報道関係者各位
    プレスリリース
    2021年3月24日 11:00
    東京大学グリーンICTプロジェクト NTTコミュニケーションズ株式会社

    東京大学グリーンICTプロジェクトとNTT Com、Smart City実現に向けた建物空間の「デジタルツイン」実証実験を開始

     東京大学グリーンICTプロジェクト(以下GUTP)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下NTT Com)は、Smart  Cityの実現に向けたデータ利活用の取り組みとして、現実世界をデジタルデータで仮想的に再現する「デジタルツイン」を、ビルなどの建物空間を対象に生成する技術の実証実験(以下 本実験)を、2021年3月より開始します。

     本実験では、建築物にかかわるBIM(※1)データや、センサーなどのIoT情報、位置情報などを提供する各種のデータプラットフォームを活用して、デジタルツイン・アプリケーション(※2)構築における、技術課題やプロセスを検討します。

     両者は本実験を踏まえ、将来に向けたオープンな共創を推進するために、技術の標準化に向けた提案を図るとともに、ユースケースの創出、さらにはさまざまな都市課題解決に向けたデータ利活用を推進していきます。

     

    1.背景

     GUTPでは、BIMをはじめとした建築物データの活用手法や、クラウドを用いたデジタルツイン・アプリケーションを構築するための研究開発を行っています。またNTT Comは、データの収集・蓄積・活用までを一元的実現できる「Smart Data  Platform」(※3)を提供しており、同サービスを活用したデジタルツインの社会実装を目指しています。

     現在、一般にデジタルツイン・アプリケーション構築における標準化された手法やプロセスは確立されていません。建築、設計、ビルサービスなどの分野から多くの企業・団体が参画する共創環境を実現するためには、アプリケーション構築技術の標準化が急務とされています。GUTPとNTT Comは、本実験を通じ、このような状況の解決を図ります。

     

    2.本実験の概要

     GUTPはNTT Comと実証実験環境を構築し、試験的なデジタルツイン・アプリケーションを作成します。実際にBIMを用いたアプリケーションの構築を行うことにより、最適な構築プロセスと手法に関する知見を蓄積し、標準化への提言に向けた取り組みを行います。

     さらに、作成したアプリケーションを用いて、実際にデジタルツイン空間上で、現実世界にある清掃ロボットを制御するなどの実験を、NTT Comの共創環境である「Smart City Lab (仮称)」にて行っていきます。

    想定している検証プロセスは、以下の通りです。


    (1)ジオメトリ(※4)生成

    LiDAR(※5)などを用いた点群(※6)の取得を行うとともに、それらのデータを活用することでBIMを生成し、デジタルツインに必要なジオメトリ抽出を行います。 

    (2)メタデータ生成

    BIMに付帯する空間構成や属性データ、テクスチャ情報といったメタデータの自動取得を試みます。   

    (3)IoTデバイスとの連携

    IoTデバイス(建物内センサー)の位置と、BIMや抽出したジオメトリ上の位置の紐づけを行います。    

    (4)アプリケーション開発

    ジオメトリやIoTデバイスを用いて、清掃ロボットとビル内のカメラなどの設備を連動させる機能の開発を行います。      


    <本実験のイメージ図>


    3.両者の役割

    GUTP:実証および研究計画の策定、技術検証の実施

    NTT Com:実証環境の提供(実証場所、センサー、ロボットなど)、「Smart Data Platform」環境の構築


    4.実施期間

    2021年3月~2021年9月

     

    5.今後の展開

     GUTPは、本実証実験の成果をもとに建物から収集するデータの活用手法標準化を目指し、オープンな環境で誰もがセキュアに建物空間のデータを活用し、アプリケーションが構築できる世界の実現を目指していきます。

     NTT Comは都市空間における各種データの利活用を支えるプラットフォームの提供とデジタルツインの活用を通じ、さまざまな都市課題を解決しSmart Cityの実現に取り組んでいきます。

     

    (※1): BIM(Building Information Modeling)とは、建物のライフサイクルにおいてそのデータを3Dモデルベースで構築管理する手法です。

    (※2): デジタルツインを生成するアプリケーション、あるいはデジタルツイン上で動くアプリケーションなど、デジタルツインに関わる広範なアプリケーションを想定しています。本実験では、一例として、デジタル空間上から、現実世界の清掃ロボットを制御するためのアプリケーションを作成します。

    (※3):Smart  Data Platformは、データ利活用に必要な収集・蓄積・管理分析におけるすべての機能を、ICTインフラも含めてワンストップで提供し、データ利活用によるDX実現を加速させるプラットフォームです。詳しくは下記Webサイトをご覧ください。


    <Smart Data Platform>

    https://www.ntt.com/business/sdpf/


    (※4): ジオメトリとは、建物や構造物の外形を構成する、点や直線、曲線、面などの位置や長さ、関数や数式のパラメータなどを表すデータ群を表します。

    (※5):LiDAR(Light Detection and Ranging)とは、レーザー光を走査しながら対象物に照射してその散乱や反射光を観測することで、対象物までの距離を計測したり対象物の性質を特定したりする、光センサー技術です。

    (※6):  点群とは、点の集まりのことです。本実験においては、現実の空間や物体をLiDARなどでスキャンし、三次元の座標などを持ったおびただしい数の点の情報として取得します。