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フロスト&サリバン  アジア太平洋地域の決済サービス企業における2021年の成長機会 についての論説を発表

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米国に本社を置くビジネスコンサルティング企業、フロスト・アンド・サリバン・ジャパン株式会社(所在地: 東京都港区、代表取締役:ロビン・ジョフィ)(以下、フロスト&サリバン ジャパン)は、「アジア太平洋地域の決済サービス企業における2021年の成長機会」についての論説を発表しました。

近年、アジア太平洋(APAC)地域の決済サービス産業は劇的に進化しました。業界企業の既存のパラダイムは、急速に拡大するフィンテック企業の挑戦を受けました。老舗金融機関はフィンテック企業のような敏捷性を持ち合わせておらず、テクノロジー導入に後れを取りました。テクノロジーの破壊的影響は、これらの業界の既存企業に、ビジネスモデルの再考と、変化を続けるビジネス環境への対応を迫りました。

低価格のスマートフォンおよびデジタル決済技術により、非銀行組織でもモバイルアプリを使い、料金の支払い、現地送金などの金融取引が可能になります。ほぼ誰でもデジタルによる取引ができる機能は、APAC地域で国を横断した金融サービスの拡大を実現する鍵となります。

通信会社は初期の決済エコシステム構築に重要な役割を果たしましたが、その役割は急速に変化しています。APAC地域では、GCashを提供するフィリピンのGlobe Telecomや、ViettelPayを提供するベトナムのVietellなど、幾つかの通信会社がデジタル金融サービスにて成功を収めています。

しかし、変化する環境に迅速に対応し決済業界で存在を維持できない通信会社も多く見られます。決済サービスの停止、株式の売却、決済業界における成長に必要な競争力とテクノロジーを持つフィンテック企業との合併を決定した通信会社もあります。

例えばDigiは戦略の変更に伴い、2019年11月にモバイル決済サービスのVCashを停止しました。別の例では、Smart Axiataは2020年初めに、カンボジアのモバイル決済サービスプロバイダーであるPiPayと子会社のSmartLuyの合併を決定しました。

生体認証およびトークナイゼーションの導入により、新興国を含めたAPAC地域のモバイルおよびオンライン決済は変革しました。例えば、ミャンマー政府は生体認証を利用したデジタル身分証明(ID)システムを国民向けに開始し、電子身分確認プロセスを強化しようとしています。ラオスの決済サービスプロバイダーのKiWiPayは、AliPayの顔認証決済システムを活用した旅行者のビザ手続きを実施するために、Alipayおよびラオスの移民局と提携しました。

更に、業界の大手企業によるオープンアプリケーションインターフェイス(API)プラットフォームの開発により、決済システムのインフラと市場へ提供するサービスが向上しました。また、Eコマースでの決済使用事例を増やす後押しとなっており、取引量の増加により売上増加に貢献するでしょう。

決済の相互運用性に関しては、アセアンによるアジア決済ネットワーク(APN)のような重要な取り組みが始まっています。このような取り組みにより、東南アジア域内での簡単な越境決済、モバイルを利用した決済の追跡、そしてリアルタイムの越境代金回収ができるようになるでしょう。

決済サービスプロバイダーの観点から見ると、これらの動向はビジネスの成長をもたらし、更に、市場に総合的な決済サービスを提供するための道を開くでしょう。それに加え、新型コロナのパンデミックは業界に技術変革をもたらしました。例えば、多くの消費者が外出を控えたことにより、「モバイル送金」が広く利用されるようになりました。

以下は、私達が考える、決済業界の3つの重要な成長機会です:
・まだカバーされていないセグメントのソリューションを開発する。
デジタルエコノミーは近い将来急速に成長すると予測されます。東南アジアでは、インターネット経済は2017年の500億ドルから、年平均成長率18.9%で、2025年までに2000億ドルに成長すると予測されます。農村部の金融分野は非常に大きな市場潜在性を秘めています。東南アジアの人口の約63%が農村部に住んでいます。[1] これらの要因を総合すると、決済サービスプロバイダーにとって市場潜在性があることを示しています。代理店のネットワークを活用し、まだソリューションを提供しきれていない地域に金融ソリューションを提供することにより、サービスプロバイダーは、決済市場のエコシステムを成長させることができるでしょう。

・モバイル送金および越境決済。
もう何年も、移民労働者にとって送金サービスは不可欠なサービスです。最新の国連(UN)のデータ[2]によると、海外への移民の数は世界的に大きく増加し、2010年の2.21億人から2019年には2.72億人となりしました。国際送金サービスへの便利で迅速なアクセスは、本国にいる彼らの家族をサポートするために重要なサービスです。そのため、越境決済の需要は拡大しています。決済サービスプロバイダー間の相互運用性は、国を超えた業界関係企業の協力およびパートナーシップを通じて実現できます。APAC地域の政府間(特に中央銀行)の協力は、サービスプロバイダーが直面する異なる決済システム間の相互運用性の課題を解決する支援となるでしょう。

・仮想クレジット/デビットカード決済ソリューション。
仮想クレジット/デビットカード機能を備えたスーパーアプリを開発することにより、決済業界企業はオンライン決済を支配できる可能性があります。予測分析または過去数年のデジタル決済の行動分析などのデータ分析ツールを活用することにより、決済プロバイダーは、価値ある情報を活用し顧客サービスを向上させることができます。クイックレスポンス(QR)コードなどの決済テクノロジーと生体認証の利用は拡大し続けるでしょう。分析に活用できるデータが多くなるほど、分析にかかる時間がより重要になります。テクノロジーの発展により、ビジネスにおけるデータの照合プロセスの自動化が実現し、より良い顧客体験を生み出すことにつながるでしょう。

先進的なテクノロジーの急速な拡大と変わりゆく消費者行動により、明らかにAPAC地域の決済業界の変革が進んでいます。2021年までに、APAC地域のモバイル送金と越境決済市場は、前年対比で7.5%増加し、2950億ドルに達すると予測されます。[3] これらの機会は、顧客の期待に見合う様々な決済ソリューションを提供すると同時に、ビジネスの成長を持続するための新たな収益の流れを創り出します。

機会を逃さないための戦略に関するフロスト&サリバンの考察は以下の通りです:
決済業界での成功は、この業界エコシステムのパートナーに依存します。そして、全ての顧客セグメントに適した決済製品/サービスの革新、改善のためにステークホルダー(通信会社、銀行、金融機関、販売業者、政府)と協力することが不可欠です。すでにいくつかの決済サービスプロバイダーは、このエコシステム内の重要な企業と協業し、パートナーシップの恩恵を受けています。この戦略は、新たな製品/サービスを迅速に上市することを可能にし、サービスプロバイダーに、「最初にアクションを起こし」そして「最初に商業化する」ベネフィットをもたらします。

例えば、ミャンマー郵電公社(MPT)の子会社MPT Moneyはこの戦略を採り、CB BankやAYA Bankなどの地方銀行と協力し、ミャンマーのMPT Money利用者に対してシームレスかつ便利な入出金サービスを提供しています。このサービスでは、利用者が自身のeウォレットからお金を引き出す必要がある場合、ユーザーの利用している銀行のATMでお金を引き出すことができます。これにより、既存の出金手段を補完することができ、まだサービスが行き渡っていない顧客セグメントにもリーチすることが可能です。更に、MPT Moneyは、ミャンマー全土の強力な販売網および流通網により、2,000万人のモバイルユーザーにサービスを提供しているMPTの全国的なモバイルネットワークも活用できます。これにより、MPT Moneyは迅速に市場を獲得することができました。

第2に、決済サービスプロバイダーは現在、より効率が高く迅速なプロセスを求める消費者に応えるため、デジタル金融サービス業界にイノベーションをもたらす新たなビジネスを模索しています。例えば、2020年6月にMPT Moneyは、ローン支払いサービスの需要を掘り起こすためミャンマー農業開発銀行(MADB)と提携しました。MADBは、MPT Moneyと連携することで、利用者が何の手数料を支払わず、既存の銀行への支払いのサービスの費用を削減しました。これにより、特に農村部において、現金への依存を減らし、利用者にデジタルエコノミーに参加してもらうことが可能になります。

第3に、決済サービスプロバイダーは、ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)の戦略を活用しようとしています。決済サービスプロバイダーは、製品ポートフォリオを向上させサービスを拡大させる、統合的なデジタル金融サービスを提供します。この戦略は、貯蓄、クレジットサービス、マイクロ保険、モバイルコマース、資産管理などの基本的な金融サービスへのアクセスを拡大することができます。決済サービスプロバイダーは、これらのサービスをデジタルプラットフォーム上で提供することにより地元の経済開発にて重要な役割を担い、自国の経済成長に貢献することができます。

最後に、ボーダーレスな世界が広がる中、決済サービスプロバイダーは、近隣国、特にタイ、ベトナム、ラオスなどの東南アジアの新興国への事業拡大を開始しました。これらの国々ではデジタル金融サービス、特にモバイル送金および越境決済の需要が拡大しています。決済サービスプロバイダーは、大規模な越境決済のチャネルを持つ非政府通信企業やフィンテック企業などの、業界の主要企業との戦略的パートナーシップを事業拡大に活用できるでしょう。これにより、需要、供給の両面をカバーできる金融サービスのエコシステムを構築することができます。

結論として、決済サービスの重要性は過小評価できません。決済サービスプロバイダーは、利用者にシームレスな体験を提供し、戦略的パートナーシップによりそれを強化することにより業界を前進させる役割を担うことができます。そして、絶えず変化する顧客の期待に応え続けることで、業界に利益をもたらすでしょう。

[1]Environment, women and population: an integrated reality, http://www.fao.org/3/x0178e/x0178e02.htm Accessed on 2nd Oct 2020
[2] The Number Of International Migrants Reaches 272 Million, Continuing an Upward Trend in All World Regions, Says UN https://www.un.org/development/desa/en/news/population/international-migrant-stock-2019.html , Accessed on 24th Sept 2020
[3] World Bank Predicts Sharpest Decline of Remittances in Recent History https://www.worldbank.org/en/news/press-release/2020/04/22/world-bank-predicts-sharpest-decline-of-remittances-in-recent-history, Accessed on 6 Oct 2020
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【著者】DEWI RENGGANIS

デウィ・レンガニスは、フロスト&サリバンICT部門のインダストリーアナリストであり、現在、テレコミュニケーションとペイメント分野、特にモバイル&ワイヤレス通信、モバイル決済、デジタルウォレットの領域に関する調査に従事している。金融テクノロジーおよびテレコミュニケーション業界で10年を超える経験を持ち、業界の大手企業の成長戦略の立案および実行に協力してきた。
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フロスト・アンド・サリバンについて
フロスト&サリバンは独自のリサーチに基づいて企業のビジネスを成長に導くグローバルな知見を提供し、ビジネスの新たな成長機会の創出からイノベーションの実現までを支援する、リサーチとコンサルティング機能の両方を兼ね備えた企業のナレッジパートナー。世界40拠点以上のグローバルネットワークを軸に、世界80カ国ならびに300に及ぶ主要な全てのマーケットを網羅することで、メガトレンドや海外新興市場の台頭、テクノロジーの進化などのグローバルな変化に対応し、企業がグローバルなステージでビジネスを成功させるための360度の視点に基づいた知見を提供しています。
フロスト・アンド・サリバン・ジャパン株式会社
設立:2014年1月
沿革:2009年3月 日本支社「フロスト&サリバン インターナショナル」設立
2014年1月 日本法人「フロスト&サリバン ジャパン株式会社」設立
代表者:ロビン・ジョフィ(代表取締役)
所在地:〒107-6123 東京都港区赤坂5丁目2番20号 赤坂パークビル23階
URL: https://frost.co.jp/
本リリースに関するお問い合わせ
フロスト・アンド・サリバン株式会社PR事務局(SivanS株式会社内)
担当:ジャガーナウス・下村
Email: press@sivans.jp
フロスト・アンド・サリバン・ジャパン 株式会社

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