「プレバイオテイクスは唾液の質を高める」 神奈川歯科大学が腸 - 唾液腺相関を発見

    業績報告
    2016年9月28日 10:30

    神奈川歯科大学大学院歯学研究科口腔科学講座環境病理学 槻木恵一教授および、神奈川歯科大学短期大学部歯科衛生学科 山本裕子講師の研究クループは、軟消化性糖類の1つあるフラクトオリゴ糖(FOS)を継続的に摂取することにより、口腔や上咽頭におけるウイルスや細菌などの侵入を粘膜表面で抑制する唾液IgA抗体の分泌量が増加するだけでなく、そのメカニズムとして腸管内での短鎖脂肪酸が重要な役割を果たす可能性を発見しました。

    二元配置分散分析の結果
    オリゴ糖などを摂取して効果を示すプレバイオテイクスは、腸管に対する効果が主と考えられていますが、唾液の質にも影響し感染防止に役立つことが分りました。

    本報告は、Nutrients 2016 Aug 17;8(8) にThe Salivary IgA Flow Rate Is Increased by High Concentrations of Short-Chain Fatty Acids in the Cecum of Rats Ingesting Fructooligosaccharides.として掲載されました。

    本研究成果は、2016年10月2日(日)開催の「唾液腺から考える健康づくり」において発表します。


    【背景】
    唾液中のIgAは、口腔や上咽頭における感染を防ぐ唾液中の因子として非常に重要です。その証拠の一つとして、唾液中のIgAが先天的に欠損するIgA欠損症では、インフルエンザなど上気道感染症を繰り返す症例があります。人類は、感染症との戦いであり、感染防止の最前線である唾液中のIgAの増加を図ることは、小児や高齢者など感染に弱い人の命を守るだけでなく、成人の健康にも貢献することが期待されます。研究グループは、唾液中のIgAを日常的に増やすには、食事が最も取り組みやすく簡便であると考え、食事要因による唾液中のIgAの増加について注目してきました。しかし、なぜ、食事要因が唾液中のIgAを増加させるか、そのメカニズムは充分明らかではありませんでした。今回は、近年健康効果において注目されているFOSを用いて実験的な研究を行いました。


    【研究の概要】
    AIN76のコーンスターチ15.0%とセルロース5.0%をグラニュー糖に置き換えた無繊維固形飼料を対照飼料とし、5.0%FOS添加飼料を作製しました。4週齢Wistar系雄ラットを2群(各群n=6)に分け、予備飼育後に各飼料を自由摂取させました。0、1、4、8週後に盲腸組織、盲腸内容物、顎下腺、唾液を採取し、IgA濃度をELISA法にて測定しました。また、盲腸内容物は各週のpHと8週後の短鎖脂肪酸濃度を測定しました。
    二元配置分散分析の結果、顎下腺重量あたりの唾液中IgA分泌速度は、FOS添加と摂取期間の間に交互作用が認められ(p<0.05)、1および8週後で対照区よりもFOS区の方が高い値が認められました(p<0.05、Tukey多重比較)。

    ▼二元配置分散分析の結果
    https://www.atpress.ne.jp/releases/112651/img_112651_1.jpg

    因果関係の解析手法であるベイジアンネットワークによる解析では、唾液中IgA分泌速度上昇の原因が、盲腸内容物中の短鎖脂肪酸濃度と盲腸内容物重量、およびFOS摂取であることが示されました。

    ▼唾液中IgA分泌速度に影響する因子
    https://www.atpress.ne.jp/releases/112651/img_112651_2.jpg


    【研究の成果】
    大腸の機能の多くは、大腸細菌の糖質発酵によって産生される短鎖脂肪酸によって維持されています。特に粘膜上皮細胞の増殖、粘液の分泌、水や塩類の吸収、腸管運動などに必須の栄養素とされています。また、腸管内のIgAの増加にも関与しています。一方、プレバイオテイクスは「大腸に常在する有用菌を増殖させるか、あるいは有害な細菌の増殖を抑制することで宿主に有益な効果をもたらす難消化性食品成分」と定義されています。いわゆるオリゴ糖類や難消化性デンプンなどの食物繊維類はプレバイオテイクスの効果を発揮する食品であり、これらの摂取により短鎖脂肪酸が産生され、腸管における免疫機能が高まることで健康効果が期待されています。

    研究グループは、この大腸での免疫機能の維持と関連する短鎖脂肪酸が、唾液中のIgAの増加と関連するという可能性を世界で初めて見出し、プレバイオテイクスが、口腔の健康にも関与することを示しました。本研究から、腸と唾液腺が密接な関連があり腸―唾液腺相関の存在が見いだされました。腸―唾液腺相関は、唾液中のIgAのモニタリングによってプレバイオテイクスの効果の指標になる可能性を期待させ、さらに唾液による免疫力の測定にも発展していく可能性を示しています。

    地域の歯科医院が、歯の健康だけでなく、唾液による全身の健康の維持管理を担う時代もそう遠くはないと考えられます。


    【研究成果発表について】
    本研究成果は、2016年10月2日(日)、「唾液腺から考える健康づくり」において発表します。

    日時:2016年10月2日(日) 14:00~15:30
    場所:ローズホテル横浜


    【用語解説】
    <フラクトオリゴ糖>
    ショ糖に1~3個の果糖が結合したもので、難消化性のオリゴ糖。にんにく、アスパラガス、ねぎ、たまねぎ、ごぼう、大豆などに多く含まれる。細菌による代謝で短鎖脂肪酸を産生する。

    <IgA分泌速度>
    唾液中のIgA量を唾液量で補正した値。

    <短鎖脂肪酸>
    大腸内で腸内細菌が食物繊維(難消化性糖類)を発酵する際に産生され、酢酸、プロピオン酸、酪酸がある。

    <ベイジアンネットワーク>
    因果関係を確率により記述するグラフィカルモデル。

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