報道関係者各位
    プレスリリース
    2017年3月13日 14:00
    学校法人近畿大学

    多彩な色を作り出せる色素を開発 抗菌作用などの機能を持つ染料の低コスト化に期待

    近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)応用化学科の准教授 今井喜胤(いまいよしたね)らの研究グループは、色素分子の一部を変えることにより、色合いが変化する新しい有機色素材料の開発に成功しました。合成が簡単であり、低コストで大量生産が可能なため、新しい染料として実用化が期待できます。このたび、本件に関する論文が、オランダのエルゼヴィア社が発刊する国際的学術雑誌「Tetrahedron(テトラヘドロン)」の電子版に平成29年(2017年)2月27日(月)に掲載されました。

    【本件のポイント】
    ●色素分子の一部を変えることにより色合いが変化する、新しい色素材料の開発に成功
    ●合成が簡単で、大量生産が可能なため、染料の低コスト化に期待
    ●今後は抗菌作用などの付加機能を持つ染料の開発および低コスト化を目指す

    【本件の概要】
    物体に色を与える物質を「色素」、布や紙などへ色素を染着させる物質を「染料」と呼び、生活に欠かせないものとなっています。今日まで、様々な色合いや、抗菌作用などの特殊な機能を備えた多種多様な染料が開発されています。
    研究グループは、ビタミンKなど多くの天然物質の基本となる分子構造(骨格)のナフトキノン骨格に着目し、ビタミンKの一種であるメナジオン(ビタミンK3)骨格を元にした新しいナフトキノン系色素の開発に取り組みました。ナフトキノン系色素は、天然の植物等から生成した染料にも含まれており、古くから人類が親しんできた色素です。
    メナジオン骨格に、炭素、窒素、水素を環状に配置した分子構造である複素環を結合させることにより、新しい色素の開発に成功しました。加えて、複素環中の窒素を増加させるだけで、色合いが変化することを発見しました。従来の色素は色ごとに分子構造が異なるものがほとんどでしたが、今回の色素は、分子構造を変えることなく、様々な色を作り出すことができるため、製造が容易になり、低コスト化が期待できます。
    今後は、複素環の種類を増やすことにより、色合いのバリエーションを増やし、実用化を進める予定です。また、ナフトキノン由来の化合物には、抗ウイルス薬や抗生物質として利用されているものが多くあるため、今後は抗菌作用などの機能を付与した色素の開発を進めていきます。
    なお、本研究は文部科学省「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択された「太陽光利用促進のためのエネルギーベストミックス研究拠点の形成」の一環です。

    【掲載誌】
    ◆雑誌名・・・『Tetrahedron(テトラヘドロン)』
           オランダの有機化学分野の国際的学術雑誌
           インパクトファクター2.645(平成27年版)
    ◆論文名・・・“Heterocyclic effect for optical properties of naphthoquinone-based pigment : 2-methyl-3-heteroarylthio-1,4-naphthalenedione”
    ◆著 者・・・Akihiro Sako,Koji Okuda,Nobuo Tajima,Reiko Kuroda,and Yoshitane Imai

    【研究の詳細】
    種類の異なる複素環系チオール誘導体をメナジオン(ビタミンK3)に結合させることにより、複素環部位を有する新しいナフトキノン系色素(1-3)の合成に成功しました。
    3種類のナフトキノン系色素1~3の固体粉体状態での色調を評価したところ、複素環部位の種類に応じて、色調が大きく異なり、色素1は赤茶色、色素2は黄茶色、色素3は黄色を示しました。さらに、有機溶媒に溶解させた溶液状態での色調を評価したところ、色素1は褐色、色素2は薄橙色、色素3は薄黄色と、固体粉体状態同様、複素環部位の種類に応じて、溶液の色調に大きな違いが観測され、その色調は、固体粉体状態と溶液状態でほぼ同じでした。

    【今後の展望】
    色素合成原料である複素環系チオール誘導体の種類は非常に多いため、今後は、さらに色素に結合させる複素環の種類を変えることにより、色素色のバリエーションを増やし、耐候性などを検討し、有機染料としての利用に展開していく見込みです。
    今回の研究により、複素環系部位を備えたナフトキノン骨格を有する色素が、様々な色調を出すことを見出しました。ナフトキノン由来の化合物には、重要な薬としての効果を有しているものが多く、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗生物質として利用されている化合物も多くあります。そのため、本研究で見出した新しいナフトキノン系色素も、抗菌作用を有するなど、高付加価値を持った色素開発へと展開していく予定です。

    【研究者プロフィール】
    近畿大学 理工学部 応用化学科 准教授 今井 喜胤(いまい よしたね)
    研究テーマ:円偏光発光(CPL)特性を有する機能性発光体の開発
    専   門:有機光化学、不斉化学、超分子化学
    平成12年(2000年)  大阪大学大学院工学研究科分子化学専攻博士後期課程修了
               博士(工学)
               JST博士研究員
    平成16年(2004年)  近畿大学理工学部応用化学科助手
    平成21年(2009年)  同講師
    平成27年(2015年)  同准教授

    【「太陽光利用促進のためのエネルギーベストミックス研究拠点の形成」の概要】
    ■研究内容
    太陽光エネルギーを利用して水素ガスやメタノールといった1次エネルギー物質を生成する際に必要不可欠とされるソーラー触媒の開発や人工光合成における化学的機能の開拓(研究テーマ1)を推進します。同時に、ウェアラブル端末などに広く利用可能な薄膜太陽電池における光電変換効率の高効率化(研究テーマ2)、さらには、光磁気機能を駆使した省エネルギー記憶媒体に関わる基盤的物質の創成(研究テーマ3)を目指します。

    ■プロジェクトの波及効果
    東京電力福島第1原子力発電所の事故以降、わが国のエネルギー政策は歴史的な転換期にあり、利用可能なエネルギー資源の特徴を生かしつつ各々を効果的に運用していくための施策を必要としています。その際、立ち遅れの目立つ太陽光エネルギー利用についても可能性をポジティブに評価したうえで有効に活用していく必要があります。太陽光エネルギー利用の可能性を最大限に引き出すための基盤的研究を推進します。

    ■プロジェクトの将来と人材育成
    総合理工学研究科・理工学部の教員16人の参画を得て発足した本研究プロジェクトは将来的に近畿大学における原子力、火力、太陽光研究をゆるやかに束ねる総合エネルギー研究開発拠点として社会基盤の整備等に関して科学的見地から発信力を強化していくことを目指します。また、活動を通じて優れた人材の育成に力を尽くします。

    【関連リンク】
    理工学部 応用化学科 准教授 今井 喜胤(イマイ ヨシタネ)
    http://www.kindai.ac.jp/meikan/362-imai-yoshitane.html

    【研究の詳細】
    【研究の詳細】