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報道関係者各位
プレスリリース

2021.03.02 12:00
EMIRA

 イノベーション(変革)を「エネルギー」という視点で読み解くことで未来を考えてゆくメディア「EMIRA」は、2月27日(土)、早稲田大学パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム(以下、PEP)とともに、ビジネスアイデアコンテスト企画第二弾「EMIRAビジコン2021 エネルギー・インカレ」をオンラインにて実施いたしましたので、当日の様子をご報告します。

 本大会は、EMIRAと、早稲田大学を代表校に13大学が連携する5年一貫の博士人材育成プログラムであるPEPが共催しました。今回は、生きていく上で欠かせない「食」の課題について、エネルギーの視点から挑戦するビジネスアイデアを全国の大学生・大学院生から募り、この日、182チームの頂点が決定しました。

 最優秀賞を受賞したのは、「食の不均衡をエネルギーの視点で~食品ロスから食品とエネルギーを~」について発表した東北大学大学院のチーム「宏塾」。最優秀賞を発表した早稲田大学理工学術院 教授 同大スマート社会技術融合研究機構 機構長 同大卓越大学院PEPプログラム プログラムコーディネーター林 泰弘氏は、「廃棄物をドライフルーツ化して提供することと、廃棄するものをしっかりコストとして考えるという多面的な考え方が高く評価されました」と語りました。

 また、本大会の審査員である、東京電力ベンチャーズ株式会社代表取締役社長の赤塚 新司氏と出前館前会長でエグゼクティブアドバイザーの中村 利江氏にインタビューを行いました。


<「EMIRA」 URL>

https://emira-t.jp/


出場5チームのプレゼン内容詳細

 全国から応募のあった182チームの中から、厳正な審査によって選ばれた5チームが本コンテストに出場。「食×エネルギー」をテーマに、各チームが個性的なアイデアをまとめたプレゼンテーションを展開しました。EMIRA最優秀賞は、東北大学大学院のチーム「宏塾」が受賞。発表内容の詳細はEMIRAで掲載予定です。その他、KADOKAWA賞は「Fridge Food Scanner」、TEPCO賞は「秋田大学 国際資源学部 資源政策コース 国際協力研究ゼミ」、優秀賞は「Team Agridge Project」と「The middle」が受賞しました。


<EMIRA最優秀賞> 宏塾(東北大学大学院)

浦田 宙明・長谷川 就

テーマ:食の不均衡をエネルギーの視点で~食品ロスから食品とエネルギーを~


発表内容:

食品ロスと食の不均衡をテーマにプレゼンを展開した宏塾は、食品廃棄物焼却に伴うエネルギーのロスに着目し、食の不均衡解消やCO2排出量削減、再生可能エネルギーへのシフトを目的としたアイデアを提案しました。これまでの食品ロス削減への取り組みでは、衛生面や品質への懸念から普及が困難であったことを課題とし、課題解消に向けて具体的な事業計画を発表。生産現場での過剰生産品を、温風乾燥やフリーズドライにすることで食品ロスと農家の経済的問題である豊作貧乏の解消にも寄与するというものです。さらに、この事業計画では、実際に宮城県亘理郡をモデル対象地域とし、具体的に扱う農作物まで想定。食品とエネルギーを掛け合わせた独自の視点からのアイデアでEMIRA最優秀賞に輝きました。


<KADOKAWA賞> Fridge Food Scanner(早稲田大学)

青柳 雄大・三上 翔太

テーマ:SAVE FOOD, TIME & ENERGY!


発表内容:

今回最終選考に残った5チームの中で唯一プロダクトを用いた事業計画を提案したFridge Food Scannerは、CEO目線に立った計画内容やプレゼンへの姿勢が評価されました。Fridge Food Scannerが提案したのは、冷蔵庫に取り付け、専用アプリから出先でも冷蔵庫の中身を見ることができるカメラとアプリケーションサービス。冷蔵庫の中身の確認だけではなく、画像認識機能で食材の在庫を自動で確認することに加え、レシピサイトと連携して余剰食材を考慮したメニューの推薦、足りなくなった食材を自動で発注・配達するサービスなど、サブスクリプションサービスで様々な追加機能を利用できるという計画モデルでした。既にあるプロダクトとの差別化を図り、自分たちの事業ならではの強みを明確に提案。さらにそれをエネルギー消費削減、消費電力削減につなげるなど、消費者ファーストの視点を持った企画で食×エネルギーにアプローチしました。


<TEPCO賞> 秋田大学 国際資源学部 資源政策コース 国際協力研究ゼミ

太田 晶人、串田 大空、成田 恭歌、村上 凌太

テーマ:食品廃棄物を用いた野菜の栽培と貧困削減


発表内容:

「持続可能」という考え方を「ヒトが主体で、課題解決に取り組み、社会の発展に貢献すること」と独自の定義に捉え直したことが高い評価を得た、秋田大学 国際資源学部 資源政策コース 国際協力研究ゼミ。「持続可能な野菜」として、バイオガス発電由来のエコな肥料を用いた野菜を作り上げることを提案しました。さらに生産の段階でビジネスモデルにバイオガス発電やエコ肥料を取り入れるだけではなく、「持続可能な野菜」の売り上げの一部をフードバンクに寄付する試みも。他業種を巻き込んだビジネスモデルや、エシカル消費者を増やすことなど、広い視野を持った提案で食×エネルギーに向き合いました。終始いきいきとした表情でチームワークを感じさせるプレゼンにも注目が集まりました。


<優秀賞> Team Agridge Project(横浜国立大学) 清水 翼・加藤 宗一郎

テーマ:農家の共同運送を可能にするシステムの構築


発表内容:

Team Agridge Projectは「ともはこ」という新たな共同運送の仕組みを提案。実際に農家から吸い上げた課題の解決に向けたビジネスモデルを発表しました。「ともはこ」は24時間対応のウェブシステムと共同運送を掛け合わせ、より農家のニーズに適したサービスを届けることに着目した運送サービスです。地域で連携が図れず、なかなか思うように共同運送ができないという現場の課題を解決し、運送コストの削減と運送エネルギーの削減を目的としました。さらに急な需要に対応する補助システムとして民間デリバリーサービスと連携することなど、他業種との連携も視野に。初期費用のかかる事業計画でも3期までに黒字化することなど具体的な見通しも提案し、SDGsの観点だけでなくより経済活動にもコミットできる内容を意識した事業計画を発表しました。


<優秀賞> The middle(金沢工業大学)

保科 洸成・堀 凌人

テーマ:ミドリムシで動く農業機械「アグレナ」!


発表内容:

人口爆発による食料不足を問題に掲げたThe middleは、輸入に頼る日本の食料自給率への懸念点を指摘しました。そこで大企業が農業に参入し、ミドリムシを使ったバイオ燃料を使うことで、現在の農家が抱える問題を解消できるのではないかと提案。地球温暖化の要因になる化石燃料や、新しい農業機械の購入・開発が必要な電気や水素エネルギーではなく、既存の農業機械に使用できることがミドリムシを使ったバイオ燃料を提案した理由だと話しました。さらに大企業が参入することを想定し、未だコスト面でなかなか導入しづらいミドリムシのバイオ燃料を実際に使用するための資金調達としてESG投融資についても説明。農家へのインタビュー動画を交えた資料で、積極的に事業計画を訴えかけました。


食とエネルギーの未来を担う、最優秀賞受賞者がコメント

 大会後、EMIRA最優秀賞を受賞した東北大学大学院のチーム「宏塾」、および今回の審査員である東京電力ベンチャーズ株式会社代表取締役社長・赤塚 新司氏と出前館エグゼクティブアドバイザー・中村 利江氏にインタビューを行いました。


<「宏塾」インタビュー>


ー最優秀賞を受賞した、今の率直な感想を聞かせてください。

長谷川:普段から浦田と共に、環境問題についていかにビジネスを使って解決するのかと話していたので、今回私たちのアイデアが認められたということが非常に光栄です。


浦田:認められて嬉しい一方で、他のチームの発表を聞くと、課題というものは常に連動して動いていくものだと感じました。今回は食×エネルギーというテーマに着目しましたが、まだまだ見なくてはいけないことがあるなと感じました。


ー今回のテーマである、「食の不均衡をエネルギーの視点で」という内容に着目したきっかけはなんですか。

長谷川:茨城県で育ち、農家がまわりに多かったのですが、幼い頃から道端に捨てられている農作物を目にすることが多くありました。大学で環境の勉強をしていくうちに、「あれがフードロスだったんだ」と気付いて、課題意識を持つようになりましたね。加えて、ドイツのミュンヘンに研究留学をしていたときに、日本の環境技術のレベルの高さを実感しました。この技術を使って何か解決していきたいという思いもあってこのテーマを選びました。


浦田:直接的にフードロスという問題に繋がったわけではないのですが、アフリカでコンサルティングのインターンをしていた時に、市場のまわりにはかなりの量の食品が捨てられていることを目の当たりにしました。その一方で、貧しい故に痩せ細った子供たちの姿も目にしたので、食品が捨てられていることと飢餓、まさに「食の不均衡」というテーマにたどり着きました。


ー実際にこの事業を進めていくとしたら、課題はどのようなことになると思いますか?

浦田:質疑応答でも挙がっていましたが、フリーズドライ加工をする上でのCO2の排出だと思います。試算では、2050年に掲げている削減割合としては可能であると思いますが、2030年の段階では、フリーズドライ加工の技術の問題でCO2を排出してしまうので、そこの理解を得られるかという点が壁としてあると思います。


ー今回、The Waste Transformersなど海外での事例も取り入れていましたが、留学先での経験や知見が生きているのでしょうか?

浦田:その経験もかなり大きいです。やはり「食の不均衡」と聞いて一番に思い浮かぶのは飢餓状態の方だと思いますので、アフリカでの経験が生きていると思います。


ーコロナ禍で研究を進めるにあたり、どのような点に苦労しましたか?

浦田:コロナ禍ということでできなかったのは、現地調査ですね。他のチームの発表を聞いて、自分たちもやれればよかったなと思う一方で、実行するのは難しかったかと思います。


長谷川:加えて、取り組みへの苦労とはズレてしまうかもしれませんが、今回僕たちの事業計画にはコロナ禍であるということを考慮できなかったので、実現性を考えたときにこういった事情も考慮できれば良かったなと思いました。


ーこの研究の今後について、どのようにお考えですか。

浦田:このあと社会人になってから実現していきたいと思っていたアイデアなので、実現できればいいなと思っています。


長谷川:もともと環境活動に貢献したいという思いで専攻を選んだのですが、環境問題は技術的な問題だけではなくて、どうビジネスとして回していくのかというところに行き着きました。こうした制約のある中でビジネスを考える面白さを今回改めて感じたので、将来的にもそういったところで働きたいと思っています。


<東京電力ベンチャーズ株式会社代表取締役社長・赤塚 新司氏インタビュー>


ー5組のアイデア、特に最優秀賞のアイデアについてどのように感じられましたか?

審査員の中にも専門性の違いがあって各チームに対して様々な評価がありましたが、それでもやはり、最優秀賞の「宏塾」はアイデアの構成もしっかりしていて、かつ定量的に整理されていました。加えて、自分たちのモデルを実際にどういうところで展開するのかまで検討していた具体性が評価されたと思います。


ー新たなビジネスの創出について、学生のアイデアから何か感じるものはありましたか?

学生の皆さんはすごく多面的な視点を持っていらっしゃると感じましたね。特に事業性だけではなく、社会課題に向き合って“どう自分たちで解決していくか”という観点から、社会性を踏まえたモノの考え方をしている方が多いと感じました。


ーご自身は「エネルギー×食」というテーマに対して、どうお考えですか?

全ての人にとって、「エネルギー」とともに「食」は非常に身近なものであり、そして、「エネルギー」と「食」は非常に近い領域です。今回寄せられたアイデアは全体として、食品の廃棄をいかに減らすか、あるいはそれをどう有効活用するかというポイントに着目したものが多かった。私としてもここに一つのビジネスチャンスがあるんじゃないかなと再認識した、いい機会だったと思います。


ーコロナ禍で勉学に励む、全国の大学生・大学院生に一言お願いします。

以前と比べて思うように物事を進めづらかったり、いわゆるキャンパスライフもままならなかったりする中でも、皆さん自分の将来に向けて頑張っていらっしゃると思います。WEB環境やデバイスの進化もあり、自分がやりたい事は逆にやりやすい環境ができているとポジティブに捉えて欲しいです。わからないことがあればインターネットでも調べられますし、距離も気にせず様々な人から教わることもやり易くなっているはずで、いくらでも世界は繋がっています。逆にこの状況も生かしながら、やりたいことを深めていって頂きたいと思います。


<出前館エグゼクティブアドバイザー・中村 利江氏インタビュー>


ー新たなビジネスの創出について、学生のアイデアから何か感じるものはありましたか?

以前のビジネスコンテストだと自分たちが利益を得るというところが多かったのですが、継続的な社会貢献や持続的な社会に向けての話が随分増え、今の学生の方がビジョンを高く持っているなと感じました。


シェアリングサービスに繋がるようなアイデアなどもいくつか出ましたね。それについて何かアドバイスとかご意見はありましたか?

シェアリングサービスは運送だけでなく、特に人の関わることではこれからの日本にとって必然のサービスになると思います。そこだけではなくて、皆さんにはもう一捻りやっていただけたらなと思いました。


コロナ禍を経て、今後どのように「食」の在り方が変化していくと思いますか?

残念ながら今、外食産業はすごく打撃を受けていて、逆にスーパーなどは伸びていて、いろんな変化が起こっています。これは元には戻らないと思うんですよ。新しい生活様式というのはずっと定着していくと思いますが、その中でチャンスってすごくいっぱいあると思います。変化が多い中で大変かと思いますが、そういうところを見つけて実行したところが勝っていくんじゃないかと思っています。


ーコロナ禍で勉学に励む、全国の大学生・大学院生に一言お願いします。

講義をする側も”リアル感“がなくて、画面越しだと辛い部分もあります。そこはすごく大変だとは思いますが、逆に現地に出向かなくても日本全国や世界中の講義を受けることができるチャンスが広がっていくと思いますので、そこはぜひうまく活用して進めていただけたらなと思います。


■EMIRA

EMIRA(エミラ)は、イノベーション(変革)を「エネルギー」という視点で読み解くことで未来を考えてゆくメディアです。


<メディア公式サイト>

https://emira-t.jp/

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