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    プレスリリース
    2026年10月8日 22:10
    弁護士法人若井綜合法律事務所

    マッチングアプリで「家族や会社にばらす」と脅されたら?美人局・恐喝でお金を払う前に知っておきたい対処法

    マッチングアプリで知り合った相手とホテルに行った後、「夫(彼氏)だ」と名乗る人物から突然連絡が入り、「ホテルに行ったことを家族や会社にばらす」「知られたくなければ今日中に金を払え」などと要求された――。こうした状況では、驚きや不安から、言われるままにお金を支払ってしまうケースがあります。

    しかし、「ばらされたくないから、とりあえず払う」という判断をする前に、確認しておきたいことがあります。

    なぜなら、同じように「ホテルに行ったことをばらす」と言われるケースでも、最初から金銭を要求することを目的として仕組まれた美人局(つつもたせ)なのか、実際の配偶者などが後から不貞行為を知って慰謝料を請求しているのかによって、法的な問題は大きく異なるからです。

    さらに、相手が本当の配偶者や交際相手だったとしても、脅迫的な言葉を使って金銭を要求するなど、要求の方法によっては刑事上の問題となる可能性があります。

    本記事では、マッチングアプリをきっかけに「家族や会社にばらす」と金銭を要求された場合に、美人局と正当な慰謝料請求をどう見分けるのか、どのような場合に恐喝などの犯罪が問題となり得るのか、そしてお金を払う前に何をすべきなのかを弁護士が解説します。

    「ばらす」と言われた時点で、話は二つに分かれている

    ホテルに入ったことを理由に金銭を求められる場面は、大きく次の二つに分かれます。

    仕組まれていた場合(美人局) 本当の配偶者・交際相手からの請求
    相手の立場 関係を持つことを事前に知っていた、または共謀していた 関係を後から知った
    求めているもの その場で渡せる現金 不貞行為に対する慰謝料
    「ばらす」の位置づけ 支払わせるための手段 感情の表れ、または交渉上の圧力
    支払義務 原則として生じないと考えられる 事情によっては生じうる

    美人局(つつもたせ)は、配偶者や交際相手を装った人物が女性側と共謀し、関係を持たせたうえで金銭を要求する手口です。近年はマッチングアプリやSNSを入口とするものが多く報告されています。

    この場合、相手方は当初から関係を持つことを承諾していたことになります。不貞行為を理由とする慰謝料は、夫婦や交際関係の平穏が侵害されたことに対して認められるものですから、はじめから承諾のうえで仕組まれていたのであれば、そもそも支払うべき慰謝料は発生しないと考えられます。

    一方で、相手が本当に配偶者であり、後から関係を知って請求してきたのであれば、話は別です。この場合には、不法行為(民法709条・710条)に基づく慰謝料の支払義務が生じる余地があります。

    判断を誤る方向は、二つある

    ここで注意したいのは、取り違えの危険が両方向にあるという点です。

    恐喝を正当な請求と思い込んで払ってしまう — 払ったことで終わる保証はなく、二度、三度と要求が続くことがあります。

    正当な請求を美人局と決めつけて突っぱねてしまう — 後に訴訟となった際、対応の経緯そのものが不利に働くことがあります。

    「美人局だから払う必要はない」という単純な整理では、後者の危険を見落とします。その場で結論を出さないこと自体が、両方の危険を避ける手立てになります。

    仕組まれた要求に表れやすい特徴

    次のような事情が重なる場合、恐喝の疑いが強まります。

    金銭の名目が示されない。「誠意」「解決金」「口止め料」といった言葉で語られ、何に対する支払いなのかが説明されない

    その場での現金、または即時の電子送金を求め、ATMや消費者金融まで同行しようとする

    戸籍謄本や婚姻を裏づける資料、身分証を示さず、氏名や連絡先も明かさない

    「警察に行く」「会社に行く」といった言葉と金額が、常にセットで語られる

    書面を作らない、あるいは内容を読ませないまま署名を求める

    出会いから関係に至るまでの流れが、不自然なほど手際よく進んでいた

    正当な請求である可能性が高まる特徴

    反対に、次のような要素がある場合は、慎重な検討が必要です。

    弁護士名の書面が届き、事実関係と金額の算定根拠が記載されている

    婚姻関係や交際の実態を示す資料が示されている

    支払期限に一定の猶予があり、振込先が指定されている

    金額が、裁判例で認められている水準からかけ離れていない

    相手の行為が犯罪にあたる場合

    要求の仕方によっては、相手の行為が刑事責任の対象となることがあります。

    行為の内容 想定される罪名
    害を加えると告げて怖がらせる 脅迫罪(刑法222条)
    怖がらせて金銭を交付させる 恐喝罪(刑法249条・未遂は250条)
    怖がらせて義務のない行為をさせる 強要罪(刑法223条)
    事実を偽って金銭を交付させる 詐欺罪(刑法246条)

    ここで押さえておきたいのは、相手が本物の配偶者であっても、やり方次第では恐喝になりうるという点です。最高裁は、権利を行使する場合であっても、その方法や程度が社会通念上一般に許容される範囲を超えるときには恐喝罪が成立しうるという考え方を示しています。「本当の夫だから何を言ってもよい」わけではありません。

    なお、2025年6月1日に施行された改正刑法により、懲役刑と禁錮刑は拘禁刑に一本化されています。

    相手が何を握っているのかを確かめる

    「ばらす」と言われたとき、多くの方はその言葉の強さに反応し、相手が実際に何を持っているのかを確かめないまま話を進めてしまいます。しかし、伝えられる中身によって、こちらが受ける影響も、相手の要求の重さも変わります。

    確かめておきたいのは、次の点です。

    相手が示しているのは、ホテルへの出入りという事実なのか、やり取りの履歴なのか、それ以外の資料なのか

    それを、誰に、どのような形で伝えるつもりだと言っているのか

    そもそも、その内容を相手が持っていることが確認できているのか

    「証拠はある」と言われただけで、実際には何も示されていないという場面は珍しくありません。確かめようとする姿勢を見せること自体が、その場の圧力を弱めることもあります。

    なお、伝えられる相手が特定の一人なのか、不特定多数に向けて公開するという話なのかによっても、その後にとりうる対応は変わります。公開されてしまった後であれば、削除の申出や、投稿者を特定するための手続に進む道があります。

    一度支払っても、終わるとは限らない

    その場を収めたい一心で支払ってしまう方は少なくありません。しかし、名目も範囲も定めずに現金を渡した場合、何に対する支払いだったのかが残りません。後日あらためて連絡が来ても、「前回とは別の話だ」と言われれば、支払った事実だけでは反論しにくくなります。

    支払ったことで相手に「応じる人だ」と受け取られ、要求が続く形になることもあります。金額の多寡以前に、何に対する支払いで、これで終わりなのかどうかを書面で確定させているかが分かれ目になります。

    その場で決めない、という対応

    言われた側にできる現実的な対応は、次のとおりです。

    その場で現金を渡さない。 金額の当否を判断する材料が揃っていない段階での支払いは、根拠のない前提を固定してしまいます

    その場で書面に署名しない。 内容を確認しないまま署名した書面が、後の交渉の出発点にされることがあります

    「持ち帰って検討する」と伝える。 即答を避けること自体が、正当な対応です

    相手の氏名・連絡先を確認し、要求は書面かメッセージで示すよう求める。 応じない場合、その事実自体が判断材料になります

    やり取りを保存する。 メッセージ、通話履歴、日時、同席者の有無を記録します

    とりわけマッチングアプリ経由の場合、アプリ内のやり取りは相手の退会やアカウント削除によって閲覧できなくなることがあります。相手のプロフィール画面とメッセージは、早い段階で画面保存しておくことをおすすめします。

    警察と弁護士、どちらに相談するか

    恐喝罪は親告罪ではないため、被害届や告訴がなくても捜査は可能ですが、実際には被害の申告が端緒になることが多くあります。身の危険が差し迫っているなら110番、そこまでではないが相談したいという段階であれば、警察相談専用電話「#9110」という窓口があります。

    一方、金銭の要求が続いている、あるいは請求が正当なものかを見極めたいという場面では、弁護士が窓口となる方法があります。弁護士が受任通知を送ると、相手方は代理人を通じて連絡することになり、直接の接触が減ることが期待できます。要求が仕組まれたものであれば、その時点で相手が引くことも少なくありません。

    「自分にも落ち度がある」と感じている方ほど、相談をためらいがちです。しかし、弁護士には守秘義務があり、相談した事実や内容が家族や勤務先に伝わることはありません。

    請求が正当だった場合に残ること

    美人局ではなかった場合、慰謝料の支払義務が問題になります。もっとも、その場合でも検討の余地は残ります。

    たとえば、相手が独身であると偽っていた、プロフィールに婚姻の事実が記載されていなかった、といった事情があれば、既婚者であることを知らず、また知ることが難しかったとして、故意や過失が否定される、あるいは減額の方向で考慮される可能性があります。マッチングアプリでのやり取りは、この点を示す資料になります。

    また、不法行為に基づく慰謝料請求権には、損害と加害者を知った時から3年という消滅時効の定めがあります(民法724条)。

    支払うという結論になった場合でも、金額のほかに、これで解決とする旨の条項(清算条項)や、第三者に口外しない旨の取り決めを書面に残しておくことで、後の蒸し返しを防ぎやすくなります。

    よくあるご質問

    Q. すでに一部を支払ってしまいました。取り戻せますか。

    要求が恐喝にあたる場合、支払いは強迫による意思表示として取り消しうる余地があり(民法96条1項)、不当利得や損害賠償として返還を求める道もあります。ただし相手の所在や資力が壁になるため、早い段階での相談が現実的です。

    Q. 相手の身元がアプリのニックネームしかわかりません。

    その状態でも、やり取りの内容や振込先口座、通話番号などが手がかりになる場合があります。まずは手元にある情報を保存し、消さないことが大切です。

    まとめ

    「ホテルに行ったことをばらす」と言われた場面には、仕組まれた恐喝と、本物の配偶者からの慰謝料請求という二つの可能性がある

    取り違えの危険は両方向にあるため、その場で結論を出さないことが最も安全な対応となる

    相手が本物の配偶者であっても、要求の方法が度を越えれば恐喝にあたりうる

    「ばらす」と言われたら、相手が実際に何を持ち、誰に伝えるつもりなのかを確かめる

    現金を渡さず、署名せず、やり取りを保存したうえで、警察や弁護士に相談する


    この記事の監修者

    若井 亮(わかい りょう)
    代表弁護士 弁護士法人若井綜合法律事務所(東京弁護士会所属)
    https://wakailaw.com/

    男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の脅迫的な言動にも毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために尽力している。


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    当事務所は、恐喝・脅迫被害をはじめとする男女間のトラブルを数多く取り扱ってまいりました(男女トラブルのご相談は類型23,000件以上お受けしてまいりました)。「家族や勤務先に影響が及ばないように」という点に最大限配慮しながら、内密かつ穏便な解決を最優先に対応いたします。すでに個人情報を知られてしまっている場合や、要求がエスカレートしている場合も、状況に応じて被害の拡大を防ぐ手立てがあります。

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