プレスリリース
健康ビッグデータ解析より乳糖不耐症状を自覚する人はカルシウム摂取量や骨密度が低いことが示されました
弘前大学と雪印メグミルクの共同研究講座 「ミルク栄養学研究講座」
国立大学法人弘前大学(学長:福田眞作、以下「弘前大学」)と、雪印メグミルク株式会社(代表取締役社長:佐藤雅俊、本社:東京都港区、以下「雪印メグミルク」)は共同研究講座『ミルク栄養学研究講座(英語表記:Department of Precision Nutrition for Dairy Foods)』を2023年より実施しています。今回、青森県弘前市岩木地区住民の牛乳を含む乳製品の摂取量と乳糖不耐症様自覚症状※に関して研究した結果、牛乳・乳製品を摂取して不快症状を自覚する人はカルシウム摂取量や骨密度が低いことが示されました。
本研究成果は、栄養学研究に関する国際学術雑誌である「European Journal of Nutrition」に掲載されました(2025年12月6日付)。
https://doi.org/10.1007/s00394-025-03856-x
※乳糖不耐症様自覚症状:乳糖不耐症の診断に関わらず、牛乳・乳製品摂取による不快症状の自覚がある状態
本研究は、岩木健康増進プロジェクトの健康ビッグデータを有する、弘前大学COI-NEXT拠点の参画機関として実施しました。
弘前大学と雪印メグミルクは、『ミルク栄養学研究講座』の健康ビッグデータ解析により、乳製品摂取と健康状態の関係を明らかにし、雪印メグミルクが強みとする骨や乳酸菌などの深耕とともに、ミルクの新たな健康価値を今後も研究してまいります。
■論文内容のポイント
・日本人成人を対象とした健康ビッグデータを用い、牛乳・乳製品摂取による不快症状の自覚と栄養状態および骨の健康について分析。
・乳製品摂取後に不快症状を自覚する人は、牛乳およびカルシウムの摂取量が少なく、前腕部の骨密度が低いことが示された。
・乳糖の含有量が少ない乳飲料(乳糖分解乳)に関する認知度や飲用経験について、アンケート調査を行った。その結果、不快な症状の有無に関わらず、乳糖分解乳の認知と飲用経験は低く、今後は乳糖分解乳のさらなる認知度向上が必要だと考えられる。


■論文概要(掲載誌 European Journal of Nutrition. 2025 65:4)
論文題名:自己申告型乳糖不耐とカルシウム摂取量・骨密度との関連:
岩木健康増進プロジェクト健診データの横断解析
(英語原題:Self-reported lactose intolerance is inversely associated with calcium intake and bone mineral density: A cross-sectional data analysis from the Iwaki Health Promotion Project)
https://doi.org/10.1007/s00394-025-03856-x
【論文の要約】
1.背景および目的
牛乳・乳製品摂取に伴う腹部不快症状の自覚(自己申告型乳糖不耐)は、乳製品摂取量を低減させ、カルシウム摂取量の不足および骨密度低値に関連する可能性がある。しかし、日本の一般住民を対象とした自己申告型乳糖不耐およびそれが与える栄養学的影響についての研究は少ない。
そこで本研究では、青森県弘前市岩木地区住民を中心とした大規模地域健診において、自己申告型乳糖不耐と骨の健康の関連について調査し、自己申告型乳糖不耐の栄養学的課題に着目した検討を行った。
2.方法
(1)対象者:2023年岩木健康増進プロジェクト健診において、牛乳・乳製品摂取量等についての問診票および骨密度の検査結果を有する健診参加者843名
(2)測定について
①乳製品摂取量調査:牛乳・乳製品摂取量は食事歴法により算出
②問診票:乳製品摂取後の不快症状の自覚(自己申告型乳糖不耐)や、乳糖分解乳の認知度および飲用頻度についてのアンケート調査より集計
③骨密度:二重エネルギーX線吸収測定法により橈骨骨密度のZスコアおよびTスコアを算出
(3)解析について
牛乳・乳製品摂取による腹部不快症状の有無がカルシウム摂取量や骨密度にどのような影響を与えているか、これらに関与する年齢、性別などの因子で調整を行いながら解析した(重回帰分析および傾向スコアマッチング)。
3.結果
健康ビッグデータを解析した結果、以下のような結果が示されました。
(1)対象者843名における解析の結果
自己申告型乳糖不耐を有する参加者は22.7%であり、牛乳およびカルシウム摂取量が有意に低値を示した。
(2)骨密度に関する重回帰分析の結果
乳製品摂取による不快症状の自覚がある人において、以下の結果が示された。
①自己申告型乳糖不耐と橈骨骨密度のZスコアが低値であるという関係がみられた。
②傾向スコアマッチング後の解析では、自己申告型乳糖不耐と橈骨骨密度(骨塩量およびTスコア)との間にも低値であるという関係がみられた。
(3)乳糖分解乳に関する調査結果
乳糖不耐症状の自覚の有無に関わらず、認知度・飲用頻度は低値にとどまっていることが明らかとなった。
これらの結果より、乳糖不耐症状の自覚は乳製品摂取を忌避させ、カルシウム摂取量の減少および骨密度低値に関連することが示唆された。
また、骨粗しょう症予防の観点から、特に乳糖不耐症状自覚者に対してはカルシウム摂取が推奨される。乳糖分解乳はその一助となり得るが、認知度は低値にとどまっており、認知度の向上が必要と考えられる。
【過去の関連リリース】
・2023年4月14日:『ミルク栄養学研究講座の開設』
URL:https://www.meg-snow.com/news/2023/18433/
・2024年5月30日:『健康ビッグデータ解析より、骨代謝や骨強度は、日常的な牛乳・乳製品摂取と関係することが示されました』
URL:https://www.meg-snow.com/news/2024/22667/
・2024年7月11日:『「岩木健康増進プロジェクト健診」にて糖化年齢健診を実施』
URL:https://www.meg-snow.com/news/2024/22885/
・2025年1月29日:『健康ビッグデータ解析より乳製品を多く摂取する人は収縮期血圧が低いことが示されました』
URL:https://www.meg-snow.com/news/2025/25352/
・2025年3月27日:『弘前市と食生活改善を目指す取組み 弘前市の「健康とまちのにぎわい創出事業」の一環として独自の健康プログラムを実施』
URL:https://www.meg-snow.com/news/2025/25935/
・2025年6月23日:『「岩木健康増進プロジェクト健診2025」に参加 乳製品摂取健診と糖化年齢健診を実施』
URL:https://www.meg-snow.com/news/2025/27202
・2025年11月5日:『健康ビッグデータ解析より牛乳・乳製品を摂取している人は腸内細菌や脂質マーカーに特徴があることが示されました』
URL:https://www.meg-snow.com/news/2025/29103
〇「ミルク栄養学研究講座」の目的
弘前大学が実施してきた「岩木健康増進プロジェクト」の超多項目健康ビッグデータ解析による健康因子としての腸内菌叢の役割を解明するため、乳製品摂取をはじめとする食事パターンと腸内菌叢の関連において集団および個人の健康状態への影響を調べることを目的としています。
〇弘前大学COI-NEXT拠点とは
弘前大学では、2022年10月に文部科学省・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」に採択されました。弘前大学COI-NEXT拠点では、健康を基軸に、若者が地域で働きたいと思える成長産業として魅力的なヘルスケア産業を創出することによって、地域の人々を健康にしながら経済発展し、全世代の人々が生きがいをもって働き続けることができ、心身共にQOLの高い状態での健康寿命を延伸する、well-beingな地域社会モデルの実現をめざしています。これまでの弘前大学COI拠点の成果を発展的に承継し、持続的に成果を創出する自立した産学官共創拠点の形成を目指すプロジェクトです。
〇岩木健康増進プロジェクトと弘前大学COI拠点
弘前大学が青森県弘前市岩木地区で2005年から継続実施している大規模合同健康調査で、約3,000項目という世界に例のない膨大な健診項目を設けることで、巨大な健康ビッグデータを記録しています。弘前大学では、2013年に文部科学省・JSTによる「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」に採択され、岩木健康増進プロジェクト健診の超多項目健康ビッグデータの解析により、認知症・生活習慣病などの早期発見を可能にし、予防方法の創出と検証を行い、その成果を社会実装する研究活動を弘前大学COI拠点で展開しました。(2013~2022年)