と長期予後改善の両方が重要となる。
薬物療法では、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などが使用される。これらは神経体液性活性化を抑え、心臓への負荷を軽減し、特定の心不全患者で予後改善を目的として用いられる。
近年ではSGLT2阻害薬も重要な治療選択肢となっている。もともと糖尿病治療薬として開発された薬剤群だが、心不全患者における入院や心血管イベントの抑制という観点から重要性が高まっている。
体液貯留やうっ血を有する患者には利尿薬が頻繁に用いられる。利尿によって余分な水分とナトリウムを排泄し、浮腫や息切れを軽減することが主な目的となる。特に急性増悪時にはうっ血解除が治療上重要である。
薬剤だけでは十分でない一部の患者では、植込み型除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)などのデバイス治療が検討される。ICDは致死性不整脈による突然死予防を目的とし、CRTは一定の電気的同期異常を伴う患者で左右心室の収縮タイミングを改善することを目的とする。
さらに終末期・高度心不全では、補助人工心臓(VAD)や心臓移植などの高度治療が選択肢となる。ただし、これらはすべての患者に適用できるわけではなく、年齢、臓器機能、全身状態、併存疾患などを踏まえた厳格な患者選択が必要である。
非薬物管理も極めて重要である。食塩摂取の制限、定期的な体重・症状のモニタリング、適切な身体活動などは、慢性心不全管理の基本となる。体重の急増は体液貯留の早期徴候となるため、患者自身による日々のモニタリングも重要である。
また、心不全管理では薬剤の服用継続が重要である。症状が安定したからといって薬剤を中止すると再増悪につながる可能性があるため、患者教育と長期的なフォローアップが必要となる。
今後は、早期診断と予防循環器学の重要性がさらに高まると考えられる。心不全が発症してから治療するだけでなく、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、肥満などのリスク因子を早期から管理し、心機能低下そのものを防ぐことが重要になる。
特に高血圧管理は大きな意味を持つ。長期間の血圧上昇は心筋肥大や拡張機能障害を引き起こし、将来的な心不全につながるため、血圧を適切に管理することは心不全予防戦略の中心となる。
冠動脈疾患の予防・治療も同様である。心筋梗塞による心筋損傷を防ぐことで、駆出率低下型心不全への進展リスクを減らすことができる。したがって、脂質管理、禁煙、糖尿病管理などの包括的な心血管予防が重要となる。
市場の観点では、心不全は患者数が非常に多く、治療期間も長いことから大規模な慢性疾患市場を形成する。薬物療法、植込みデバイス、診断、遠隔患者管理、在宅ケア、補助人工心臓など複数の市場が重なる領域である。
また、心不全の病型によって治療対象市場が異なる。駆出率低下型、保持型、軽度低下型では患者背景や治療選択肢が異なるため、今後は単一の「心不全市場」ではなく、LVEFや病因、併存疾患に応じたセグメンテーションがさらに重要になると考えられる。
全体として本レポートは、心不全を「世界で約6,000万人が罹患し、特に65歳以降、なかでも75歳以上で急速に負担が増える、死亡・再入院・医療資源利用の大きい慢性進行性心血管疾患」と位置づけている。
米国では20歳以上の約670万人が心不全を有し、2030年には870万人、2040年には1,030万人、2050年には1,140万人へ増加すると予測される。また、2023年には452,573件の死亡診断書に心不全が記載され、全死亡の14.6%に関与していたことから、その社会的・医療経済的負担は非常に大きい。
欧州では発症率に地域差があり、イタリアの1.99例/1,000人年からドイツの6.55例/1,000人年まで幅がある。英国では2002~2014年に約7%の低下が報告されているが、高齢化の進行によって将来的な絶対患者数はなお増加する可能性がある。
なお、原文の性別別疫学には、「女性の有病率が高い」としながら「3,500万の男性症例に対して2,900万の男性症例」と記載する矛盾があるため、この部分の具体的な男女別患者数は信頼できる形で解釈できない。方向性として性差の存在を示しているものの、厳密な男女比較には元データの確認が必要である。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、人口高齢化、高血圧・糖尿病・冠動脈疾患などのリスク因子増加、心血管疾患治療の進歩による長期生存患者の蓄積などが、心不全患者数を押し上げる主要因になると考えられる。その一方で、予防循環器学、早期診断、薬物療法の高度化によって、新規発症や再入院を抑制する余地も大きい。
したがって、今後の心不全管理における中心的課題は、発症後の症状管理だけでなく、高血圧や冠動脈疾患などの危険因子を早期に治療して心不全そのものを予防すること、発症後はLVEFや病態に応じてACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、SGLT2阻害薬、利尿薬などを適切に組み合わせること、必要な患者ではICDやCRTを導入すること、そして高度心不全ではVADや心移植まで含めた段階的治療を行うことである。2026~2035年は、心不全を単なる「心臓のポンプ機能低下」として治療するのではなく、予防、早期診断、病型別薬物療法、デバイス治療、在宅・遠隔管理を統合した長期的な疾患管理モデルへ移行することが、臨床・市場双方の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
心不全市場概要(8主要市場)
3.1 心不全市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 心不全市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
心不全疫学概要(8主要市場)
4.1 心不全疫学状況(2019年~2025年)
4.2 心不全疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 心不全の種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 心不全の診断済み有病患者数
7.4 種類別の心不全患者数
7.5 性別別の心不全患者数
7.6 年齢別の心不全患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国における心不全の診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別の心不全患者数
8.4 米国における性別別の心不全患者数
8.5 米国における年齢別の心不全患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国における心不全の診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別の心不全患者数
9.4 英国における性別別の心不全患者数
9.5 英国における年齢別の心不全患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおける心不全の診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別の心不全患者数
10.4 ドイツにおける性別別の心不全患者数
10.5 ドイツにおける年齢別の心不全患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおける心不全の診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別の心不全患者数
11.4 フランスにおける性別別の心不全患者数
11.5 フランスにおける年齢別の心不全患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおける心不全の診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別の心不全患者数
12.4 イタリアにおける性別別の心不全患者数
12.5 イタリアにおける年齢別の心不全患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおける心不全の診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別の心不全患者数
13.4 スペインにおける性別別の心不全患者数
13.5 スペインにおける年齢別の心不全患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本における心不全の診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別の心不全患者数
14.4 日本における性別別の心不全患者数
14.5 日本における年齢別の心不全患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおける心不全の診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別の心不全患者数
15.4 インドにおける性別別の心不全患者数
15.5 インドにおける年齢別の心不全患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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