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    プレスリリース
    2026年1月21日 10:00
    学校法人 名城大学

    【名城大学】海藻などがつくる天然UV吸収物質に血圧上昇抑制作用を確認

    名城大学大学院総合学術研究科の景山伯春教授(分子生物学)の研究グループは、海藻やシアノバクテリア1)が産生する紫外線吸収物質「マイコスポリン様アミノ酸(MAA)2)」が、血圧上昇に関わる酵素 ACE(アンジオテンシン変換酵素)を阻害することを初めて明らかにしました。
    MAA はこれまで紫外線防御や抗酸化作用で知られていましたが、血圧調節に関わる生理活性を示した報告はありませんでした。本成果は、MAA の食品・健康分野への応用拡大の可能性を示す重要な発見です。
    研究成果は2026年1月19日に日本農芸化学会が刊行する国際科学雑誌「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」にAdvance Article として掲載されました。

    【ポイント】

    ・海藻などに含まれる天然成分 MAA に、血圧上昇を抑える作用(ACE 阻害)を初めて発見
    ・MAA は焼き海苔など身近な海藻に多く含まれ、健康素材としての新たな可能性を提示
    ・化学構造が異なる典型型と非典型型の MAA で、複数の生理作用に違いがあることを確認

    【研究の背景】

    海藻やシアノバクテリアがつくる紫外線吸収物質「マイコスポリン様アミノ酸(MAA)」は、紫外線から細胞を守る天然成分として知られ、化粧品分野で注目されています。また、抗酸化作用や抗炎症作用など、スキンケアの観点から重要な働きも多く報告されています。
    一方で、海苔をはじめとする食用海藻にも MAA が含まれており、日常的に経口摂取されているにもかかわらず、体内での健康作用については十分に検討されていませんでした。

    【研究内容と本成果の意義】

    本研究では、食用海苔(スサビノリ3))に多く含まれる典型的な MAA「Porphyra-334(ポルフィラ-334)」と、タイの温泉環境に生息するシアノバクテリアが産生する非典型的な MAA「GlcHMS326」の 2 種類を用いました(図1)。GlcHMS326 は糖修飾・メチル化・水酸化など複数の化学修飾を受けた、非常に珍しい構造をもつ MAA です。この構造上の違いにより、Porphyra-334 と異なる働きを示す可能性があると考え、多角的に機能評価を行いました。

    評価項目としては、抗酸化作用、抗糖化作用、コラゲナーゼ阻害作用など、従来の MAA 研究で重視されてきた機能に加えて、血圧調節に関わる酵素 ACE(アンジオテンシン変換酵素)への作用も初めて検討しました。ACE は血圧を上昇させる反応に関わる重要な酵素であり、これを阻害することで血圧の上昇を抑えることができます。ACE 阻害は食品由来ペプチドなどで近年注目されているものの、MAA がこの酵素に作用するかどうかはこれまで明らかになっていませんでした。

    評価の結果、両方の MAA に ACE 阻害作用があることを初めて確認しました。この発見は、MAA が経口摂取後に体内の健康維持にも関わる可能性を示す重要な結果です。また、ACE 阻害作用・抗酸化作用・抗糖化作用・コラゲナーゼ阻害作用の作用程度が化学構造によって異なることも明らかとなり、 MAA が持つ多様な機能性を理解する上で重要な知見が得られました。

    ACE の阻害作用については、Porphyra-334 が GlcHMS326 よりも強い作用を示しました(図2)。Porphyra-334 は、日常的に食べられている海苔に豊富に含まれています。今回の結果は普段の食生活で摂取している海苔に、これまで知られていなかった健康機能性成分が潜んでいることを示すものです。また、抗糖化作用についてもPorphyra-334 が GlcHMS326 よりも強い作用を示しました。

    一方で、抗酸化作用とコラゲナーゼ阻害作用については GlcHMS326 が Porphyra-334 よりも作用程度が強いことが分かりました。これらの結果は、化学構造の違いによってMAAの機能特性が異なることを示しており、今後の応用研究を広げる上で重要な基盤となります。

    本研究は、MAA を「紫外線防御成分」から「多機能な健康関連成分」として再評価する重要な一歩となります。今後は化粧品だけでなく、機能性食品や健康素材としての応用にも発展することが期待されます。

    【研究助成金】

    本研究はJSPS科研費24K08623の助成を受けたものです。

    【用語解説】

    1. シアノバクテリア(ラン藻)
      酸素発生型光合成を行うバクテリア。植物の葉緑体の祖先となったと考えられている。水域、陸域を問わず、地球上に多種多様なシアノバクテリアが広く分布している。

    2. マイコスポリン様アミノ酸(Mycosporine-like amino acid, MAA)
      海藻、シアノバクテリア、微細藻類などがつくる天然のサンスクリーン剤。これまでに、70種類を超える MAA 類の化合物が報告されている。共通の基本構造にアミノ酸類が結合した化合物で、UV-A, UV-B 領域の波長を吸収するという特徴がある。

    3. スサビノリ(Neopyropia yezoensis)
      現在日本で流通している海苔のほとんどを占める。日本において過去に海苔として主に養殖されていたアサクサノリは養殖が難しく、現在では限られた生産者しか養殖していない。

    【掲載論文】

    雑誌名:Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

    タイトル:Comparative functional evaluation of the atypically modified GlcHMS326 and porphyra-334, two structurally distinct mycosporine-like amino acids

    著者名:Taiki Aono#, Erika Katayama#, Tomoki Tsuboi#, Sasiprapa Samsri, Rungaroon Waditee-Sirisattha, and Hakuto Kageyama
    (#:共同筆頭著者)

    掲載日時:2026年1月19日(日本時間)にオンラインで Advanced Article として公開

    DOI: 10.1093/bbb/zbag011

    【本件に関するお問い合わせ先】

    ・研究内容に関すること
     名城大学大学院総合学術研究科 
     教授 景山 伯春(かげやま はくと)
     Tel: 052-838-2609
     Email: kageyama@meijo-u.ac.jp

    ・広報担当
     名城大学渉外部広報課
     Tel: 052-838-2006
     Email: koho@ccml.meijo-u.ac.jp