プレスリリース
サ付住及びグループホームの増加が頭打ち 住宅型(緩和ケアホーム)は増加中
高齢者住宅の最新動向
高齢者住宅のデータベースとコンサルティングを提供する株式会社タムラプランニングアンドオペレーティングは、10月末日、TPデータ・サービス「1.高齢者住宅データ〔全国版〕」2025年度下半期号を発行いたしました。今回、発行しましたデータ及び既存発表データを用いて、有料老人ホームをはじめとする高齢者住宅の最新動向に関する分析を行いました。
分析結果の要旨は以下の通りになります。
・全国の高齢者住宅のホーム数/戸数は5.9万ヶ所/243.3万戸。
・2025年に入り、サービス付き高齢者向け住宅及びグループホームの増加が頭打ち。
・緩和ケアホームの増加が顕著であり、2025年10月現在、住宅型の緩和ケアホーム673ヶ所が開設。
うち、139ヶ所が2025年中に開設。
・緩和ケアホームの居住関連費用は意図的な低価格設定であり、大都市圏の平均月額費用は132千円。
■高齢者住宅の最新動向に関する分析
※本報告で用いている用語について
緩和ケアホーム:自社・関連会社の訪問看護事業所と特に連携して、医療保険による訪問看護サービスを提供し、主な入居対象を医療依存度が高いがん末期やパーキンソン病等の指定(別表7:厚生労働大臣が定める特掲診療料の施設基準等別表第7号、別表8:厚生労働大臣が定める特掲診療料の施設基準等別表第8号)の疾病者に絞ったホスピスホームとも呼ばれる高齢者住宅について、弊社では『緩和ケアホーム』と呼称している。
●高齢者住宅のホーム数及び戸数の現況~全国のホーム数は5.9万ヶ所/243.3万戸~
全国の高齢者住宅・施設の全13種類(2025年10月時点集計)のうち、ホーム数はグループホームの14,306ヶ所が最多であり、住宅型有料老人ホーム(以下、住宅型)の13,184ヶ所、介護老人福祉施設(地域密着型含む、以下、特養)の10,492ヶ所がそれに次ぐ(図表1)。続いて、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ付住)の登録数は8,270ヶ所であり、介護付有料老人ホーム(以下、介護付)は4,617ヶ所となっている。居室数/定員数では、特養の669,166床が最多であり、住宅型が388,140戸と、それに次ぐ。

●有料老人ホーム以外の高齢者住宅の増加状況 ~サ付住及びグループホームが頭打ち~
2025年10月集計において、全国のサ付住及びグループホームのホーム数の伸びが頭打ちとなり、前回集計と比して、それぞれ14ヶ所(47ヶ所増・61ヶ所減)、48ヶ所(58ヶ所増・106ヶ所減)の減少となった(図表2)。両タイプとも、過去4年間の集計では、90ヶ所を超える増加を示す集計時期があったにもかかわらず、今回の集計においては減少に至った。
そのほか、老健は利用者の減少により、一貫してホーム数が減少し続けている。介護付、住宅型は増加を続けており、特に住宅型の増加は著しく、2025年4月集計では前回比308ヶ所、2025年10月集計でも284ヶ所が増加している。特養も増加しているものの、その増加数は逓減傾向にあり、2025年10月集計では18ヶ所となっている。
サ付住は2011年の制度開始時に、2025年までに60万戸以上との整備目標を掲げ、各種の補助制度が整えられた。開設する際の新築・改装等にあたっての補助金制度も設けられたものの、その予算執行割合は低く、2018年度は38.4%、2024年度においても65.3%にとどまる(図表3)。実施件数も2018年度の460件から2024年度の109件に減少している等、補助制度は十分な活用がなされていない。
今回の集計において、サ付住の増加数が頭打ちとなった原因としては、建築費を含む物価上昇のほか、居室面積等のホーム内設備の整備基準について、運営事業者の意向と登録制度基準との差異が考えられる。今年に入り、サ付住登録数の増加が止まったことは、この登録制度が曲がり角を迎えていることを示している。
グループホームについては、かねてより赤字経営の事業所が三分の一を占めるなど、経営効率が芳しくなかった。定員数や開設に係る制限もあり、規模の面からの効率化にも限界があった。さらに新規開設に際しての地方自治体が行う公募の際にも、好条件の案件が少なくなり、応募無しのケースが出ている等、新規開設が進まなくなってきていた。その上で、物価変動による経営状況の悪化等を受け、近年は廃止・閉鎖等が相次ぐようになり、本集計において減少数が増加数を上回り、ホーム数が微減へと転じた。
高齢者住宅に対する需要と絡めて考察すると、介護付・特養等の包括ケア系居住サービスの利用が見込まれる要介護度3以上の高齢者は、2021年10月から2025年7月までの約4年間で123千人増加している。しかし、その間の包括ケア系居住サービスの戸数/定員数は55千戸の増加に留まっている。需要の増加に比して、68千戸も不足した状況と言える。この需要増に対する供給量の不足は、住宅型やサ付住による高齢者住宅の供給を促してきているものと思われる。

●有料老人ホームの増加状況 ~緩和ケアホームの増加が顕著~
2025年中に新規開設した有料老人ホーム(介護付・住宅型)は、全国で介護付・住宅型合わせて524ヶ所/20,936戸であった(図表4)。そのうち483ヶ所が住宅型であり、介護付は38ヶ所と新規開設ホームの7%に留まる。また、緩和ケアホームついては近年、急増してきており、住宅型の緩和ケアホームは、673ヶ所/294,499戸が開設された。うち139ヶ所/6,393戸が2025年中に開設されている。
2025年中に開設した有料老人ホームの事業主体別ランキングにおける上位事業主体の多くは、㈱アンビスや㈱サンウェルズ、CLAN グループ(緩和ケアホーム・ブランド「アルク」)、シーユーシー グループ、㈱スタッフシュウエイ、㈱エクラシア、㈱リベルケアといった緩和ケアホームの運営事業者となっている。ランキング1位の㈱アンビスは「医心館」ブランドのホームを21ヶ所/1,065戸開設し、2位の㈱サンウェルズも「PDハウス」ブランドを12ヶ所/704戸開設する等、速いペースで開設を進めている。両社は以前より、速いペースで開設を進めていたが、昨年から今年にかけ、コンプライアンス上の問題が報道された。それによって事業構造の一部見直しを迫られたが、今年に限れば、その開設ペースは依然として速いままである。

●緩和ケアホームの地域別費用 ~緩和ケアホームの平均月額費用は低廉~
住宅型の緩和ケアホームと非緩和ケアホームについて、入居一時金も考慮した平均月額費用を大都市圏の地域別で比較すると、緩和ケアホームは非緩和ケアホームよりおおむね低価格の設定となっている(グラフ1)。緩和ケアホームと非緩和ケアホームの平均月額費用の差が最も大きい地域は東京都の41千円であり、逆に大阪府は差が小さく2千円程度である。東京都における住宅型の緩和ケアホームの費用が最も高いものの、それでも155千円であり、福岡県では110千円に留まる。
なお、緩和ケアホームの大都市圏における平均月額費用は132千円と低廉であるが、これは家賃相当額、管理費、食費等からなる居住関連費用のみである。緩和ケアホームは、居住関連費用を意図的に低価格化することにより、入居促進を図り、居住関連費用以外の介護保険報酬として入居者一人あたり月250~350千円、医療保険による訪問看護報酬として月600~800千円の売り上げが得られる事業モデルをとっている。
なお、費用設定に関して、低価格化しすぎた結果、収益確保に失敗し閉鎖・破産した事例がある。㈱オンジュワールはブランド名「ジャルダン」の名称で4ヶ所の低価格設定の住宅型(非緩和ケアホーム)を開設した。各地域の平均月額費用を下回る101~127千円の費用設定であった。しかし、運営費の捻出ができなくなり、最初のホームを開設してから約1年後の2024年10月に全ホームを閉鎖し、事業主体は破産に至っている。安易に低価格設定した場合、事業収益性が著しく低下し、高齢者住宅事業が困難になる可能性があることを示している。

■TPデータ・サービス
高齢者住宅に特化した開設支援コンサルタントとして長年の実績を持つ株式会社タムラプランニング&オペレーティングは、2005年より高齢者住宅や介護保険居宅サービスのデータ・分析レポート集(TPデータ・サービス)を提供しております。「1.高齢者住宅データ〔全国版〕」は、全国の高齢者住宅・施設、介護保険情報公表制度対象外の住宅型有料老人ホーム、分譲型ケア付きマンションや居宅サービス事業所までも網羅する等、他の追随を受けない業界最大のデータ・サービスであり、13種類・約5.9万ヶ所の高齢者住宅・施設を収録しております。高齢者住宅のホーム名や事業主体、所在地、戸数等の基礎情報のほか、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅については、月額費用や居室面積、入居率等の詳細情報も提供しております。
TPデータ・サービスは、「1.高齢者住宅データ〔全国版〕」、「2.介護保険居宅サービスデータ〔全国版〕」、「3.自治体別高齢者住宅・施設等の需給予測データ」を中心に、「1-a.高齢者住宅データ〔地域分割版〕」、「1-b.高齢者住宅データ〔分析レポート〕」、「2-a.介護保険居宅サービスデータ〔地域分割版〕」、「2-b.介護保険居宅サービスデータ〔分析レポート〕」、「3-a. 自治体別高齢者住宅・施設等の需給予測データ〔地域分割版〕」、「3-b. 自治体別高齢者住宅・施設等の需給予測データ〔分析レポート〕」を提供しております。「1.高齢者住宅データ〔全国版〕」では、高齢者住宅・施設のデータ及び分析レポート、オープン予定ホーム情報や公募情報等を提供するホームページサービス等で構成され、ワンストップで高齢者住宅の概況を把握できる商品となっております。
■1.高齢者住宅データ〔全国版〕
【データ】
全国・全13種類・約5.9万ヶ所(2025年10月時点)の高齢者住宅データを収録。
年2回、エクセルファイルによるデータ提供。
提供データの主な施設タイプ
・介護付有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 分譲型ケア付きマンション サービス付き高齢者向け住宅 グループホーム 介護老人福祉施設(地域密着型含む) 介護老人保健施設 介護医療院 ほか
提供データのうち、有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅のデータ項目
・ホーム名 事業主体 戸数 開設日 市町村コード 郵便番号 住所 入居率 居室数 居室面積 入居一時金・保証金 月額費用(管理費・家賃・食費等) ほか 延べ382項目
【分析レポート】
5種類の分析レポートを提供。なお、分析レポートは上半期号(各年4月発行)のみの提供。
①開設動向分析レポート 高齢者住宅・施設の現況・推移・将来推計
②商品分析レポート 高齢者住宅の価格等の商品性を分析
③高齢者住宅ブランド分析レポート ブランド別の集計・分析
④高齢者住宅オペレーター分析レポート 主要事業者の集計・分析・動向
⑤エリア別供給・商品分析レポート エリア別の集計・分析
【ホームページサービス】
開設予定情報、公募情報、M&A、業界ニュース等の最新情報を弊社ホームページに適時掲載。
《本プレスリリースに関するお問い合わせ》
担当者名:中里・渡辺
電話:03-3292-1107
E-mail:tamurakikaku-a@tamurakikaku.co.jp
《会社概要》
会社名:株式会社タムラプランニング&オペレーティング
所在地:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町1-13-601
代表者:代表取締役 田村 明孝
設 立:1987年9月
U R L :https://www.tamurakikaku.co.jp/