プレスリリース
障害福祉現場における賃上げ・物価高騰・離職等の状況について 障害福祉関係団体が4月に実施した調査結果を公表
障害福祉関係4団体は、昨今の物価高騰、全産業における急速な賃上げの状況を受けて、「障害福祉現場における賃上げ・物価高騰・離職等の状況調査」(調査期間:令和7年4月10日~30日)を実施しました。
本調査から、障害福祉事業所が直面している“全産業との賃金格差の拡大”、“光熱水費・燃料費・食事提供費の継続的な高騰”の状況が明らかとなりました。
【調査の概要】
実施団体:公益財団法人日本知的障害者福祉協会
全国社会就労センター協議会
全国身体障害者施設協議会
全国社会福祉法人経営者協議会
回答数 :1,453事業所
サービス類型…比率
日中活動系…39.1%
施設系…15.4%
相談系…13.4%
訓練・就労系…13.6%
障害児系…7.6%
居住支援系…7.5%
訪問系…3.8%
【調査結果から見えた現場の実態】
〔Point(1)〕障害福祉事業所は、令和6年度報酬改定等による加算・補助金をすでにフル活用して処遇改善を進めているが、全産業との賃金差はさらに拡大
■拡大する賃金格差
令和7年度の賃上げ率は、全産業(春闘)が5.37%(前年度比+0.27%)であるのに対し、障害福祉分野は3.52%(前年度比△0.77%)であることがわかりました。
令和6年度の障害福祉分野と全産業における賃上げ率の差0.81%から、令和7年度は1.85%となり、その差が1.04%拡大しています。
図1 障害福祉分野と全産業における賃上げ率(正社員)の差
■限界を迎える事業所の努力による賃金改善
事業所職員の賃金改善の原資となる処遇改善加算はほぼすべての事業所が取得(8割超が上位加算を取得)しており、令和6年度の加算は8割超の事業所がすでに令和6年度分の賃金改善に充てており、賃金改善の余力がないことが明らかになりました。
図2 処遇改善加算の取得状況(令和7年3月)
図3 令和6年度における処遇改善加算の活用状況
〔Point(2)〕光熱水費・燃料費、食事提供費は年々上昇しており、重点支援地方交付金による支援に限界
■止まらない光熱水費・燃料費の増加
令和7年1月の光熱水費・燃料費の合計は、約147万円となり、令和5年1月の光熱水費・燃料費の合計約93万円から158.4%の増加となっています。
光熱水費・燃料費の内訳は下記のとおりです。
電気代…197.7%増(令和5年:382,576円→令和7年:756,523円)
ガス代…140.6%増(令和5年:167,961円→令和7年:236,107円)
上下水道代…100.7%(令和5年:228,620円→令和7年:230,186円)
燃料代…166.1%(令和5年:149,841円→令和7年:248,878円)
図4 光熱水費・燃料費の推移
■止まらない食事提供費の増加
令和7年1月の給食用材料費は、約146万円となり、令和5年1月の給食用材料費約112万円から130.4%の増加となっています。
図5 給食用材料費の推移
〔Point(3)〕各事業所は経営努力による処遇・職場環境改善をもって人材の確保に取り組んでいるが、さらなる財政支援がなければ他産業への人材流出は避けられない
■厳しい水準にある障害福祉現場の離職状況
障害福祉現場全体における離職状況は、令和4年度以降、1事業所あたり平均4名強で推移しています。令和6年度において、若干の減少が見られたものの、依然として厳しい水準にあります。
図6 障害福祉現場全体の離職状況
■事業所における人材確保の努力の状況
令和6年度補正予算において、障害福祉人材確保・職場環境改善等に係る補助が行われており、予定を含めて、8割超の事業所が補助を申請しています(図7左)。また、その内の95%の事業所が人件費に充当しています(図7右)。
図7 補助の申請状況、収入の活用予定
図2、3の処遇改善加算と併せて、各事業所では支援施策を活用するとともに経営努力を続けていますが、依然、人材確保は厳しい状況にあります。
【調査結果を踏まえた対応】
障害福祉関係4団体では、本調査結果から明らかとなった障害福祉現場における深刻な実態を踏まえて、国等に下記4点の緊急要望を行ったところです。
1. 支援の質を確保するための早急な処遇改善、障害福祉サービス等報酬の臨時改定
2. 全産業の賃上げと物価指数に連動する仕組みの導入(賃金スライド制・物価スライド制)
3. 種別制度間で異なる処遇改善の仕組み・運用の一元化、対象職種等と法人裁量のさらなる拡大
4. 光熱水費・燃料費、食事提供費等の物価高騰対策にかかる財政支援の拡充