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プレスリリース
2025年5月29日 13:00
IEEE

IEEEが提言を発表  ロボットが拓く高齢者の自立した暮らし

IEEE(アイ・トリプルイー)は世界各国の技術専門家が会員として参加しており、さまざまな提言やイベントなどを通じ科学技術の進化へ貢献しています。



長生きする人が増えています。そして、多くの高齢者が自宅での自立した生活を望んでいます。しかし、しばしばその願いには課題が立ちはだかります。孤立感は、高齢者の健康と幸福に悪影響を及ぼします。身体機能の衰えは、家事や社会とのつながりを難しくします。記憶力の低下は、約束の時間に間に合わなかったり、必要な薬の飲み忘れにつながります。


今日では、こうした問題の多くがパートタイムのホームヘルパーの支えによって解決されています。しかし、高齢者の数は増加の一途をたどっています。世界保健機関(WHO)によると、2020年時点で60歳以上の人口が5歳未満の子どもの数を上回りました。2050年までに、世界の60歳以上の人口の割合は、2015年の12%から22%へとほぼ倍増すると予測されています。

IEEEシニアメンバーのRalf Ma氏は、高齢者人口の増加に伴い、退職後の支援がより重要となるものの、それを支える労働力は減少傾向にあると説明しています。「高齢化社会は、人類にとって最大の課題のひとつです」と彼は述べています。人工知能は、社会の生産性を向上させ、労働力減少という根本的な課題の解決策となります。今後、家庭用ロボットは、高齢者のケア問題にも対応できるようになるでしょう。」

高齢者ケアにおけるロボットの活用というアイデアは、長年にわたり議論されてきました。たとえばIEEE Spectrumでは、物を運ぶという単純作業を通じて、高齢者の自立を支援する半自律型ロボットテーブルが紹介されました。



■ロボティクスとAIの融合

人工知能の進展により、ロボットとの連携にAIを用いる試みに注目が集まっています。自然言語処理技術の向上に伴い、スマートフォンや電子機器に話しかけ、生成AIによる応答を得ることが日常的に行われています。ロボットも同じことができるはずでは?

それだけでなく、ロボットが周囲の物体を簡単に認識したり、移動したりするようになるでしょう。

「将来的には、ロボットが薬の服用を促し、日々の家事を手伝い、伴侶としての存在になるかもしれません。緊急事態も感知して助けを呼ぶこともでき、高齢者の暮らしをより安全かつ快適にしてくれます。」とIEEEシニアメンバーのMárcio Teixeira氏は語っています。

ロボットは、ケアされる人が装着するセンサーからデータを取得できるようになるでしょう。

IEEE大学院生メンバーのHaonan Guo氏は次のように述べています。「介護ロボットは、センサーを通じて世話をする人の健康状態を監視し、体調の変化を追跡することで、異常が検出された際には即座に緊急対応ができるようになります。」



■孤独を癒せる?

ひとつの希望は、ロボットが世話をしている人に寄り添い、話し相手になることで、一人暮らしに伴う孤独感が軽減されることです。

そして、ロボットと話すという発想は、人が思うほど奇妙なものではありません。およそ60年前に開発された初のチャットボット「Eliza」は、たった200行のコードで構成され、セラピストによるカウンセリング体験が得られるよう設計されていました。

そのプログラムは十分に効果を発揮しました。設計者である、マサチューセッツ工科大学の計算機科学者Joseph Weizenbaum氏は、Elizaとの短い会話で多くのユーザーがアルゴリズムに感情移入してしまうことに、しばしば警戒感を抱いていました。ユーザーはその機械に心を開き、人生や対人関係における悩みを告白していたのです。

チャットボットの進化は著しく、すでに生成AIを活用した会話型チャットボットとして機能するデバイスや、癒し系のロボットがいくつか市場に登場しています。

しかし、これまでのところ、家事をこなせる万能型のロボットを実現するには、ロボット技術はまだ未成熟です。そのようなロボットが出現したあかつきには、自然な会話能力が備わるのも時間の問題でしょう。



■IEEEについて

IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。

IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,800を超える国際会議を開催しています。


詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。