プレスリリース
世界初!近畿大学がノドグロの完全養殖に成功 養殖用種苗生産技術の確立と実用化をめざす

近畿大学水産研究所(本部:和歌山県白浜町)は、富山実験場(富山県射水市)において、ノドグロ(標準和名:アカムツ)の人工種苗より養成した親魚から仔魚を得ることに成功し、完全養殖を達成しました。ノドグロの完全養殖達成は世界初の成果であり、令和8年(2026年)2月5日現在、稚魚の飼育期間は122日となっています。今後は、飼育方法や飼育環境、飼料や給餌方法、病気対策など飼育技術全般の開発とその安定化を図り、品種改良による養殖に適した種苗(稚魚)の生産をめざして研究を続けます。
【本件のポイント】
●近畿大学水産研究所が世界で初めてノドグロの完全養殖を達成し、飼育期間が122日に
●飼育方法や飼育環境、飼料や給餌方法、病気対策など飼育技術全般の開発と安定化を進める
●品種改良に取り組み、高成長といった特徴を持つ養殖に適した種苗の生産をめざす
【本件の背景】
ノドグロは標準和名をアカムツといい、「白身のトロ」と呼ばれるほど味が良いとされる高級魚です。近畿大学水産研究所富山実験場では、平成27年(2015年)にノドグロの飼育研究を開始し、平成28年(2016年)10月に人工ふ化に成功しました。そこから完全養殖を目標に人工ふ化稚魚の量産化をめざして飼育方法の改善に取り組み、令和4年(2022年)には約10,000尾の種苗生産に成功、令和5年(2023年)には30,000尾以上の種苗生産に成功しました。令和6年(2024年)の能登半島地震の影響で、液状化現象などにより富山実験場の水槽や配管が破損してノドグロの一部が死亡してしまいましたが、生き残った稚魚約8,000尾を新潟県立海洋高等学校(新潟県糸魚川市)との高大連携の一環として新潟県糸魚川市筒石沖に初めて放流し、令和7年(2025年)3月にも約37,000尾を放流しました。
【本件の内容】
令和4年(2022年)9月に新潟県上越沖で採取した卵から人工ふ化したノドグロ飼育群が3歳魚となったため、これらを親魚として、令和7年(2025年)8月から自然成熟と催熟※ の両面から採卵を試みました。自然成熟群では、雌と成熟した雄を同一水槽で飼育し、自然界の採卵時期である9月に合わせて水温を20℃以上に上げて維持するなどの工夫を行ったところ、産卵は確認されましたが受精には至りませんでした。催熟群では、9月下旬から10月上旬にかけて、ホルモン投与によって産卵を促した雌と成熟した雄を同一水槽で飼育することで産卵を試みました。その結果、雌5尾から計7回、約20万個の産卵が確認されましたが、受精には至りませんでした。そこで、人工授精を前提とした採卵を実施したところ、ホルモン投与によって産卵を促した雌6尾から計8回、約36万個の卵が得られ、これらの卵に対して人工授精を行いました。その後、10月6日に人工ふ化に成功し、完全養殖を達成しました。以降、10月10日までに、計4例の人工ふ化に成功し、うち2例について飼育を継続しています。今後3年程度で成魚となり、次の完全養殖ノドグロを産む親魚に成長する見込みです。
※卵や精子の形成に関与するホルモンなどを投与して人為的に成熟を促進すること。
<完全養殖ノドグロ稚魚の現在の飼育尾数>
採卵日 ふ化日 日齢 全長 飼育尾数
10月4日 10月6日 120日 約45~50mm 6,527尾
10月10日 10月12日 114日 約40~45mm 695尾
全長と飼育尾数は令和8年(2026年)2月3日の計測値
【今後の研究と課題】
ノドグロの養殖に関する研究はこれまでほとんど行われていなかったことから、飼育施設や飼育方法、飼料、給餌方法、病気への対策など基本的な養殖技術全般の開発と安定化が必要とされています。さらに、ノドグロ種苗の安定生産に向けて技術開発を進めるとともに、品種改良によって高成長といった特徴をもつ養殖に適した種苗の生産を可能にする研究を進めます。
【研究者のコメント】
家戸敬太郎(かとけいたろう)
所属 :近畿大学水産研究所
職位 :所長、教授
学位 :博士(農学)
専門 :水産増殖学
コメント:ノドグロの養殖研究では、やっとの思いで卵を採取して人工ふ化までうまくいっても、飼育する過程で全滅してしまうこと繰り返した時期があり、とても苦労しました。人工ふ化したノドグロはほとんどが雄で、雌の比率が3%程度であることから、継続して卵を得るためにも、稚魚の安定飼育法の確立と雌の比率を増やす研究を進めていきます。
【関連リンク】
水産研究所 教授 家戸敬太郎(カトケイタロウ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/180-kato-keitarou.html
水産研究所
https://www.kindai.ac.jp/rd/research-center/aqua-research/