プレスリリース
業界初※、ジンクリッチペイントの常識を覆す 「水性・1液型」技術を確立 ~作業性と安全性を両立した、環境と作業者にやさしい 次世代の防錆技術~
ローバル株式会社(本社:大阪市、代表取締役:田中 孝篤)は、この度初めて、水性でありながら混合作業が不要な「1液型水性有機系ジンクリッチペイント(特許出願中)」の基本技術開発に成功しました。本技術を基に、2026年度中の製品化を目指します。
※自社調べ
亜鉛粉末のSEM画像/ローバル株式会社
■開発の背景:業界が抱える「環境」と「作業性」のジレンマ
鉄のさびを防ぐ「ジンクリッチペイント」は、その高い防食性能から、橋梁やプラントなど重要な社会インフラの維持に不可欠です。その一方で、これまでの製品には、業界が長年向き合ってきた課題もありました。
●溶剤系塗料:作業性・経済性に優れているため主流であるものの、VOC(揮発性有機化合物)の排出や強いシンナー臭が、環境や作業者の健康への懸念点でした。
●水性塗料:環境にやさしい一方、塗料液や硬化剤、粉末を現場で混合する「1液・1粉型」や「2液・1粉型」しかなく、計量ミスや可使時間(混ぜてから使える時間)の制限など、作業の煩雑さが課題でした。
■技術革新のポイント:特殊技術で「水」と「亜鉛」の反応を制御
このジレンマを解決したのが、当社の新技術です。水性塗料でありながら1液化を阻んでいた最大の課題は、水と高濃度に配合された亜鉛粉末が反応し、水素ガスを発生させてしまうことや塗料性能を劣化させてしまうことでした。
今回、革新的な独自技術を用いることにより、水素ガス発生を抑制しつつ、亜鉛本来の防食性能を最大限に引き出すことに成功。これにより「水性」と「1液」の両立を世界で初めて実現しました。
■新技術の詳細
1. 水素ガス発生抑制と防食性維持の両立という高い壁
水性ジンクリッチペイントにおいて、水と亜鉛の反応、すなわち水素ガスの発生を抑制しようとすると、亜鉛の反応性が低下し、防食性能が損なわれます。この水素ガスの発生抑制と防食性の維持は互いに相反する事象であり、両立させることは極めて困難な技術課題でした。
2. 課題克服を証明する実験結果
本開発技術は、この二律背反の課題を独自の技術アプローチにより解決しました。
●水素ガス発生抑制効果(図1)
図1は、従来の水性製品と本開発品を比較したガス発生量の経時変化です。従来品はわずか3日で大量のガスが発生しているのに対し、開発品では長期間にわたり水素ガス発生量が極めて少なく、非常に高い水素ガス発生抑制効果を持つことが確認されました。これにより、1液での長期安定性を確保できることを示しています。
図1 水素ガス発生量の経時変化比較
●優れた防食性能の維持(写真1)
写真1は、腐食促進試験である塩水噴霧試験(SST)を1440時間実施した結果です。開発品は、さびや塗膜の膨れなどの異常が一切見られず、従来の水性製品と同等の優れた防食性能を維持していることが実証されました。これにより、ガスの発生を抑制しても、防食性能が損なわれないことが分かります。
写真1 SST試験結果比較
当社は2026年度中に本技術の製品化を目指し、建設・インフラ業界における労働環境の改善と生産性向上を支援するとともに、あらゆる鉄構造物の長寿命化により持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
【学会での技術発表について】
本開発技術については、以下の国内外の学会にて発表いたしました。
発表者:当社 技術開発部 係長 中谷 恭之
●13th Asia Pacific General Galvanizing Conference (APGGC) 2025
○講演日: 2025年6月25日(水)
●第45回防錆防食技術発表大会
○講演日: 2025年7月3日(木)
防錆防食技術発表大会の講演
APGGCの発表
【会社概要】
会社名 : ローバル株式会社
所在地 : 大阪市中央区北浜1-1-21 第二中井ビル6F
代表者 : 代表取締役 田中 孝篤
創業 : 1955年7月
事業内容: ジンクリッチペイントの製造・販売
URL : https://www.roval.co.jp/