プレスリリース
世界のα1プロテアーゼインヒビター欠損症の市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界のα1プロテアーゼインヒビター欠損症の市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Alpha-1 Protease Inhibitor Deficiency Market Size; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、α1プロテアーゼインヒビター欠損症、すなわちα1アンチトリプシン欠乏症(Alpha-1 Protease Inhibitor Deficiency / Alpha-1 Antitrypsin Deficiency:A1PI deficiency / AATD)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。AATDはSERPINA1遺伝子変異によって引き起こされる遺伝性疾患で、血液および肺における機能的α1アンチトリプシン(AAT)の量が低下する。AATには好中球エラスターゼから肺組織を保護する役割があるが、AAT濃度が臨床的な保護閾値とされる11 µmol/Lを下回ると、好中球エラスターゼの作用が抑えられなくなり、肺胞組織が徐々に破壊される。その結果、若年~中年期から肺気腫やCOPDを発症しやすくなる。一方、異常なAATタンパク質が肝細胞内に蓄積することで、進行性肝疾患、肝硬変、肝細胞がんを生じることもあり、肺と肝臓の双方に重要な疾患負担をもたらす。
Rare Disease Advisorによると、臨床的に重要なAATD患者は世界で約340万人と推定され、さらに少なくとも1つの欠損アレルを保有するキャリアは世界で約1億1,700万人に上るとされる。つまり、重症患者そのものは希少疾患の範囲に入るものの、遺伝的保因者まで含めると非常に大きな人口集団が関与している。調査会社は、疾患認知の向上、検査体制の拡充、静注による増量療法へのアクセス改善、さらに遺伝子編集やRNAを利用した新規治療パイプラインの進展によって、今後は診断患者数と治療患者数が徐々に増加するとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病率、発症率、年齢、性別、遺伝型、診断患者数などを分析している。
AATDは常染色体共優性遺伝形式をとる。SERPINA1遺伝子の異常によってAAT産生量や機能が低下し、その程度は遺伝型によって異なる。特に重度欠損型では肺を好中球エラスターゼによる蛋白分解から十分に保護できず、慢性的な肺胞破壊が進む。肺病変は通常のCOPDより若い年齢で出現することがあり、喫煙や粉塵などの環境曝露によってさらに進行しやすくなる。一方、肝臓では「AATが少ない」ことよりも、異常構造を持つAATが肝細胞内に蓄積することが問題となり、肺病変とは異なる機序で肝障害が進行する。
年齢別では、Marcelle Meseehaらの2024年の報告によると、AATD患者で肺疾患の最初の徴候が現れるのは20~50歳が典型的とされる。一般的な加齢性COPDより比較的若い時期から症状が出現し得る点が特徴である。一方、実際の診断はそれより遅れることが多い。Staffan Wahlinらの2025年の研究では、2002~2020年に診断された2,286人のAATD患者の診断時年齢中央値は51歳で、診断時点ですでに44%が肺疾患の診断を受けていた。このことは、症状出現からAATDとして確定診断されるまでに相当な時間差が存在する可能性を示している。
したがって、AATD市場における最大の問題の一つは過少診断である。若年性COPD、肺気腫、気管支拡張症、原因不明の肝障害などとして治療されながら、背景にAATDがあることが認識されていない患者が一定数存在すると考えられる。特にCOPD患者の中でAAT濃度測定やSERPINA1遺伝子検査が十分に実施されていない場合、患者は長期間にわたり一般的なCOPD患者として扱われる可能性がある。この診断ギャップは、今後の患者発掘余地が大きいことを意味する。
性別では、EARCO RegistryのErsözらの2025年のデータによると、1,283人のAATD患者のうち女性は49.3%で、全体として男女比はほぼ均衡していた。ただし、病型や合併症の分布には性差がみられ、女性ではCOPDの割合が41%で男性の57%より低く、肝疾患も女性11%に対して男性20%と低かった。一方、気管支拡張症は女性でより多かった。したがって、AATDそのものの発生頻度に大きな男女差はないものの、臓器病変の現れ方や疾患表現型には性差が存在する可能性がある。
疫学的には、Staffan Wahlinらの2025年の報告で、AATDの発症率は10万人年あたり1.83例、有病率は2020年末時点で10万人あたり21.04例とされている。これらの数値は、診断済み患者ベースではAATDが明確な希少疾患であることを示す。一方で、世界では重度の臨床的疾患を持つ患者が約340万人、保因者が約1億1,700万人と推計されるため、診断率の低さを考慮すると、実際の遺伝的負担は診断患者数を大幅に上回っていると考えられる。
予後への影響も大きい。同じくStaffan Wahlinらの2025年の報告では、AATD患者の死亡率は一般人口の3.55倍であった。死因別では、肝疾患による死亡リスクのハザード比が22.95、肺疾患が12.09、心血管疾患が1.90とされ、とりわけ肝臓および肺に関連する死亡リスクが大きく上昇していた。AATDは単に肺機能が低下する疾患ではなく、長期的には死亡率を明確に上昇させる全身性の遺伝疾患であることが示されている。
さらに、臓器移植に至る患者も一定数存在する。Staffan Wahlinらによると、10年間の累積発生率は肝移植で1.69%、肺移植で4.14%であった。肺移植の割合が肝移植より高いことから、肺疾患が臨床的に主要な長期疾患負担となっている患者が多いことが示唆される。一方、肝疾患の死亡リスクが非常に高いことから、肝病変を持つ患者では重症化した場合の予後が特に悪い可能性がある。
国別では、米国が診断済み患者数の最大市場とされる。Rare Disease Advisorによると、米国では重度AAT欠損を伴うPiZZ型が約7万~10万人存在すると推定されるが、確定診断を受けている患者は10%未満とされる。つまり、米国だけでも数万人規模の重度患者が未診断で存在する可能性がある。この巨大な診断ギャップは、市場拡大余地の大きさを示す重要な指標である。
米国ではAlpha-1 Foundationが患者レジストリを維持しており、診断、研究、治療開発のインフラとして機能している。希少疾患領域では、こうしたレジストリの存在が自然歴研究、臨床試験患者の組み入れ、長期予後評価、疾患啓発などに大きく寄与する。今後、検査推奨の強化やCOPD患者へのAATDスクリーニングが広がれば、米国の診断患者数は増加する可能性が高い。
欧州では、特に北欧系集団でPiZZ遺伝子頻度が世界的に高いとされる。Kuen-Cheh Yangらの2023年の報告では、北欧諸国が重度欠損遺伝型の高頻度地域として挙げられている。これはAATDの遺伝的分布が世界で均一ではなく、ヨーロッパ北部を中心に比較的高いことを示している。
ドイツでは全国AATDレジストリが整備され、診断状況の把握が進んでいる。また、German Sickness Fundデータベースを用いた研究では、診断有病率が2013年の10万人あたり13.3例から2019年には30.1例へ上昇したとされる。この増加は、疾患そのものの遺伝的頻度が短期間で急増したというより、医師の認知向上、検査の普及、診断コーディングの改善によって潜在患者がより多く把握されるようになった影響が大きいと考えられる。
市場・疫学の観点では、このドイツの例は今後の8主要市場全体を考えるうえで重要である。AATDは遺伝性疾患であるため、実際の遺伝子頻度そのものは短期間では大きく変化しにくい。一方で、診断患者数は検査率と疾患認知によって大きく変化する。そのため、2026~2035年に予測される患者数の増加は「病気が新たに増える」というより「既存の未診断患者が発見される」ことによる部分が大きいと考えられる。
治療の現状では、AATDを根治する承認済み治療法はまだ存在しない。肺病変に対する標準的な疾患特異的治療は、血漿由来の精製AATを静脈内投与する増量療法である。この治療は1987年に初めてFDA承認され、その後複数の製剤が承認されている。資料によると、現在米国では5つの血漿由来AAT製剤がFDA承認されている。
増量療法は通常週1回静脈内投与され、血清AAT濃度を保護閾値である11 µmol/L以上へ維持することを目的とする。これにより、肺内で好中球エラスターゼによる組織破壊を抑え、肺気腫の進行を遅らせることが期待される。ただし、これは不足しているAATを外部から補う治療であり、SERPINA1遺伝子異常そのものを修復するものではない。
また、肺疾患に対する増量療法が存在する一方、AATD関連肝疾患に対しては、現時点で根本的に異常AAT蓄積を改善する承認治療はない。重度の肝障害が進行した場合には肝移植が必要となる。この点は、AATDにおける大きなアンメットニーズである。肺病変では欠乏したAATを補えば一定の効果を期待できるが、肝病変では変異AATの蓄積という別の病態を解決する必要があるためである。
そのため、今後の治療パイプラインでは、単純なAAT補充を超えたアプローチが注目されている。資料では、遺伝子治療、RNA干渉薬、好中球エラスターゼ阻害薬、低分子コレクターなどが開発領域として挙げられている。これらの目的は、正常なAATを長期的に産生させること、異常AATの産生や蓄積を抑えること、あるいはAAT不足によって過剰に作用する好中球エラスターゼを直接抑制することにある。
特に遺伝子編集や遺伝子治療は、SERPINA1変異という根本原因に直接介入できる可能性があるため、長期的には治療構造を大きく変える可能性がある。また、RNAベースの治療は、肝臓で異常AATタンパク質の産生を抑えることで、肝疾患の進行を抑制できる可能性がある。このため、肺疾患と肝疾患の双方をどのように同時に管理するかが今後の開発の重要な課題となる。
ただし、提示資料時点では、こうした遺伝子治療、RNA干渉薬、好中球エラスターゼ阻害薬、低分子コレクターのいずれも規制当局による承認には至っていない。したがって、現時点の標準治療は依然として血漿由来AATによる増量療法を中心とし、進行臓器障害では移植を検討するという構造である。
市場的には、増量療法へのアクセス拡大も患者数増加に影響すると考えられる。AATDが確定診断されても、すべての国・患者が増量療法を容易に受けられるわけではなく、治療費、保険償還、静注施設へのアクセス、適応基準などが治療導入率を左右する。今後、診断患者数が増え、治療インフラが整備されれば、「診断済みだが未治療」という患者層が治療市場へ移行する可能性がある。
全体として本レポートは、AATDを「遺伝的には比較的大きな潜在人口を持つ一方、実際には著しく過少診断されている、肺・肝臓双方に重大な長期負担を与える希少遺伝疾患」と位置づけている。世界で臨床的に重要な患者は約340万人、少なくとも1つの欠損アレルを持つ保因者は約1億1,700万人と推定される一方、実際に診断されている患者はその一部にすぎない。
主要な患者層では肺症状が20~50歳頃から現れ、診断年齢中央値は51歳とされることから、早期症状から確定診断までの遅れが大きな課題である。また、有病率は10万人あたり21.04例、発症率は10万人年あたり1.83例とされる一方、死亡率は一般人口の3.55倍で、肝疾患、肺疾患、心血管疾患による死亡リスクがそれぞれ大きく上昇している。したがって、希少性に比して患者一人あたりの長期疾患負担は大きい。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、SERPINA1遺伝子変異そのものの頻度が急増するというより、医師の認知向上、COPD・若年性肺気腫患者へのスクリーニング、遺伝子検査の普及、患者レジストリの整備によって、これまで未診断だった患者が新たに診断されることが最大の成長要因になると考えられる。特に米国ではPiZZ型が7万~10万人存在すると推定されながら、確定診断率が10%未満とされており、潜在患者発掘の余地は極めて大きい。
さらに、静注AAT増量療法へのアクセス拡大に加え、遺伝子編集、遺伝子治療、RNA干渉、好中球エラスターゼ阻害、低分子コレクターなどの新しい治療パイプラインが成功すれば、市場構造そのものが変化する可能性がある。特に現在有効な疾患特異的治療が存在しないAATD関連肝疾患に対して新規治療が実用化されれば、これまで治療選択肢の乏しかった患者層に大きな新規市場が形成される可能性がある。
したがって、今後のAATD領域における中心的課題は、若年性COPDや肺気腫、原因不明の肝疾患を持つ患者を早期にスクリーニングすること、AAT濃度測定とSERPINA1遺伝子検査へのアクセスを改善すること、診断済み患者を適切な増量療法へつなげること、そして肺疾患だけでなく肝疾患にも作用する根本的治療を開発することにある。2026~2035年は、「希少疾患としてのAATDをより多く診断する段階」から、「診断された患者に対して病態そのものを修正する新しい治療を提供する段階」へ移行していく可能性があるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
α1プロテアーゼ阻害因子欠損症市場概要(8主要市場)
3.1 α1プロテアーゼ阻害因子欠損症市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 α1プロテアーゼ阻害因子欠損症市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
α1プロテアーゼ阻害因子欠損症疫学概要(8主要市場)
4.1 α1プロテアーゼ阻害因子欠損症疫学状況(2019年~2025年)
4.2 α1プロテアーゼ阻害因子欠損症疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 α1プロテアーゼ阻害因子欠損症の種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 α1プロテアーゼ阻害因子欠損症の診断済み有病患者数
7.4 種類別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
7.5 性別別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
7.6 年齢別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国におけるα1プロテアーゼ阻害因子欠損症の診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
8.4 米国における性別別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
8.5 米国における年齢別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国におけるα1プロテアーゼ阻害因子欠損症の診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
9.4 英国における性別別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
9.5 英国における年齢別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおけるα1プロテアーゼ阻害因子欠損症の診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
10.4 ドイツにおける性別別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
10.5 ドイツにおける年齢別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおけるα1プロテアーゼ阻害因子欠損症の診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
11.4 フランスにおける性別別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
11.5 フランスにおける年齢別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおけるα1プロテアーゼ阻害因子欠損症の診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
12.4 イタリアにおける性別別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
12.5 イタリアにおける年齢別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおけるα1プロテアーゼ阻害因子欠損症の診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
13.4 スペインにおける性別別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
13.5 スペインにおける年齢別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本におけるα1プロテアーゼ阻害因子欠損症の診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
14.4 日本における性別別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
14.5 日本における年齢別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおけるα1プロテアーゼ阻害因子欠損症の診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
15.4 インドにおける性別別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
15.5 インドにおける年齢別のα1プロテアーゼ阻害因子欠損症患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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