【チャンスをつかむ10+1のルール】『夢をかなえる魔女のルール 　生きづらさを抱える２人の男女が人生を変えた物語』2025年10月7日刊行

株式会社あさ出版（代表取締役：田賀井弘毅、所在地：東京都豊島区）は、髙橋明希 著『夢をかなえる魔女のルール: 生きづらさを抱える２人の男女が人生を変えた物語』https://www.asa21.com/book/b665722.htmlを２０２５年１０月７日（水）に刊行いたします。

成功したい」「幸せになりたい」と願いながらも、努力が結果に結びつかないのはなぜか――。

その答えは、チャンスをつかむためのルールに基づいて行動していないからです。本書は、長年経営者向けのコーチングを行ってきた著者が、多くの人との出会いと体験を通じて導き出した「チャンスをつかむ10＋1のルール」を、物語形式でお伝えします。

舞台は東京の繁華街の路地裏にあるバー。そこにやってきた悩める男女二人と、魔女みたいなママとの物語を通して、読者に魔女のルールを紹介していきます。幸せになるためのルールとは何なのか。魔女はいったい何者なのか。物語を追ううちに自分自身に活かせるヒントが浮かび上がり、豊かな人生を手に入れるきっかけとなる一冊です。

※本書より一部抜粋

「どうして、いつも上司に𠮟られるのかなぁ。今日だって、俺はただ座って会議のことを考えていただけで怒鳴られたもんなぁ。ママ、どう思う？」

ママは若い男性のほうを見ずに、さっき帰って行った客のグラスをていねいに洗っている。流れる水の音で男性の声は届いていないようだ。

「今の仕事、自分には向いてないのかなぁ。でも、これといって得意なことはないし、辞めても就職できるところもなさそうだし。
　そもそも、ものすごい競争率のなかでやっとの思いで就職できた会社を簡単には辞められないし。世のなかって厳しいよなぁ」

右手にある灰皿は、吸い殻でそろそろ山ができそうだ。何か返事がほしいのか、男性はまたママに話しかける。
「ねぇ、ママ。俺、息を吸うだけで怒られているような気持ちになるんだよね。そんなにできない人間かなぁ。今の仕事、本当に向いていないのかなぁ。上司に文句を言われるたびに、自分が嫌になるよ。ママ、俺、どうしたらいいんだろう？」

ママは変わらず男性の話など聞いていないように、グラスを洗い続けている。

灰皿の横に無造作に置かれたポケットベルがブルブルブルッと震え出す。灰が今にも落ちそうになったタバコを慌てて揉み消し、男性は「またか」と斜め右にあるポケットベルの液晶画面に視線を落とす。

「アスアサカイギ７ジ」

左手のくたびれたベルトの腕時計に目をやると、すでに午後十一時になろうとしている。
「ふうっ」と大きくため息をついた後、「ママ、また来るね」と男性は立ち上がり、よれたコートに袖を通した。ママは大きな黒目で男性をしっかり見つめながら、一言だけ話す。

「あっちゃん、どんなときも自分から挨拶をするのよ」

ノブを回しながらつぶやく。
「わかったよ、やってみる。この間もママに言われたとおりにやってみたら、新しい契約が取れたからね」

店を出ていく背中をじっと見守るママは、男性の今後を応援しているようにも見えるが、あまり関心がなさそうにも見える。
男性はドアを出て、階段を見下ろす。足元を見ないと滑り落ちてしまいそうな急な角度がある階段を、目を凝らしながら下りる。

　いつも、最後の段を下りると、なんだか足元がすくむような感じがあるので、段差は均等ではなく少々高さに違いがあるのかもしれない。

「この階段、危ないよな」と思いながら、視線を駅のある方向に向けると、古ぼけたバーの看板が目に入る。

　看板には「またね」と、今にも消えそうな文字で書かれている。

株式会社武蔵境自動車教習所代表取締役社長、BRILLIANT HOPE,Inc. CEO
１９７６年東京生まれ。獨協大学経済学部経営学科卒業、早稲田大学大学院（ＭＢＡ）修了、法政大学大学院政策創造研究化研究員を経てスタンフォード大学に客員研究員として留学。現在は、人を大切にする経営学会にて『日本でいちばん大切にしたい会社大賞』審査員を務める。経営者向けの講演、記事執筆、社長のためのコーチとして経営者がイノベーティブに活躍できるよう日米での経験と知識を活かしてサポートしている。近年では、東京都が運営する「はたらく女性スクエア」にて、女性リーダーがさらに活躍するようにメンターとしても活動を行っている。テレビコメンテーターなどメディア出演多数。