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報道関係者各位
プレスリリース

2015.10.29 11:00
雪印メグミルク株式会社

雪印メグミルク株式会社(本社:東京都新宿区 代表取締役社長:西尾 啓治)は、当社保有のプロバイオティクス乳酸菌「ガセリ菌SP株」の健康機能に関する新たな知見について、《第11回 日本食品免疫学会学術大会》において発表いたしました。

インフルエンザワクチンに対する抗体価
インフルエンザワクチンに対する抗体価

【発表のサマリー】
ガセリ菌SP株摂取によって、インフルエンザワクチン接種後の抗体産生が促進されてその効果が高まること、また、免疫指標であるNK細胞活性等が高まることが確認されました。これらの結果は、これまでマウスを用いた試験で確認されていた、ガセリ菌SP株摂取によってインフルエンザに対する防御機能が高まることを、ヒト試験で確認できたことを示します。
また、マウスを用いたこの効果のメカニズム解析では、生体内に侵入した異物を捕らえるマクロファージにガセリ菌SP株が作用し、ウイルスへの抵抗を高めるインターフェロンの産生を促すことによって、インフルエンザに対する防御機能を高めることが示されました。


◆研究発表概要
1.演題名
Lactobacillus gasseri SBT2055含有発酵乳の摂取が健常人のインフルエンザワクチン抗体価および免疫機能に与える影響
発表者 ○酒井史彦1、冠木敏秀1、川崎功博1、西村光恵2、西平順2 ※○は演者
1.雪印メグミルク株式会社
2.北海道情報大学
発表日 10月15日(木)

2.演題名
Lactobacillus gasseri SBT2055による腸管マクロファージのインターフェロンシグナル活性化を介した肺上皮でのインフルエンザAウイルスの増殖抑制機構
発表者 ○守屋智博1、浮辺健1、松原由美2、馬場一信2、中川久子2、中山洋佑2、宮崎忠昭2 ※○は演者
1.雪印メグミルク株式会社
2.北海道大学
発表日 10月15日(木)

◆学会開催概要
第11回日本食品免疫学会学術大会
会期  平成27年10月15日(木)~16(金)
会場  東京大学伊藤謝恩ホール(東京都文京区)

◆研究発表内容の要約

1.Lactobacillus gasseri SBT2055含有発酵乳の摂取が健常人のインフルエンザワクチン抗体価および免疫機能に与える影響

健康な男女200名を2つのグループに分け、片方のグループ(ガセリ群)にガセリ菌SP株を含有するドリンクヨーグルトを、もう片方のグループ(プラセボ群)にガセリ菌SP株を含まないドリンクヨーグルトを1日1本(100g)、16週間摂取してもらいました。そして、摂取開始から4週間後に、全員にインフルエンザワクチン※1(A型H1N1、A型H3N2、B型)を接種し、ドリンクヨーグルト摂取開始時、4週間後(ワクチン接種時)、7週間後、11週間後、16週間後に採血を行い、それぞれのワクチンに対する抗体価※2を測定しました。
さらに、ドリンクヨーグルト摂取開始時、7週間後、16週間後には、免疫指標であるNK細胞※3活性、および唾液中のIgA量※4を測定しました。
その結果、ガセリ群では、インフルエンザA型H1N1およびB型に対するワクチン接種後の抗体価が、プラセボ群と比較して有意に高い値を示しました。
また、NK細胞活性は、ガセリ群がプラセボ群よりも高い活性を示しました。さらに、IgAの変化量は、ガセリ群がプラセボ群よりも高い値を示しました。
以上の結果から、ガセリ菌SP株を含有するドリンクヨーグルトを摂取すると、ワクチンに対する抗体産生が促されてその効果が高まること、免疫指標であるNK細胞活性等を増強することが明らかとなり、その結果、インフルエンザに対する防御機能が高まることが示されました。

※1 インフルエンザワクチン:日本で毎年流行するウイルスは、A(H1N1)亜型とA(H3N2)亜型、およびB型の3種類であり、本試験が行なわれた平成26~27年では、これら3種類のインフルエンザウイルスを含んだワクチンの接種が実施された。
※2 抗体価:外界からの異物(ウイルス、花粉など)が体内に侵入すると、それらに対抗する抗体が産生される。抗体の量を表すのが抗体価である。抗体価が高いほど、異物に対する抵抗性が高いことを示す。
※3 NK細胞:自然免疫の主要因子として働く細胞傷害性リンパ球の一種で、おもに血液中に存在し抗腫瘍活性や抗体産生の調節に関与する細胞。
※4 IgA:感染防御やアレルギー抑制に関与するとされる抗体の一種。唾液中に多量に存在し、IgA量が減少すると、免疫機能が低下すると考えられている。


2.Lactobacillus gasseri SBT2055による腸管マクロファージのインターフェロンシグナル活性化を介した肺上皮でのインフルエンザAウイルスの増殖抑制機構

ガセリ菌SP株によるインフルエンザに対する感染防御作用のメカニズムを明らかにするために、マウスの肺および腸管免疫組織における抗ウイルス効果を示す遺伝子の発現解析を行いました。その結果、両組織におけるインターフェロン-β※1とI型インターフェロンのシグナル伝達因子※2の遺伝子発現量がガセリ菌SP株を摂取したマウスで上昇していました。
次に、マウスの血清中の抗ウイルス効果を肺上皮細胞を用いて解析した結果、ガセリ菌SP株を摂取したマウスの血清はウイルス増殖を抑制しました。
さらに、マクロファージ※3と樹状細胞※4にガセリ菌SP株を添加して遺伝子の発現解析を行った結果、ガセリ菌SP株はマクロファージのI型インターフェロンの発現を誘導することが明らかとなりました。
以上の結果から、ガセリ菌SP株が腸管に作用することで、肺の感染防御能を強化する物質が血中に放出され、その血液が肺にたどり着くことで肺における感染を予防する、“腸から肺へ”のメカニズムの一端が示されました。

※1 インターフェロン-β:動物体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質の一種。
※2 シグナル伝達因子:細胞が外部からの情報を認識し、その情報を細胞内へと順次伝達して、最終的に細胞分裂などの反応を起こすまでの過程において、情報の伝達に働く因子のこと。
※3 マクロファージ:動物の組織内に分布するアメーバ状の免疫細胞。生体内に侵入した細菌などの異物を捕らえて細胞内で消化するとともに、それらの異物に抵抗するための免疫情報をリンパ球に伝える役割を担っている。
※4 樹状細胞:体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの異物の情報を、免疫系に提示し活性化を誘導する細胞。

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