プレスリリース
日本小児用医療機器市場、2035年6,451万米ドル規模へ|CAGR 8.11%、小児専門医療・モニタリング機器・高度診断技術の進展が市場拡大を後押し
日本小児用医療機器市場は「成人向け製品の小型化」から脱却し、成長・発達段階まで設計要件に組み込む専用医療技術市場へ移行

日本小児用医療機器市場は、2025年の2,958万米ドルから2035年には6,451万米ドルへ拡大し、2026~2035年に**年平均成長率(CAGR)8.11%**で成長すると予測される。市場拡大の本質は単純な診療件数の増加ではなく、乳児、新生児、幼児、学童、思春期では身体寸法、生理機能、活動性、治療期間、成長速度が大きく異なるため、成人用機器をそのまま転用する従来型アプローチから、小児特有の解剖学的・生理学的条件を開発段階から織り込む方向へ医療機器産業が移行している点にある。FDAも、小児では身体が成人より小さいだけでなく、身体構造や機能が成長過程で変化し、長期間デバイスを使用する可能性があることから、耐久性や植込み材料への長期曝露など特有の設計課題が存在すると指摘している。 日本でも、モニタリング機器、手術支援システム、カテーテル、呼吸・循環管理装置、診断機器、ウェアラブル機器、SaMDなどにおいて「小児専用設計」の重要性が高まっており、今後の競争優位は単なる製品サイズではなく、年齢別適合性、安全性、低侵襲性、操作性、成長への追従性、長期使用時のデータ蓄積まで含めた総合的な製品設計能力によって左右される可能性が高い。
小児用医療機器とは、出生から21歳までの疾患や病状の治療および診断に使用される機器や装置を指します。小児科とは、乳児、子ども、および思春期の若者の健康および医療ケアを扱う医学の一分野です。小児用医療機器は、子どもは大人よりも体が小さく、より活発であることから、その身体構造や機能に合わせて特別に設計されています。
日本政府・PMDA・AMEDによる承認申請支援と臨床開発資金の拡充が、採算性の低さを理由に停滞してきた小児専用デバイス開発を事業化フェーズへ押し上げる
小児用医療機器は成人向け製品と比べ対象患者数が限られる一方、年齢や体格に応じた複数仕様、特殊な臨床評価、安全性検証、医療従事者へのトレーニングなど追加コストが発生しやすく、優れた技術シーズが存在しても商業化まで到達しにくい市場構造を抱えてきた。しかし、日本ではこうした構造的障壁を下げる政策支援が具体化している。PMDAは令和7年度の「小児用医療機器の承認申請支援事業」において、一定条件の下で承認申請手数料の9割を助成する制度を実施しており、規制対応コストを直接軽減している。 さらにAMEDの令和8年度「医療機器開発推進研究事業」では、「小児用医療機器の実用化を目指す臨床研究・治験等」が独立した公募分野として設定され、臨床評価準備、探索的治験・臨床研究、検証的治験まで開発段階に応じた支援枠が設けられている。検証的治験ではクラスⅢ・Ⅳについて年間最大8,000万円規模の支援枠が示されており、非SaMDでは最長で令和12年度末までを想定する枠も存在する。 このため今後の日本市場では、大学・小児専門病院・医療機器メーカー・スタートアップが早期から薬事戦略を共有し、研究成果を「論文」で終わらせず、治験、承認、保険・導入、海外展開まで接続するエコシステム形成が市場拡大を加速させる重要な要素となる。
小児心臓シミュレーション、非侵襲モニタリング、スマートフォン型SaMDなど、日本発の開発テーマが示す「高付加価値・少量市場」の新しい競争モデル
日本で実際に採択されている研究テーマを見ると、小児用医療機器市場が従来型ハードウェアだけで構成される市場ではないことが明確になっている。AMEDの令和7年度採択課題には、小児肛門機能障害を対象とする機能評価・治療用医療機器や、小児先天性心疾患の最適手術を支援する心臓シミュレータ「ped UT-Heart」の医師主導治験が含まれているほか、過年度には新生児を対象とする非侵襲性スキンバリア機能測定機器、重症小児在宅患者向けのスマートフォンアプリを活用した状態判定支援医療機器プログラムなども支援対象となっている。 これらの事例が示す重要な変化は、小児用医療機器の価値が「大量販売できる汎用品」だけでは評価できなくなっていることである。患者数が限定されても、複雑な手術計画を支援するシミュレーション、高精度な非侵襲診断、在宅患者の状態変化を遠隔から把握するデジタル技術などは、臨床上の未充足ニーズが大きい領域ほど高い付加価値を生み得る。企業側には、販売台数だけではなく、医療従事者の業務負担削減、再入院抑制、治療精度向上、患者・保護者の負担軽減、長期アウトカム改善まで含めた経済価値を提示する能力が求められ、これが2030年代に向けた製品採用と価格形成の重要な基準になっていくと考えられる。
病院中心から家庭・学校・地域へ広がる小児医療が、ウェアラブル、遠隔モニタリング、センサー搭載機器、SaMDの需要構造を大きく変える
今後の日本小児用医療機器市場で特に注目すべき変化は、「医療機器を使用する場所」の拡大である。慢性疾患や術後フォロー、呼吸・循環状態の監視、代謝管理などでは、すべての患者を長期間病院内で管理するモデルよりも、家庭や学校など日常生活環境で継続的にデータを取得し、必要時に医療機関へつなぐモデルの重要性が高まっている。海外でもFDAは「Home as a Health Care Hub Initiative」を推進し、2026年には再入院削減を目的としたREADI-Home Innovation Challengeを展開しており、家庭で使用する医療機器の開発促進を制度面から支援している。 ただし小児領域では、家庭向けという理由だけで規制要求が低くなるわけではない。FDAは2025年9月、心拍、酸素飽和度、呼吸数、体温などを測定する未承認の乳児用モニターについて、誤った測定が不要な受診につながったり、逆に重大な症状の検出を遅らせたりする可能性を警告している。 したがって日本企業にとっても、今後の市場機会はウェアラブル化やスマートフォン連携だけではなく、医療グレードの精度、アラート設計、保護者向けUI、サイバーセキュリティ、医療者とのデータ共有、誤警報低減を一体で設計できる企業に集中する可能性が高い。
主要企業のリスト:
• Nihon Kohden Corporation
• Fukuda Denshi Co., Ltd.
• Japan Lifeline Co., Ltd.
• Eiken Chemical Co., Ltd.
• Seikagaku Corporation
• Nippon Steel Nisshin Co., Ltd.
• CYBERDYNE, Inc.
2025年の開発支援強化から2027年の次期政策形成、2030年代の在宅・デジタル小児医療までを結ぶ最新動向と中長期マイルストーン
小児用医療機器市場を時系列で見ると、今後10年間は規制・研究資金・デジタル化・在宅化が段階的に重なり、市場の商業化条件そのものが変わる局面にある。
• 2025年(基準年): 日本ではPMDAによる小児用医療機器の承認申請支援が継続され、AMEDも小児用医療機器を明示した臨床研究・治験支援を展開しており、ped UT-Heartなど具体的な開発案件が実用化段階へ進んだ。
• 2026年: 米FDAは6月12日、2歳以上を対象とする初のOTC連続グルコースモニターを承認し、既存の臨床データに加えてリアルワールドデータを小児での性能評価に利用したことを公表した。これは、小児デバイスでもRWEと家庭内利用を組み合わせた開発モデルが現実化していることを示す。 同時にFDAは未承認の乳児バイタルモニターやSNOO関連製品について安全性上の注意を発信しており、市場拡大とともに「消費者向けウェルネス製品」と「規制対象医療機器」の境界管理がより重要になっている。
• 2027年: 米国ではFDAのPediatric Device Consortiaプログラムが2023~2027会計年度まで再承認されており、日本でもAMED資料によれば令和9年度に次期「第3期医療機器基本計画」の策定が予定されているため、小児を含む未充足ニーズ領域の事業化・国際展開支援が政策議論の重要テーマになるとみられる。 ●2030年: 個別の公的市場数値ではなく戦略的節目として、センサー、AI、SaMD、遠隔モニタリング、在宅診療システムの統合が進み、「病院内で使用する単体機器」から「家庭と医療機関をデータで接続する小児ケアプラットフォーム」への移行が市場競争を左右する可能性が高い。
• 2036年: 今回の市場予測期間は2035年までであるため2036年の市場金額は示さないが、2035年までに形成された小児専用設計、在宅医療、デジタル診断、リアルワールドデータ、国際共同開発の基盤が、次の成長フェーズへ移行できるかを評価する重要なポスト予測年になると考えられる。
小児デバイスでリアルワールドデータとAI活用が進めば、患者数が少なく臨床試験を大規模化しにくい市場特有の開発障壁を下げられる可能性がある
小児用医療機器では対象疾患によって患者母数が極めて限られ、年齢層をさらに新生児、乳幼児、学童などに細分化すると、従来型の大規模臨床試験だけで十分なエビデンスを構築することが難しい。この構造的制約に対し、今後重要性を増すのがリアルワールドデータ、患者レジストリ、既存デバイスの使用データ、シミュレーション、デジタルツイン、AI解析などを組み合わせる開発戦略である。2026年にFDAが2歳以上向けOTC CGMをクリアした際にも、成人・小児の既存臨床試験データに加え、実際のiCGM利用から得られたリアルワールドデータを活用して15日間の装着期間における小児での性能を評価したことが明らかにされている。 日本でもAMEDの医療機器開発推進研究事業は「疾患登録システム(患者レジストリ)を活用した医療機器の実用化」を公募分野として位置づけており、データを活用した開発インフラの重要性は高い。 今後、AIが診断補助やリスク予測に組み込まれるほど、企業の競争資産はハードウェア単体から、長期データセット、解析アルゴリズム、臨床ワークフローへの統合能力、継続的な性能検証体制へ移行していくと考えられる。
日本企業にとっての最大の事業機会は国内市場だけではなく、国内臨床ニーズを起点に米国・アジアを含むグローバル展開まで設計する開発モデルにある
日本の小児用医療機器市場は高い専門性を持つ一方で、対象患者数が成人医療機器ほど大きくないため、国内販売だけで研究開発費を回収するビジネスモデルには限界が生じやすい。そのため、製品企画の初期段階からPMDA承認だけではなくFDAなど海外規制当局への展開、海外KOLとの共同研究、多施設臨床試験、現地企業との販売提携まで含めたグローバル戦略を構築することが重要になる。AMEDも令和7年度から「医工連携グローバル展開事業」を開始し、米国をはじめとする国際市場への展開を見据える中小企業・スタートアップに対し、非臨床・臨床段階から支援する方針を明確化している。また令和8年度以降は、医療機器企業との連携や導出、M&Aを含む出口戦略を意識したスタートアップ支援について議論が進められている。 小児領域では希少疾患や先天性疾患など国単位では患者数が少ないケースが多いため、日本で生まれた高精度技術を海外患者にも展開して市場母数を広げることが、研究開発投資の回収と医療アクセス改善を同時に実現する重要な経営戦略となる。
セグメンテーションの概要
製品別
• 心血管機器
• 体外診断(IVD)機器
• 診断用画像機器
用途別
• 病院
• 診断研究所
• その他
2035年に6,451万米ドルへ向かう日本小児用医療機器市場で企業価値を決めるのは、製品単体の性能ではなく「臨床・規制・データ・在宅・海外展開」を束ねる実装力
2025年から2035年にかけて約2倍規模への拡大が予測される日本小児用医療機器市場では、単一技術の革新だけで長期的な競争優位を維持することは難しくなっていく。小児市場は、高い安全要求、限られた患者母数、年齢による身体特性の変化、長期フォローの必要性という難しい条件を持つ一方、政策支援、臨床研究資金、デジタル医療、在宅医療、リアルワールドデータ、国際展開支援が同時に進展しているため、従来よりも新規参入・事業化の機会は広がりつつある。厚生労働省には、需要が著しく満たされておらず医療上の必要性が高い機器を対象とする「特定用途医療機器」の指定制度があり、小児など未充足ニーズの高い領域で研究開発を促進する制度基盤も存在する。 今後の有力企業には、臨床医との共同開発、患者・保護者視点の設計、PMDAとの早期相談、RWEを含むエビデンス構築、病院・家庭間のデータ連携、保険・医療経済性の立証、海外承認までを一つの事業ロードマップとして管理する能力が求められる。したがって、CAGR 8.11%という成長率そのもの以上に、日本の小児医療が「小児専用品が少ない市場」から「小児のライフステージ全体を支える高度な医療技術市場」へ転換していくことこそ、2035年までの最大の構造変化と位置づけられる。
日本小児用医療機器市場:企業は日本市場の成長を捉えるために、どこへ投資すべきか
• 次の成長ポケットは「高機能化×デジタル化」、小児診療データを活用できる医療機器への投資が競争軸を変える
第二の投資テーマは、センサー、モニタリング、ソフトウェア、AI、リアルワールドデータ(RWD)などを組み込んだデジタル対応型の小児用医療機器です。小児医療では継続的な状態把握や遠隔モニタリング、医療従事者の負担軽減が重要となるため、単体のハードウェア販売から、データを活用した診療支援や患者モニタリングへビジネスモデルを広げる余地があります。PMDAは2026年にSaMDとRWDをテーマとしたシンポジウムを開催しており、既存の診療情報を活用した医療機器開発やRWDを利用した開発、二段階承認などについて整理しています。PMDA この環境を踏まえると、企業はハードウェア単体の性能競争だけでなく、小児患者から取得されるデータを安全かつ臨床的に意味のある形で活用するソフトウェア基盤、クラウド連携、医療機関向け分析機能まで含めた製品エコシステムへの投資を検討する必要があります。特に、病院側の導入負担を抑えながら既存システムと連携できる設計は、日本の医療機関への普及を左右する実務上の重要ポイントになります。
• 市場参入を左右するのは製品性能だけではない――PMDA対応と臨床開発体制を早期に構築できる企業が事業機会を取り込みやすい
第三の投資領域は、日本固有の薬事・臨床開発要件に対応するための規制戦略と臨床ネットワークです。小児用医療機器では患者数や対象症例が限定される領域も存在するため、通常の成人向け医療機器と同じ開発アプローチを採用すると、症例確保や臨床評価、承認までの期間・コストが課題となる可能性があります。PMDAのHBD East 2025では、小児用医療機器の開発を促進するための日本の規制イニシアチブとして、高い臨床ニーズを持つ医療機器への対応、希少疾病向け医療機器への支援、先駆け指定、条件付き承認、小児用医療機器申請への助成などが紹介されています。PMDA したがって、企業が日本市場へ参入する際には、販売組織を先に構築するだけでなく、PMDAとの早期相談、医療機関・大学との共同研究、臨床評価体制、希少疾病領域との接点、承認後のエビデンス構築を一体化した市場参入モデルを構築することが重要です。これは海外メーカーにとって特に重要であり、日本市場を単独市場として捉えるのではなく、アジアでの小児医療機器展開に向けた臨床・規制上の戦略拠点として位置付ける余地もあります。
• 「販売数量」よりも病院・専門診療科との深い関係構築へ投資し、限られた症例を確実に製品採用へつなげることが重要になる
第四の投資ポイントは、専門医療機関との関係構築、KOLネットワーク、トレーニング、アフターサービスを含む市場アクセス基盤です。小児用医療機器は一般消費財のように幅広い販売網だけで急速に普及する製品ではなく、製品選定に医師の臨床評価、病院の購買プロセス、安全性評価、使用トレーニングなどが関係するため、企業にとっては「販売チャネルの数」よりも「専門医療現場へのアクセスの質」が重要になります。特に新規参入企業は、大学病院や小児専門施設との共同研究を通じて臨床エビデンスを蓄積し、医療従事者向け教育プログラムや導入後のサポート体制を整備することで、単なる製品認知ではなく実際の採用につなげる必要があります。また、PMDAが医療機器の承認審査概要を公開し、実用化促進や国際展開支援の観点から情報提供を進めていることも、企業が承認・臨床・市場アクセスを一体で設計する重要性を示しています。PMDA
• 2035年に向けて企業が狙うべき成長戦略は「製品・データ・規制・臨床アクセス」を一つの投資ポートフォリオとして構築すること
2035年に向けて日本小児用医療機器市場が2,958万米ドルから6,451万米ドルへ拡大し、8.11%のCAGRで成長するという市場見通しを踏まえると、企業の投資判断では単一製品への集中よりも、専用小児機器、デジタル・データ連携、薬事・臨床開発、専門医療機関との市場アクセスを組み合わせたポートフォリオ型戦略が重要になります。特に2026年以降は、PMDAが小児領域の開発促進や国際的な規制連携を継続していることから、規制環境を単なる参入障壁として捉えるのではなく、早期相談や産官学連携を活用して開発リスクを管理することが重要です。PMDA そのうえで企業は、短期的な売上拡大だけではなく、どの小児疾患・診療領域に未充足ニーズが存在するのか、どの医療機関で採用可能性が高いのか、どの製品がデジタル化によって継続収益へ発展できるのかを見極める必要があります。つまり日本市場での成長機会は、単純な市場規模の拡大だけではなく、**「小児特有の臨床課題を解決できる製品」×「規制・臨床開発力」×「医療現場へのアクセス」**をどれだけ早く統合できるかによって左右される構造へ移行しています。
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