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報道関係者各位
プレスリリース

2021.01.27 10:00
株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント

世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2020年第4四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。

(※1)自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)


※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください

https://www.atpress.ne.jp/releases/244668/att_244668_1.pdf



【サマリー】

・アジア各国で新型コロナウイルスの影響が続き、求人増の国は限定的

・シンガポールでは新型コロナウイルスの影響が長引く前提で採用が活発化し、求人数が対前四半期比で6%増

・インドでは新型コロナウイルスの影響で8割近い企業が採用活動を凍結していたが、10月以降に徐々に採用活動を再開する企業が増え、前期比の求人数が9%増



■■マレーシア■■

1月13日より新たに移動制限令が発出

今後の感染抑制と景気に与える動向に注視が必要


【求人数】

対前年四半期比 96%

対前四半期比 88%

JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰


1月12日に新型コロナウイルス感染者が初めて3千人を超え3,309人となり、感染が拡大しています。政府は今月13日から2週間にわたり総GDPの66%を占めるクアラルンプールやセランゴール州など首都圏を中心に移動制限令を敷くと発表。製造業・サービス・流通など主要5セクターは操業を認められたものの、マレーシア経済の先行きはこの2週間でどこまで感染を抑え込むかで左右されることが考えられます。


【企業の採用動向】

2020年第4四半期の求人数は、対前年四半期比、対前四半期比では減少となったものの、大きく落ち込んだ昨年第2四半期と比較して30%増となりました。前年同期比ではマイナス4%とほぼ横ばいまで回復しています。内訳は非日系企業が11%増であったのに対し、日系では17%減と、採用意欲に違いが出ています。

給与別では、RM9,000以上(シニアマネジャー以上)の求人数が前年同期比13%増。コロナ禍で多くの企業が新規事業開拓や、既存ビジネスの強化などを実施したことでコア人材への求人が増加しました。特に非日系企業においては、同求人数に占める割合が前年同期が25%であったのに対し2020年第4四半期では41%まで上昇し、非日系企業における高額人材への採用意欲が強いことが伺えます。

当社が昨年11-12月に実施した雇用動向調査(207社回答)では、2021年の採用計画で増員予定のある企業は29.8%、交代要員のみ採用予定は29.8%、採用凍結は15.7%となりました。2020年中に追加採用をした企業が全体の19.8%であったことから、2021年はより戦略分野を強化する企業が増えていると言えます。

採用予定の職種では、営業・営業開発職が圧倒的に高く、次いで製造関連人材、サプライチェーン/物流、ITとなっています。


【求職者の動向】

例年、年末年始は転職市場は静かになり、旧正月(毎年2月頃)明けに求人・求職ともに活発化するというサイクルですが、今年は年末年始においても引き続き求職者の新規登録が続いています。コロナ禍における給与カット、レイオフと同時に、この機に、より安定成長が見込める企業への転職を画策する求職者が増えたことが要因と見ています。日本人求職者に関しては、2020年上半期に停滞していた就労パスの承認プロセスが徐々に緩和されて来ています。一方、2021年1月1日から外国人採用に関わる新しい求人プロセスが導入されたことから、今後どのような影響が出てくるか注視していく必要があります。



■■シンガポール■■

コロナの影響の長期化も視野に、採用の再開や増員が活発化


【求人数】

対前年四半期比 73%

対前四半期比 106%

JAC Recruitment International Group マネージングダイレクター

Adil Driouech(アディル ドリウェシ)


シンガポール貿易産業省が発表した2020年第4四半期の国内総生産(実質GDP)速報値は、前年同期比3.8%減となり、アナリストの予想を少し上回る結果となりました。2020年通年では5.8%減でしたが、21年は4~6%増に回復することが予想されています。出入国の規制にともない、小売業や飲食業など国内経済活動が活発化しましたが、一方でサービス業は前年同期比6.8%減、前期比で2.4%減。渡航規制や入国制限により、大きな影響を受けています。製造業は前年同期比で9.5%増、前期比で2.6%減となり、電子部品、バイオメディカルなどの生産拡大の影響を受けました。12月28日からフェーズ3となり外出制限人数が5人から8人になったものの、国内の様子は依然変わらない状況にあります。


【企業の採用動向】

採用を凍結していた企業はコロナの収束の様子を見図らい、2021年も引き続き影響が長引くという判断の中、10月以降採用再開や増員が活発化したことで求人数は対前四半期比で6%増となりました。来年度の予算編成に伴う増員や現在いるスタッフが退職する際の補充要員としての採用も顕著です。多くの企業は優先的にシンガポール人やPR(Permanent Resident、永住権永住権)保持者、DP(Dependant’s Pass、配偶者ビザ)保持者を採用を強化しました。例年12月以降は多くの人材が活発に転職活動を行い、転職市場が活性化するため、企業は「より優秀な人材の獲得ができるチャンス」と捉え採用を強化しています。


【求職者の動向】

年末にかけて、シンガポール人候補者の登録数は例年通りボーナス支給後の転職を狙って増加傾向にあり、それに合わせて求人も第3四半期に比べ増加したことにより、シンガポール人候補者の登録もさらに増加する、という結果となりました。日本人求職者はコロナの影響による渡航規制や入国規制のため、シンガポール国外にいる求職者が減少傾向でしたが、1月以降に4月の転職を目指し、登録数が増加傾向にあります。



■■タイ■■

コロナ下の状況でも、転職市場は徐々に回復の兆し


【求人数】

対前年四半期比 88%

対前四半期比 81%

JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘


2020年、タイは新型コロナウイルスを抑え込みに成功したものの、12月に第2波が発生し景気回復に水を差した状況となっています。特に観光・飲食業は大きな影響を受けており、他の業種においても厳格な入国規制によりビジネスパーソンの入国にスピード感が無い事が、一つの大きな成長への足かせとなっていることは否めません。その一方で感染が拡大するミャンマーなどからの陸路・海路での入国規制が厳格に行われておらず、厳格化が重要な課題となっています。


【企業の採用動向】

12月に新型コロナウイルスの第2波が発生した影響により、多くの企業で出社勤務に戻っていたワークスタイルから、再び在宅勤務へと舵を切っています。また多くの工場などで部外者の訪問を禁止しているため、採用の選考プロセスが一時的に停止している企業が多く見受けられます。昨年の4月と5月にも同様の事象が発生しましたが、今回の感染拡大の方が規模が大きくスピードも速いため、予断を許さない状況です。

日本在住の人材を現地で採用する場合、タイへの入国は高額なコストがかかるためタイ在住者を好む傾向が高くなっています。通常タイ現地で日本人が転職する場合、転職者の全体の4割程度が日本在住の人材であったため、現在は採用が滞り、求人が減少する中でもやや売り手市場となっています。


【求職者の動向】

新型コロナウイルスの第2波の影響により、タイ人の転職に慎重な姿勢の傾向が出ています。転職後、もし新しい職場で活躍ができなかった場合、さらにその次の転職に成功できるかが不透明になっていることが要因です。

しかし、同時に求人も少ないため求職者側の売り手市場である状況は継続しています。また、徐々に緩和されてきていたタイへの入国を伴う転職(例えば日本在住の日本人など)も、第2波の影響で再度予断を許さない状況になっています。隔離施設の使用料、PCR検査、保険などにかかる費用は依然として高額で、採用企業もしくは転職者の負担になることから、転職活動が鈍化している状況に変化はありません。



■■インドネシア■■

新型コロナウイルスの感染者が増加し、第4四半期は採用活動が停滞


【求人数】

対前年四半期比 33%

対前四半期比 72%

JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵


現在、インドネシアのビジネス界はオムニバス法という雇用創出、経済成長を目的とした投資環境改善を盛り込んだ法改正が注目されています。昨年10月に国会でやや強引に承認された法改正ではありますが、それが引き金となり2020年第3期のインドネシアは、コロナ対策の行動規制に加え(一般企業は出社は社員の50%まで)、労働者によるデモで数日街が麻痺するなどビジネス界は影響を受けました。世界4位の人口ゆえに、感染者数も増え続けている状態で、規制も強化と緩和が繰り返されており、収束の見通しが立たない状況が続いています。


【企業の採用動向】

第4四半期は景気回復が期待されていましたが、10月に発生したデモの影響を受け企業の採用が停滞したことで、第4四半期の求人は減少となりました。また、2020年5月に開催される予定だった大祭が、人の移動を避けるため12月に変更されたこともあり、12月に移動する者は例年より少ないとはいえ、世界最大のイスラム教徒の人口で占めるインドネシア人にとって休暇のシーズンとなりました。日系市場においても2020年はほぼ通年で帰国ができなかった駐在員が、14日の隔離期間も含み数週間から1ヵ月間の長期休暇をとり帰国する人も多く、採用は一時停止となるケースも増えました。一方、2021年の事業戦略に応じた採用案件も、営業の人材を中心に一定数の依頼も受けています。


【求職者の動向】

コロナ禍でもインドネシア人の転職希望者は意欲的に活動をしているものの、業界や、転職先企業の給与や福利厚生など好条件な案件を求め慎重に選ぶ様子がうかがえます。最終面接は対面でも応じるものの、一次、二次面接はオンラインを希望する候補者が多いことが最近のインドネシアでの採用面接の特徴です。

日本人の転職希望者においては、コロナ禍において営業の補助的な役割を担っていた若手営業職経験者、またはハイスキルのシニア営業や管理部門人材の契約終了による登録が目立ちました。



■■ベトナム■■

市場の回復により、採用を再開する企業が増加


【求人数】

対前年四半期比 65%

対前四半期比 116%

JAC Recruitment ベトナム法人ダイレクター

Le Thuy Dieu Uyen(レー・トゥイ・ユー・ウィン)


2020年のGDP成長は2.9%増となり2011年以降最低値となりましたが、政府の新型コロナウイルスの効果的な封じ込め政策や経済振興策が奏功し、ベトナム経済はプラス成長を維持しています。プラスに転じたのは工業・建設業(4.0%増)、製造業(5.8%増)で、他にはサービス業の情報・通信が7.4%増、金融・銀行・保険が6.9%増と、これらの産業がベトナム経済の成長を維持しています。旧正月を機に国内需要向けの計画も増え、第4四半期から回復基調となっています。2021年に達成すべき具体的な目標としては、国内総生産(GDP)成長率6.5%増と、ベトナム全土の経済は全面的に回復傾向になることが予想されています。


【企業の採用動向】

2020年第2~第3四半期は多くの産業で新型コロナウイルスの影響を受けリストラを行い、スリム化した状態で事業を継続したものの、市場が復活基調になった以降も人員削減が影響し業績の回復が見込めないことから採用活動を再開する動きが目立っています。入国制限が行われていることに加え、海外からの入国者は2週間の隔離を経る必要があるため、採用計画を前倒しし、旧正月前にもかかわらず採用を実施する企業が増えています。採用を行っているのはIT・エネルギー・商社・不動産で、優秀な人材の確保に積極的で。新型コロナウイルスの影響で離職中の候補者が多いため、現在は買い手市場となっています。


【求職者の動向】

これまでは就職先を慎重に選定する、もしくは現職に留まりながら様子を見る転職希望者が多い状況でしたが、新型コロナウイルスの収束までまだ時間がかかる見込みであること、業績低迷の影響でボーナス支給の見込みがないことを理由に、第4四半期から転職活動を行っています。新型コロナウイルス感染拡大前に、相場より数倍ほど高い給与額を提示して優秀な人材を確保したスタートアップ企業の倒産が相次ぎ、それらの企業で就業していたIT人材の候補者が高い給与額を基に転職先企業と給与交渉を行うため、転職先が見つかない状況です。他の職種の人材は、転職先を探す際に会社の安定性を求める傾向が強く見受けられます。旧正月明けに転職を成功させるために、現在活発に活動を行っています。



■■中国■■

新型コロナウイルスの抑え込みに成功するも、依然渡航難による対外向けのビジネスの難しさが残る


【求人数】

対前年四半期比 80%

対前四半期比 106%

JAC Recruitment 上海法人総経理 小梁川 舞香


中国の新車販売台数は3年連続減少にも関わらず、20年の日系メーカーのシェアは拡大しました。自動車業界の好業績も影響し、在中日系企業の6割以上が20年の業績が好調という結果になりました。

一方、20年の労働者の1人当たり可処分所得は前年を大きく下回り、今後の経済回復は鈍い見通しです。国家統計局によると、感染拡大の抑え込みや経済対策、輸出の好調を追い風に消費は回復傾向ですが、その足取りは鈍く、通年では3.8%前後のマイナスとなる見込みです。家計消費が力強さを欠く中、中小企業の回復力の弱さが顕著です。21年も北京や河北省での感染拡大を受け、春節期間の移動自粛の動きも出ており、外食や宿泊、旅行など、サービス消費の回復にはなお時間を要する見通しです。


【企業の採用動向】

昨年後半から企業の採用意欲は活発さが継続しています。昨年前半までの離職者・欠員の補充が大半を占める状況から、業績回復・拡大による増員のための募集が増加し、求人内容に変化が生じており、その影響もあり対前期比の求人数は8%増となりました。中国市場で成長領域である医療・医薬業界の他、自動車業界、食品・日用品業界・機械設備など、多岐にわたる業界で採用意欲が増加しています。日本人向けの求人については、依然新規ビザ取得の難易度が高い状況が続いており、駐在員の派遣が困難であることを背景に、既に中国の就労ビザがある事を応募条件とする求人が増加傾向にあります。また、中国進出企業では、出張者の入国が難しい状況から、設立手続き及び新規採用に遅れが生じているケースが散見されます。


【求職者の動向】

20年は景気の回復を待ってから転職を検討する、と転職希望者に慎重な方が増えましたが、求人増加に伴い春節以降は例年通り転職希望者の動きも活発になる見通しです。中国国外での感染拡大を受け、一部都市・省では隔離期間の7日間延長や、新規ビザ取得には依然招聘状の取得が必要など、日本人求職者が面接のために短期での中国入国が困難な状況が続いています。それに伴い、中国ビザ保持者が中国・日本間でのWeb面接を経て、日本本社に1日も出社せずに中国国内で転職をするケースが増加傾向です。



■香港(中国香港特別行政区)■

採用・転職市場は抑制基調が継続


【求人数】

対前年四半期比 47%

対前四半期比 56%

JAC Recruitment 香港法人社長 渥美 賢吾


12月、新型コロナウイルスの第4波が発生。シンガポールとのトラベルバブルなど、回復基調であった社会状況・経済見通しが一転し、リセッションの長期化、更なる雇用環境の悪化などが懸念される事態に陥っています。大手航空会社における大規模な雇用調整が10月に発表されましたが、事前に想定されていたこともあり大混乱には至っていません。一方、11月までという期限付で実施されていた行政からの雇用援助金が延長されないことが決まり、12月から1月にかけて、更なる雇用調整の波が来ることが懸念されています。


【企業の採用動向】

前四半期末にマーケットは回復の兆しが見えていましたが、新型コロナウイルス第4波の影響もあり再び下降傾向です。また前述の雇用助成金の終了発表により、レイオフを計画・実施する企業も出始め全体的な求人数は依然抑制気味です。しかし、12月に入ってからも欠員補充を背景とした募集案件の発生が散見されるなど、例年よりも季節変動による動きは少なめです。12月はホリデーシーズンにもかかわらず、移動制限により各企業のマネジメント層などの意思決定権限者が香港にとどまったためか、休みの影響が低減し選考スピードは例年よりも早めとなる企業が増えました。


【求職者の動向】

大手航空会社の雇用調整発表前後、再就職先を探して動き始める同社出身者による登録者が増加しました。12月に入ってからは前述した雇用調整の事前告知を受け、転職活動を開始するケースも散見されるようになりました。失業率の高まりもあり、買い手市場への移行が始まる中で、現状維持か場合によっては前社の年収よりも低いオファーでも受諾したいと考える候補者が増加しています。また、賞与の期待ができないためか、転職意向はあるもののボーナス支給まで待つというケースが減少。これらは、以前の香港マーケットには見られなかったトレンドです。新型コロナウイルス問題が落ち着くまで転職は様子を見たいと考え、積極的な活動を停止している求職者は依然存在します。



■■韓国■■

求人件数は前期比、前年同期比で減少も

好調な業種で底打ち感が見られる


【求人数】

対前年四半期比 80%

対前四半期比 98%

JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎


昨年11月末に韓国銀行が「2020年経済展望報告書」で、2020年の実質GDP成長率見通しを昨年対比でマイナス1.1%、2021年の成長率見通しを3.0%としました。韓国経済は新型コロナウイルスの影響により、昨年の一年を通して民間消費が前年対比で4%程度減少し景気の回復が遅れていますが、一方でテレワークの普及により昨年を通して設備投資により、半導体需要を始め一部の業種では一定を維持しました。また、昨年下半期より輸出の数値改善が見られている為、今年は回復基調に転じる見込みです。


【企業の採用動向】

第4四半期の企業求人状況は対前四半期比で2%減とほぼ横ばい、対前年四半期比は20%減となりました。新型コロナウイルスの影響は残っていますが、求人件数の減少は底を打ち、緩やかな上昇傾向となっています。半導体を始め、IoTやデジタル分野、また若手営業職の増員採用も目立ってきており、一部の業界や職種で攻めの採用が増えつつあります。BtoCだけでなく、BtoBの製造業でもDX関連人材の採用を試みる企業も出始めており、今年も引き続きDX関連の採用は増加する見通しです。韓国では、1次面接をオンラインで実施する会社が増えてきています。


【求職者の動向】

昨年から新型コロナウイルスの影響を強く受けたサービス業を中心に求職・転職希望者が増えており、別業種への転職が進む見込みです。また、年末年始は転職マーケットは比較的緩やかですが、今年2月中旬の旧正月(ソルラル)休暇を境に、求職・転職希望者が動き始めることが見込まれています。新型コロナウイルスにより国家間の移動制限がかかり、日本在住の韓国人求職・転職希望者が在職中に面接を受けるための渡韓が難しくなっている影響で、日本の在職企業を退職した後、韓国に帰国し転職活動をする方が増えています。



■■インド■■

企業の経済活動が徐々に戻り、コア人材の採用活動が再開


【求人数】

対前年四半期比 99%

対前四半期比 109%

JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄


2020年3月以降インド全土のロックダウンにより企業の活動がほぼ停止し経済活動が大幅に落ちこみましたが、7月以降は段階的にロックダウンの規制が緩和され徐々に経済活動および個人消費が回復しました。経済状況を判断する一つの指標となる自動車販売台数をみると、2020年9月以降は昨年の同月比で約40%近い伸び率となりました。

新型コロナウイルスの感染状況については、1日当たりの新規感染者数がピークであった9月の10万人台の状況から、12月には3万人台まで減少。学校などの教育機関は依然として再開の目途が立っていませんが、ショッピングモールなど大型商業施設の営業再開、メトロの運航などにより第2波の感染拡大の懸念はありますが、このまま新規感染者数が減少し続ければ、景気回復傾向の持続が期待できる状況にあります。


【企業の採用動向】

ロックダウンの影響により今後の事業再開や行政回復の見通しが立たなかったことから、80%近くの企業が採用活動を保留した時期と比べ、10月以降は徐々に採用活動を再開する企業が増え、対前期比の求人数は9%増となりました。採用動向として顕著であったのが、一時日本に帰国中の日本人が多い中、現場とのコミュニケーションで祖語が生じ、特に経営層と現場とのギャップを軽減するための日本語力を持つインド人の採用や、製造管理や品質管理に関連するポジションの採用活動を再開しています。

一方で、日本人の採用については新型コロナウイルス感染拡大前と変わらず、ほとんどの企業が、候補者とオンライン面接を重ねながら入社のタイミングを調整するスタイルを取っています。特に管理部門に関してはリモート業務であっても支障をきたさないため、一時的に日本本社で引継ぎ業務を行い、新型コロナウイルスの状況を見て、再度渡印するなど柔軟に対応しています。


【求職者の動向】

新型コロナウイルスにより企業に頼らないキャリア形成を考え、海外での就業を希望されている候補者が増加傾向にありました。特に経済成長の著しい環境に身を置き、希少価値の高い人材になりたいと考え、ビジネスで英語が用いられているインドを就職先の国として考えるアジア周辺国の候補者による登録が増えています。一方で、インドでの転職や就職には新型コロナウイルスの感染状況やビザの取得状況についても考慮する必要があり、「状況をみて転職時期を判断する」と、慎重に状況を見ながらインドでの就職・転職に向けてじっくりと準備を行っている傾向が多く見られました。



■■日本■■

新規求人数は昨年並みに回復したが、各社は厳選採用の姿勢


【求人数】(日本企業の海外事業関連求人)

対前年四半期比 114%

対前四半期比 85%

JAC Recruitment(日本) チーフアナリスト 佐原 賢治


7月下旬をピークに減少傾向に転じていた国内の新型コロナウイルス新規感染者数は、10月下旬以降再び増加に転じ、年末には過去最高を更新しました。それに伴い夜間外出自粛等の影響を受ける飲食業界や、GoToトラベルキャンペーンなどの政策効果によって持ち直しの兆しを見せていた運輸、観光業界の業績が再び冷え込むことが危惧されます。一方、中国経済の回復や、EV(電気自動車)化の加速、オンラインコミュニケーションの増加などから、自動車、半導体、建機・農機などの需要が回復しており、関連する分野では完成品のほか資材・生産財を製造するメーカーで海外生産や輸出が増加しています。内閣府が12月10日に発表した法人企業景気予測調査では、10-12月期の景況判断指数がプラス11.6と前期のプラス2.0からさらに上昇しましたが、中小企業に限ればマイナス15.5と景気の下降を予測する経営者が依然として多く、大企業との格差が顕著です。一方、人材については企業規模に関わらず「不足」と感じる企業が多く、中小企業を中心に「複雑な経営環境」が続いています。


【企業の採用動向】

2020年11月の有効求人倍率は1.06倍(全国)と8月から0.02ポイント上昇しましたが、昨年同時期からは0.51ポイント下降しており、労働市場における環境は昨年までと大きく異なります。民間の調査によると、2022年卒の大学生・大学院生を対象とした新卒採用見通しで、「減る」とした企業が前年よりも4ポイント増えて11.6%、また「わからない」が6.4ポイント増えて26.1%だった通り、新型コロナの影響で採用を抑制したり採用計画そのものを立てられない企業が増えています。当社に寄せられる新規求人申込(日系企業の海外事業要員)は、7-9月期比では反落(85%)したものの前年同期比では14%増加しました。管理職や各分野の専門職を主な対象とする当社の統計は、労働市場全体を表す有効求人倍率とはやや趣を異にするものではありますが、主に製造業において、海外現地法人の「自立化」のための支援体制の充実や、サプライチェーンや法務・税務といったアフターコロナに見込まれる新たなリスクに対応するための要員として、海外勤務経験者など海外事情に通じた人材が求められています。またCASEやIoTなど先端分野における国際連携を促進するR&D要員(デジタル系人材)などの求人も一層増加しています。


【求職者の動向】

10-12月の新規求職者(海外事業経験者の登録者)数は、前四半期比12%増、前年同時期比では40%増と大幅に増加しました。在宅勤務やオンラインコミュニケーションツールの普及により、転職相談の時間と機会が増えたことが要因のひとつと考えられますが、各求職者の動きは慎重で、転職は状況次第という姿勢が目立ちます。また先述の高度専門分野や海外ビジネスなどの知見・経験を有する人材には選択肢も多いことから獲得の難易度も高いままで、採用企業においては募集から入社までのリードタイムを長めに想定しておく必要があります。



各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化など)により、意図的に減る場合もあります。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。



■株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて

1988年設立。スペシャリストや管理職の人材紹介に特化し、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」のビジネスモデルとして国内最大規模の東証一部上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介も強みの一つで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。外資系企業の人材紹介に特化したJAC International、ジョブサイトの「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング、英国、ドイツおよびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdのグループ会社を傘下に、世界11ヵ国、24拠点で事業を展開するグローバル企業です。


http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)

http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)

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