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報道関係者各位
プレスリリース

2018.06.28 16:30
連合(日本労働組合総連合会)

2013年に改正労働契約法が施行され、第18条では、同じ事業主で契約更新が繰り返されて通算5年を超えた有期契約労働者は、本人の申し出によって無期雇用として働けるとされており、2018年4月1日以降、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる権利を有する労働者が生じることとなりました。そこで、日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津里季生)は、無期労働契約への転換が始まって以降の、有期契約労働者の改正労働契約法の認知状況や改正労働契約法についての考えや実態を把握するため、2013年および2017年に行った調査に続き3回目となる「有期契約労働者に関する調査2018」を2018年5月16日~5月17日の2日間でインターネットリサーチにより実施し、全国の20歳~59歳の有期契約労働者(週20時間以上労働する民間企業の有期契約労働者)1,000名の有効サンプルを集計しました。(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)


[調査結果]

≪2013年4月施行改正労働契約法の認知状況≫

◆2013年4月施行の改正労働契約法

 「無期労働契約への転換(第18条)」 内容の認知率は上昇も、内容を知らない有期契約労働者が依然68%

 「不合理な労働条件の禁止(第20条)」の内容を知らない有期契約労働者は83%


全国の20歳~59歳の有期契約労働者(週20時間以上労働する民間企業の有期契約労働者)1,000名(全回答者)に、2013年の4月(一部は2012年8月)に施行された改正労働契約法の内容を説明したうえで、【無期労働契約への転換(第18条)】と【不合理な労働条件の禁止(第20条)】の内容を知っていたか聞きました。


まず、【無期労働契約への転換(第18条)】についてみると、「ルールの内容まで知っていた」は31.7%(昨年は15.9%)、他方、「ルールができたことは知っているが、内容までは知らなかった」は37.0%、「ルールができたことを知らなかった」は31.3%で、合計した『内容を知らなかった(計)』は68.3%(昨年は84.1%)となりました。内容を知っていたという人の割合は昨年より上昇しているものの、内容を知らなかったという人の割合は68.3%と依然として高い水準となっています。

雇用形態別にみると、契約社員では、「ルールの内容まで知っていた」は昨年19.6%→今年44.0%と24.4ポイントの上昇となりました。


次に、【不合理な労働条件の禁止(第20条)】についてみると、「ルールの内容まで知っていた」は17.5%(昨年は12.3%)で昨年より5.2ポイントの上昇となりましたが、『内容を知らなかった(計)』(「ルールができたことは知っているが、内容までは知らなかった」35.2%と「ルールができたことを知らなかった」47.3%の合計)は82.5%と8割以上となりました。【無期労働契約への転換(第18条)】と同様に、内容を知っている人の割合は昨年より上昇しているものの、有期契約労働者の大多数がルールの内容を知らないようです。

雇用形態別にみると、契約社員では、内容まで知っていた人の割合が大幅に上昇しており、昨年13.3%→今年26.5%と13.2ポイントの上昇となりました。


◆改正労働契約法の認知経路 「マスコミ」5割強、「勤務先からの説明」4割

 契約社員では「勤務先からの説明」が昨年より14ポイント上昇


それでは、【無期労働契約への転換】や【不合理な労働条件の禁止】について知っていた人は、何から知ったのでしょうか。


【無期労働契約への転換(第18条)】と【不合理な労働条件の禁止(第20条)】のどちらか一方でもルールができたことを知っていた有期契約労働者(699名)に、ルールができたことやルールの内容についてどこで知ったか聞いたところ、「マスコミ(テレビや新聞報道など)」が最も多く51.6%、次いで、「勤務先からの説明」が40.1%、「インターネット(ホームページ、Facebook、Twitterなど)」が24.0%となりました。

雇用形態別にみると、派遣社員では「勤務先からの説明」が最も高く44.1%でした。


また、昨年の調査結果と比較すると、「勤務先からの説明」で知ったという人の割合は、契約社員において大幅に上昇しており、昨年29.4%→今年43.3%と13.9ポイントの上昇となりました。


≪労働契約法第18条(無期労働契約への転換/5年ルール)に対する意識≫

◆無期転換申込権の発生状況

 「無期転換申込権対象者となっている」は有期契約労働者の約2割、「無期転換申込権があるかないか、わからない」は4割半ば

◆無期転換申込権対象者の4人に1人が「無期転換を申し込んだ」と回答


【無期労働契約への転換(第18条)】について、同じ事業主で有期労働契約が反復更新されて、通算5年(2013年4月1日以降に開始した有期労働契約対象)を超えたときは、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換できる権利(無期転換申込権)が発生しますが、2018年4月1日から本格的に、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる権利を有する労働者が生じています。


そこで、全回答者(1,000名)に、2018年4月以降の無期転換申込権の発生状況を聞いたところ、「無期転換申込権対象者となっている」は17.5%、「無期転換申込権はまだ発生していない」が36.2%、「無期転換申込権があるか、ないか、わからない」が46.3%となりました。自身に無期転換申込権があるのかどうかがわからないという人が多いことが明らかになりました。


また、無期転換申込権を持っている175名について、無期転換の申し込み状況をみると、「無期転換を申し込んだ」が26.9%、「無期転換を申し込んでいない」が73.1%となりました。無期転換申込権を持っている人の4人に1人が申し込みを行ったようです。


◆「無期労働契約への転換(第18条)」に対する考え

 「待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」 同意率は約6割


続いて、全回答者(1,000名)に、【無期労働契約への転換(第18条)】についての考えを聞いたところ、【契約期間が無期になるだけで待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い】では、「非常にそう思う」が22.1%、「ややそう思う」が35.6%で、合計した同意率は57.7%となりました。一方、【無期契約に転換できる可能性があるのでモチベーションアップにつながる】では、「非常にそう思う」が9.0%、「ややそう思う」が32.0%で、同意率は41.0%でした。【無期労働契約への転換(第18条)】に対して、“待遇が正社員と同等になるわけではないから意味がない”といった否定的な考えを持っている人が約6割となっていますが、“モチベーションアップにつながる”といったように前向きに捉えている人も4割と少なくないことがわかりました。


≪労働契約法第20条(不合理な労働条件の禁止)の施行状況≫

◆労働条件や福利厚生、教育訓練で正社員との格差あり

 「ボーナスの支給対象になっている」は3割半、「教育訓練の対象になっている」は約5割にとどまる


2013年4月の改正労働契約法では、【不合理な労働条件の禁止(第20条)】(有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルール)について規定されています。有期契約労働者の、職場の制度や施設の利用状況はどのようになっているのでしょうか。


まず、通勤手当やボーナス、退職金について、自身が支給の対象になっているか聞いたところ、【通勤手当の支給】では、『対象になっている(計)』(「正社員と同じ内容・基準で」と「正社員と異なる内容・基準で」の合計)が66.1%(昨年は60.8%)、「対象になっていない」が33.9%となり、【ボーナスの支給】では、『対象になっている(計)』が35.4%(昨年は28.9%)、「対象になっていない」が64.6%、【退職金の支給】では、『対象になっている(計)』が12.9%(昨年は11.6%)、「対象になっていない」が87.1%となりました。【通勤手当の支給】や【ボーナスの支給】は、有期契約労働者への制度適用が広がりつつあるようですが、依然として【ボーナスの支給】や【退職金の支給】が対象という有期契約労働者は少数派のようです。


次に、食堂や駐車場、休憩室といった施設について、自身が利用対象になっているか聞いたところ、【食堂の利用】では、『対象になっている(計)』が78.1%(昨年64.1%)、「対象になっていない」が22.0%、【駐車場の利用】では、『対象になっている(計)』が68.9%(昨年54.6%)、「対象になっていない」が31.1%、【休憩室の利用】では、『対象になっている(計)』が89.3%(昨年83.1%)、「対象になっていない」が10.7%となりました。【食堂の利用】や【駐車場の利用】、【休憩室の利用】といった福利厚生面でも有期契約労働者への制度適用が広がりつつある様子が窺えましたが、正社員と有期契約労働者との格差は存在しているようです。


また、慶弔休暇や教育訓練、健康診断についても聞いたところ、【慶弔休暇の取得】では、『対象になっている(計)』が61.4%(昨年55.1%)、「対象になっていない」が38.6%、【教育訓練】では、『対象になっている(計)』が52.7%(昨年49.1%)、「対象になっていない」が47.3%、【健康診断】では、『対象になっている(計)』が75.9%(昨年67.7%)、「対象になっていない」が24.1%となりました。【慶弔休暇の取得】や【健康診断】では格差改善の傾向がみられた一方、【教育訓練】では、依然として半数近くが「対象になっていない」と回答しており、教育訓練を受ける機会が与えられていない人は多いようです。


≪労働基準法第15条(労働条件の明示)などの認知状況・施行状況≫

◆賃金、労働時間その他の労働条件の通知 「文書でも口頭でも伝えられていない」10%

 契約更新の有無を「文書でも口頭でも伝えられていない」12%

◆有期契約労働者でも一定の条件を満たせば取得可能な休暇・休業の認知率

 「年次有給休暇」では8割強、しかし、「育児休業取得」では5割にとどまる


改正労働契約法に続いて、労働基準法第15条(労働条件の明示)に関する質問も行いました。


まず、全回答者(1,000名)に、労働基準法第15条(労働条件の明示)に関する内容について知っていたかどうかを聞いたところ、【会社は、雇う際に、労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を書面にして通知しなければいけないこと】では、「知っていた」が69.6%、「知らなかった」が30.4%となり、【会社は、雇う際に、労働者に対して、契約更新の有無(自動更新なのか、更新する場合があるのか、更新はないのかなど)を通知しなければいけないこと】では、「知っていた」が65.2%、「知らなかった」が34.8%となりました。


また、現在の職場で雇用される際に、これらの内容をどのように伝えられたか聞いたところ、「文書で伝えられた」が、【賃金、労働時間その他の労働条件の通知】では69.8%、【契約更新の有無の通知】では63.0%となり、どちらも最も多くなりましたが、「口頭でのみ伝えられた」という人(【賃金、労働時間その他の労働条件の通知】5.7%、【契約更新の有無の通知】11.4%、以下同順)や「文書でも口頭でも伝えられていない」という人(9.6%、12.2%)がいることも明らかになりました。


昨年の調査結果と比較すると、【契約更新の有無の通知】では、「文書でも口頭でも伝えられていない」という人の割合は、昨年7.0%→今年12.2%となっており、増加している様子が窺えました。


さらに、有期雇用契約者も一定の条件を満たせば“年次有給休暇”や“育児休業”が取得できますが、そのことを知っていたかどうか聞いたところ、認知率(「知っていた」)は、【年次有給休暇を取得できること】では81.2%、【育児休業を取得できること】では50.6%となりました。年次有給休暇を取得できることに比べ、育児休業を取得できることを知っている人は少ないようです。

また、有期雇用契約の女性に対して、妊娠したことや出産したこと等を理由として雇止め等の不利益な取り扱いを会社はしてはいけないことになっていますが、【妊娠や出産を理由とした雇止め等の不利益な取り扱いの禁止】の認知率は60.9%となりました。妊娠や出産を理由とした雇止め等の不利益な取り扱いの禁止について知っている人も少ないようです。


≪働き方・職場の満足度≫

◆正社員になれず有期契約で働く“不本意有期契約労働者” 契約社員の4割半

◆働き方の満足度 正社員になれず有期契約で働いている人の6割強が「不満」

◆正社員になれず有期契約で働く人の4割強が仕事のやりがいを「感じない」、現在の職場に「不満」も4割強


有期契約労働者は、現在の働き方や職場にどのくらい満足しているのでしょうか。


まず、全回答者(1,000名)に、【有期契約で働くことになった状況】を聞いたところ、『自ら進んで(に近い)』(「近い」と「やや近い」の合計、以下同様)が57.9%、『正社員になれなくて(に近い)』が28.3%、「どちらともいえない」が13.8%となりました。

雇用形態別にみると、契約社員では、『自ら進んで(に近い)』が33.8%に対し、『正社員になれなくて(に近い)』が44.7%となり、不本意ながら契約社員として働いている人のほうが多い結果となりました。


現在の働き方・雇用形態や今後の働き方・雇用形態については、どのように考えられているのでしょうか。

全回答者(1,000名)に、【現在の働き方・雇用形態の満足度】を聞いたところ、『満足(に近い)』が42.8%、『不満(に近い)』が29.8%、「どちらもといえない」が27.4%となりました。

不本意ながら有期契約労働者として働いている人(正社員になれなくて有期契約労働者になっている人)についてみると、『満足(に近い)』が12.7%、『不満(に近い)』が62.2%となり、現在の働き方・雇用形態に不満を抱えている人が多いことがわかりました。


また、【今後の働き方・雇用形態の希望】を聞いたところ、『このままでよい(に近い)』が45.2%、『正社員になりたい(に近い)』が29.9%、「どちらともいえない」が24.9%となり、今後も現在の働き方・雇用形態でよいと考えている人が多いことがわかりました。

不本意ながら有期契約労働者として働いている人についてみると、『このままでよい(に近い)』が10.3%、『正社員になりたい(に近い)』が67.5%となり、正社員での就業を希望する人のほうが多い結果となりました。


次に、現在の仕事にやりがいを感じるかどうかや、職場の満足度についても聞きました。


全回答者(1,000名)に、【仕事のやりがい】について聞いたところ、『感じる(に近い)』が39.6%、『感じない(に近い)』が28.4%、「どちらともいえない」が32.0%となり、【現在の職場の満足度】を聞いたところ、『満足(に近い)』が43.6%、『不満(に近い)』が26.7%、「どちらともいえない」が29.7%となりました。

不本意ながら有期契約労働者として働いている人についてみると、【現在の仕事のやりがい】では『感じない(に近い)』(42.0%)のほうが高くなり、【現在の職場の満足度】では『不満(に近い)』(41.3%)のほうが高くなりました。不本意ながら有期契約労働者になった人には、仕事にやりがいを感じられなかったり、現在の職場に不満を抱えたりしている人が多いようです。


◆有期契約労働者が職場に対して抱える不満 1位「給料が安い」2位「給料が上がらない」


では、有期契約労働者が抱える職場の不満とはどのような不満なのでしょうか。


全回答者(1,000名)に、現在の職場に対する不満を聞いたところ、「給料が安い」が最も多く46.1%、次いで、「給料が上がらない」が42.7%、「働きぶりが評価されない」が19.8%、「職場の人間関係が悪い」が18.5%、「正社員がちゃんと働いていない」が18.1%となり、給料に対して満足がいかないという人が多い結果となりました。

不本意ながら有期契約労働者として働いている人についてみると、「給料が安い」が63.3%(本意36.8%)、「給料が上がらない」が56.5%(本意36.6%)で、自ら進んで有期契約労働者として働いている人よりそれぞれ26.5ポイント、19.9ポイント高くなりました。また、「働きぶりが評価されない」(本意16.8%、不本意27.9%)や「正社員がちゃんと働いていない」(本意14.9%、不本意27.9%)でも不本意ながら有期契約で働いている人のほうが10ポイント以上高くなっており、自身が適切に評価されていないことや正社員の働きぶりに関する不満を抱えている人が多いことがわかりました。


[調査概要]

◆調査タイトル:有期契約労働者に関する調査2018

◆調査対象:ネットエイジアリサーチのモニター会員を母集団とする20歳~59歳の有期契約労働者(週20時間以上労働する民間企業の有期契約労働者)

◆調査期間:2018年5月16日~5月17日

◆調査方法:インターネット調査

◆調査地域:全国

◆有効回答数:1,000サンプル

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