報道関係者各位
    プレスリリース
    2025年10月30日 11:00
    大正製薬

    大正製薬 約20年にわたるヒハツ由来ピペリンの 研究成果について、血管を専門とした学術集会で発表

    大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区 社長:上原 茂](以下、当社)は、ヒハツ由来ピペリンの血管に及ぼす作用について、約20年にわたる研究成果をまとめ、2025年10月23日(木)に開催された「第11回Tie2・リンパ・血管研究会学術集会」にて発表しました。

    本発表では、ヒハツ由来ピペリンの機能に関する新たな知見として、3つの研究成果を報告しています。
    ① 血管の細胞を用いた試験でピペリンの作用メカニズムを詳しく調べ、ピペリンは血管を弛緩させる因子である一酸化窒素(NO)の産生を増やして血圧を下げることを明らかにしました。
    ② ヒハツ由来ピペリンを配合した食品を用いた臨床試験を行い、血圧が高めの方の血圧を下げる機能を確認しました。
    ③ 血管内皮機能に対する作用を検証するため臨床試験を行い、ヒハツ由来ピペリンの継続摂取が血管の柔軟性(しなやかさ)の維持に役立つことを発見しました。

    これらの研究成果を活用し、今後も血管の健康維持に貢献する製品の開発に努めてまいります。

    <背景>

    当社では、自分の健康を自分で守る「セルフメディケーション」の推進の一環として、全身の健康を支える血管のセルフケアに着目しています。カナダ出身の内科医オスラー博士(1849~1919)の「人は血管と共に老いる」という言葉にもあるように、健康維持において血管のセルフケアは非常に重要です。
    当社は、世界中から集めた700種類以上の植物素材の評価を通し、ヒハツに血圧を下げる効果があることを発見しました。ヒハツとはインドネシアなど東南アジアに自生しているコショウ科の植物でスパイスの一種です。
    このヒハツに含まれるピペリンは、これまでに血流を改善するなどの薬理作用が報告されていました。ただ、作用メカニズムは明らかになっておらず、ヒトでの血管機能への有効性にも不明な点がありました。そこで、血管の細胞を用いた作用メカニズムの解明と、臨床試験による血圧、血管機能の有効性評価を行いました。

    <研究成果>

    ①内皮細胞を用いた試験で、血圧を低下させる作用メカニズムを解明
    血管は外側から順に外膜、中膜、内膜とよばれる3層で構成されており、血液と触れる側の血管内腔はすべて1層の「内皮細胞」という細胞でおおわれています。内皮細胞は血管の恒常性を維持する役割を担っており、内皮細胞が産生する一酸化窒素(NO)は、血管を弛緩させ血圧を低下させるプロセスにおいて重要な役割を果たしています。そこで、内皮細胞を用いてピペリンのNO産生に及ぼす作用を検討しました。
    ヒト大動脈内皮細胞を培養し、ピペリンを添加して細胞内のNO量を測定しました。その結果、ピペリン30、100μ mol/Lを添加すると、ピペリンを添加しない場合に比べ、細胞内のNO量が有意に増加しました(図1)。この結果から、ピペリンはNO産生を促進することで血管を弛緩させ、血圧を低下させると考えられます。

    ②臨床試験で、血圧を下げる機能を確認
    次に、ヒハツ由来ピペリン配合食品を継続的に摂取することで、血圧が高めの方の血圧を下げる効果があるのか検証しました。
    具体的には、正常高値血圧※1者またはⅠ度高血圧※2者の日本人の成人男女にヒハツ由来ピペリン配合食品(粉末緑茶)またはプラセボ食品(ヒハツ由来ピペリンを含有しない粉末緑茶)を1日1袋、12週間継続摂取してもらい、血圧を測定しました。その結果、摂取開始1週目から、プラセボ食品を摂取した群に比べ有意な血圧低下が認められ、12週目までその効果が持続しました(図2)。つまり、ヒハツ由来ピペリン配合食品を継続的に摂取することで、血圧が高めの方の血圧を下げる効果があると考えられます。
    ※1:正常高値血圧とは、収縮期血圧が130~139mmHgまたは拡張期血圧が85~89mmHgのこと。
    ※2:Ⅰ度高血圧とは、収縮期血圧が140~159mmHgまたは拡張期血圧が90~99mmHgのこと。

    ③臨床試験で、血管の柔軟性を維持する機能を確認
    さらに、ヒハツ由来ピペリン配合食品の血管の柔軟性(しなやかさ)に対する作用も検証しました。
    血管内皮機能が低下傾向にある日本人の成人男女に、ヒハツ由来ピペリン配合食品を8週間継続摂取してもらい、血管内皮機能を測定しました。血管内皮機能は、血管締め付け後の血管の拡張を示すFMD(flow-mediated dilatation)値を指標として評価しました。
    その結果、ヒハツ由来ピペリン配合食品を摂取した群では、プラセボ食品を摂取した群に比べFMD値が有意に高い値を示しました(図3)。FMD値が高いほど、血管が柔らかいことを意味します。
    FMD値は、加齢に伴い直線的に低下することが報告されています※3。この直線関係から推定されるFMD値と年齢との回帰式を用いて本試験におけるFMD値変化(0.79%改善)を血管年齢に当てはめると、8歳程度の改善に相当しました。
    つまり、ヒハツ由来ピペリン配合食品の継続摂取は、血管を柔らかくて若々しい状態に保つことに役立つ可能性があります。
    なお、この研究は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「スマートバイオ産業・農業基盤技術」(管理法人:農研機構生研支援センター)によって実施されました。
    ※3:Yang PT et. al., J. Thorac Dis. 2014; 6(10): 1441-1451.

    <今後の展望>

    以上の研究結果から、ピペリンは、内皮細胞でのNO産生を増やして血管を弛緩させ、血圧を低下させることが明らかになりました。また、日本人を対象とした臨床試験において、ヒハツ由来ピペリン配合食品の継続摂取は血圧が高めの方の血圧を下げ、血管内皮機能が低下傾向にある方の血管の柔軟性の維持に役立つことを明らかとしました。これら臨床試験の知見は、当社の約20年にわたる研究を通じて、初めて明らかとなったものです。
    当社では、これからも生活者の方の健康に貢献する研究成果をお届けしてまいります。