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報道関係者各位
プレスリリース

2021.06.17 16:30
日本労働組合総連合会(連合)

日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津 里季生)は、コロナ禍における非正規雇用で働く人の意識や実態を把握するため、「コロナ禍における非正規雇用で働く人の実態と意識に関する調査2021」を2021年5月17日~5月19日の3日間でインターネットリサーチにより実施し、全国の18歳~65歳の非正規雇用で働く人1,000名の有効サンプルを集計しました(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)。


[調査結果]

≪コロナ禍により勤め先から受けた対応≫

◆コロナ禍による勤め先の対応 「出勤日数および労働時間削減」22.5%、「在宅勤務(テレワーク)の実施」12.4%、「休業などによる自宅待機指示」9.8%、「時差出勤の実施」8.5%


全国の18歳~65歳の非正規雇用で働く人1,000名(全回答者)に、コロナ禍による勤め先の対応について質問しました。


全回答者(1,000名)に、コロナ禍により勤め先がどのような対応をとったか聞いたところ、「出勤日数および労働時間削減」は22.5%、「在宅勤務(テレワーク)の実施」は12.4%、「休業などによる自宅待機指示(業務に従事しない)」は9.8%、「時差出勤の実施」は8.5%、「業務内容の変更」は3.2%となりました。

業種別にみると、[情報通信業]では「在宅勤務(テレワーク)の実施」(47.1%)、[宿泊業、飲食サービス業]では「出勤日数および労働時間削減」(52.9%)と「休業などによる自宅待機指示(業務に従事しない)」(29.4%)が他の業種と比べて特に高くなりました。


◆「コロナ禍により勤め先が行った“出勤日数・労働時間削減”は『非正規雇用で働く社員・職員』のみ対象だった」勤め先に自身と同じ業務に携わる正社員・正職員がいる人の32.1%


次に、勤め先に自身と同じ業務に携わる正社員・正職員がいる人に、コロナ禍の影響を受けて勤め先がとった対応について、雇用形態による違いがあったのか聞きました。

<出勤日数および労働時間削減>では「『非正規雇用で働く社員・職員』と『同じ業務に携わる正社員・正職員』の両方が対象だった」が66.0%、「『同じ業務に携わる正社員・正職員』だけ対象だった」が1.9%、「『非正規雇用で働く社員・職員』だけ対象だった」が32.1%となりました。また、<休業などによる自宅待機指示(業務に従事しない)>では「『非正規雇用で働く社員・職員』と『同じ業務に携わる正社員・正職員』の両方が対象だった」が73.5%、「『同じ業務に携わる正社員・正職員』だけ対象だった」が4.4%、「『非正規雇用で働く社員・職員』だけ対象だった」が22.1%となりました。そのほか、<在宅勤務(テレワーク)の実施>と<時差出勤の実施>においては、「『非正規雇用で働く社員・職員』と『同じ業務に携わる正社員・正職員』の両方が対象だった」(順に84.2%、88.1%)が大半を占めました。


出勤日数および労働時間削減の対象において正社員・正職員と違いがあった人(54名)に、その違いに対する納得状況を聞いたところ、「納得がいった」は20.4%、「納得いかなかった」は31.5%となりました。雇用形態の違いにより勤め先がとった対応に違いがあったことに対し、腑に落ちないと感じている人は少なくないようです。


◆休業手当の支給状況 「支給されなかった」勤め先が休業・時間短縮していた人の51.7%、「6割未満」は9.5%、一方、「10割支給された」は20.5%、「6割以上支給された」は18.3%にとどまる


また、休業や時間短縮期間中の休業手当の支給について質問しました。


全回答者(1,000名)に、コロナ禍において勤め先が休業や時間短縮(一時的なものも含む)をしていたか聞いたところ、「していた」は41.0%、「していなかった」は59.0%となりました。

業種別にみると、休業や時間短縮をしていた割合は、[宿泊業、飲食サービス業](69.1%)と[生活関連サービス業、娯楽業](57.1%)が特に高く、半数を超えました。


勤め先が休業や時間短縮をしていた人(410名)に、勤め先が休業や時間短縮をしていた間、休業手当は支給されたか聞いたところ、「休業手当は支給されなかった」は51.7%、「休業手当は6割未満」は9.5%、「休業手当は10割支給された」は20.5%、「休業手当は6割以上支給された」は18.3%となりました。労働基準法の規定のとおりに休業手当が6割以上支給されたケースは38.8%と、少数派であることがわかりました。

業種別にみると、休業手当が6割以上支給された割合は、[医療、福祉](25.7%)が最も低くなりました。


◆コロナ禍により勤め先から受けた労働契約内容変更等の実態

 「途中解雇」は11.7%、「雇止め」は9.7%、「退職勧奨」は9.1%、「賃金の減額」は12.4%が「受けた」と回答

◆「賃金を減額する労働契約内容の変更には納得できない」コロナ禍の影響で賃金を減額された人の39.5%


途中解雇や雇止めなど、勤め先から受けた労働契約内容の変更について質問しました。


全回答者(1,000名)に、コロナ禍の影響で、勤め先から労働契約内容の変更等を受けることがあったか聞いたところ、「変更等を受けた」と回答した人の割合は、<契約期間の短縮(途中解雇)>では11.7%、<次期契約更新の変更(雇止め)>では9.7%、<希望退職への打診(退職勧奨)>では9.1%、<賃金の減額>では12.4%となりました。


勤め先から労働契約内容の変更等を受けた人に、変更等に対しどのくらい納得できないことがあったか聞いたところ、<契約期間の短縮(途中解雇)>を受けた人では「大いにあった」が11.1%、「まあまああった」が22.2%で、合計した『あった(計)』は33.3%となりました。また、<次期契約更新の変更(雇止め)>を受けた人では『あった(計)』は37.1%、<希望退職への打診(退職勧奨)>を受けた人では34.1%、<賃金の減額>を受けた人では39.5%となりました。労働契約内容の変更について、十分な説明がなされないまま変更を通知されたケースがあるのではないでしょうか。


≪コロナ禍による生活への影響≫

◆コロナ禍において仕事面や生活面で不安に感じたこと 1位「健康・体調」2位「収入の減少」3位「生活費」

◆「コロナ禍で収入が減少し、生活への支障があった」36.4%


全回答者(1,000名)に、コロナ禍において仕事面や生活面で不安に感じたことを聞いたところ、「健康・体調(新型コロナウイルス感染含む)」(52.8%)が最も高くなりました。以降、「収入の減少」(36.8%)、「生活費」(23.2%)と、お金の不安が上位に挙がりました。


また、コロナ禍において収入が減少したことで生活への支障があったか聞いたところ、「収入が減少し、生活への支障があった」が36.4%、「収入は減少したが生活への支障はない」が16.0%となりました。コロナ禍の影響で収入が減少し、生活に悪影響が及んだと感じている人は少なくないようです。


◆収入減少による生活への支障に対しとった対策 1位「生活費の切り詰め」2位「貯蓄の取り崩し」


コロナ禍において収入が減少したことで生活への支障があった人(364名)に、どのような対策をとったか聞いたところ、「生活費の切り詰め」(55.8%)が特に高く、次いで、「貯蓄の取り崩し」(31.0%)となりました。

業種別にみると、[宿泊業、飲食サービス業]や[医療、福祉]では、「生活費の切り詰め」(順に62.9%、64.6%)と「貯蓄の取り崩し」(順に40.0%、39.6%)が他の業種と比べて高くなりました。


また、主たる生計者かどうかでみると、主たる生計者では「生活費の切り詰め」は60.0%、「貯蓄の取り崩し」は35.0%と、主たる生計者でない人(順に52.5%、27.9%)と比べて10ポイント近く高くなりました。生計を維持するにあたり、生活費を切り詰めたりやむを得ず貯蓄を取り崩したりして対処していた人が多いようです。


≪コロナ禍による働き方に対する意識の変化≫

◆非正規雇用で働いている理由

 1位「自分の都合のよい時間に働きたい」2位「勤務時間や労働日数が短い」


現在の仕事について質問しました。


全回答者(1,000名)に、現在の雇用形態(契約社員・契約職員、嘱託社員・嘱託職員、パート・アルバイト、派遣社員のいずれか)で働いている理由を聞いたところ、「自分の都合のよい時間に働きたいから」(45.5%)が最も高くなりました。時間の融通が利く点を重視して現在の働き方を選んだという人が多いようです。次いで、「勤務時間や労働日数が短いから」(32.5%)、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」(22.0%)、「責任が少ないから」(19.0%)、「正社員として働ける会社がなかったから」(18.0%)となりました。

男女別にみると、女性では「家事・育児・介護等と両立しやすいから」は29.9%と、男性(3.4%)と比べて26.5ポイント高くなりました。他方、男性では「正社員として働ける会社がなかったから」は26.2%と、女性(14.5%)と比べて11.7ポイント高くなりました。

就業形態別にみると、パート・アルバイトでは「自分の都合のよい時間に働きたいから」(56.6%)や「勤務時間や労働日数が短いから」(41.4%)、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」(27.4%)、派遣社員では「責任が少ないから」(32.0%)や「正社員として働ける会社がなかったから」(42.0%)、「仕事に就きやすいから」(33.0%)、「組織に縛られたくないから」(24.0%)が、それぞれ他の層と比べて高くなりました。


◆労働契約に雇用期間の定めがあるか 「ある」45.6%、「ない」42.0%

◆無期転換申込権が得られたときの転換意向 「転換したい」有期雇用契約で働く人の32.9%


全回答者(1,000名)に、現在の勤め先と結んでいる労働契約に雇用期間の定めがあるか聞いたところ、「ある(有期雇用)」は45.6%、「ない(無期雇用)」は42.0%となりました。


現在の勤め先と結んでいる労働契約に雇用期間の定めがある人(456名)に、無期転換を申し込む権利が得られたら無期雇用に転換したいと思うか聞いたところ、「転換したい」が14.0%、「どちらかといえば転換したい」が18.9%で、合計した『転換したい(計)』は32.9%、「転換したくない」が11.6%、「どちらかといえば転換したくない」が9.2%で、合計した『転換したくない(計)』は20.8%となりました。

無期転換ルールの認知別にみると、無期転換ルールを知っている人では『転換したい(計)』が35.5%と、無期転換ルールを知らない人(27.7%)と比べて7.8ポイント高くなりました。


◆働き方に対する意識の変化 「今の職場で正規雇用として働きたいと思うようになった」8.8%

◆今後働く上で優先したい労働条件等 1位「賃金」2位「勤務時間・労働日数」3位「業務内容」

 「賃金」「業務内容」「安定した雇用」はコロナ禍前から5ポイント以上上昇


全回答者(1,000名)に、コロナ禍により働き方に対する意識に変化はあったか聞いたところ、「今の職場で正規雇用として働きたいと思うようになった」が8.8%、「非正規雇用のまま転職したいと思うようになった」が10.5%、「正規雇用として転職したいと思うようになった」が8.7%と、正規雇用者として働くことを望む人や、転職意向を持つようになった人が少なくないことがわかりました。


働く上で優先したい労働条件について聞いたところ、<新型コロナウイルス感染拡大前に働く上で優先したいと思っていた労働条件等>では「勤務時間・労働日数」(51.8%)が最も高く、次いで、「賃金」(50.7%)、「業務内容」(40.9%)、「安定した雇用」(28.2%)、「通勤時間」(27.4%)となりました。

他方、<今後働く上で優先したい労働条件等>では「賃金」(59.9%)が最も高く、以降、「勤務時間・労働日数」(55.1%)、「業務内容」(46.9%)、「安定した雇用」(34.4%)、「通勤時間」(24.8%)が続きました。<新型コロナウイルス感染拡大前に働く上で優先したいと思っていた労働条件等>と比較すると、「賃金」(9.2ポイント差)と「業務内容」(6.0ポイント差)、「安定した雇用」(6.2ポイント差)では5ポイント以上高くなりました。


≪非正規雇用に関連する法律の認知状況≫

◆「非正規雇用で働く人と正規雇用で働く人との間に不合理な待遇差を設けることが法律で禁止されていること」認知率は73.2%

◆「条件を満たすことで期間の定めのない労働契約へ転換できる“無期転換ルール”」認知率は56.1%


最後に、全回答者(1,000名)に、非正規雇用に関連する法律の認知状況を聞きました。

【パートタイムや契約社員、派遣社員など非正規雇用で働く人と正規雇用で働く人との間に不合理な待遇差を設けることは法律で禁止されていること】を知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」が10.0%、「詳しくではないが知っていた」が63.2%で、合計した『認知(計)』(以下、認知率)は73.2%となりました。他方、「知らなかった」は26.8%でした。

従業員規模別にみると、認知率は従業員規模が大きくなるほど高い傾向があり、従業員規模1000人以上では86.7%となったのに対し、従業員規模9人以下では60.0%にとどまりました。


また、【契約期間の定めのある労働契約(有期労働契約)で働く人が安心して働き続けることができるようにするために、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルール】を知っていたか聞いたところ、認知率は56.1%、「知らなかった」は43.9%となりました。

従業員規模別にみると、この認知率も従業員規模が大きくなるほど高い傾向があり、従業員規模1000人以上では73.4%となったのに対し、従業員規模9人以下では35.2%にとどまりました。


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