印刷する

報道関係者各位
プレスリリース

2014.06.19 11:00
株式会社 医学生物学研究所

 株式会社 医学生物学研究所(本社:名古屋市中区、代表取締役社長:佐々木 淳)は、当社子会社のG&Gサイエンス 株式会社(本社:福島県福島市、代表取締役社長:阿部 由紀子)と共同で、最新の研究成果に基づき、大腸がん治療に用いる抗EGFR抗体薬の投薬判断に有用なRAS(KRASおよびNRAS)遺伝子の変異を検出する試薬(本試薬)を開発いたしました。
 本試薬は、欧州で体外診断用医薬品に必要な要求事項を満たし、6月13日に欧州指定代理人を通じて当局へCEマーク登録(製品名:MEBGENTM RASKET KIT)の通知が完了するとともに、日本国内においても体外診断用医薬品の製造販売承認を申請しましたのでお知らせいたします。


 大腸がんの治療には、がん細胞の増殖に関係する特定の分子を標的とした治療薬(分子標的薬)として抗EGFR抗体薬が使われています。抗EGFR抗体薬は、がん細胞が増殖するために必要なEGFRからのシグナルを遮断することでがん細胞の増殖を抑え、結果として細胞死を誘導して治療効果をあげます。しかし、シグナルを伝達する分子の一つであるKRAS遺伝子のエキソン2に変異が生じると、抗EGFR抗体薬ではがん細胞の増殖シグナルを遮断することができなくなり、治療効果を示さなくなることが知られています。このことから投薬前に当該変異の検査が必要とされて広く行われるようになってきました。当社でも2011年4月より同検査に対応した体外診断用医薬品『MEBGENTM KRAS遺伝子変異検出キット』を開発し、発売してまいりました。

 最新の研究成果では、抗EGFR抗体薬が効果を示さない患者の一部に、KRAS遺伝子のエキソン2の変異はないが、KRAS遺伝子エキソン3、4、NRAS遺伝子エキソン2、3、4の何れかの特定部位に変異があり、これら遺伝子の変異を調べることが抗EGFR抗体薬の治療方針決定に有用であることが報告されました。欧州では抗EGFR抗体薬の添付文書が改訂され、RAS遺伝子の検査を実施して、投薬する患者を選別する内容に変更されています。

 これらRAS遺伝子の変異を検査する必要性が認識されながら、これまで簡便に検査する体外診断用医薬品はありませんでした。

 このため当社では、RAS遺伝子の変異を同時に検出することが可能な試薬開発に取組み、日本国内で臨床性能試験を行い、既存の遺伝子検査法と高い相関を示す本試薬の開発に成功しました。
 本試薬は、Luminex(R)社のxMAP(R)技術を用いたPCR-rSSO法を原理としており、少量のDNAを用いて迅速に同時に複数の遺伝子変異を検査することが可能であるため、新たなRAS遺伝子の変異を1チューブで簡便に検出することが可能です。そのため、大腸がんの治療方針決定に必要なRAS遺伝子変異の情報をより早期に報告できるようになることが期待されます。

 今後、日本国内においても体外診断用医薬品の早期承認および上市を目指してまいります。


【用語説明】
・EGFR(上皮成長因子受容体、EGFR:Epidermal Growth Factor Receptor)
 細胞膜上に存在し、細胞増殖のスイッチの役割を果たす受容体タンパク質で、EGFなどの増殖因子が結合することで機能します。EGFRは正常な細胞にも存在しますが、一部のがんに於いて多く発現しており、がん治療の標的となっています。
・KRAS、NRAS
 EGFRからの細胞増殖シグナルを受け取り、下流へ伝達する役割を果たすタンパク質です。
・CEマーク
 欧州連合(EU)地域に販売(上市)される指定の製品に貼付を義務付けられる基準適合マークのことで、「EU(EC)指令」の必須安全要求事項(ESRs:Essential Safety Requirements)に適合したことを示します。
・エキソン
 遺伝子はエキソンとイントロンから構成され、そのうちエキソンは最終的にタンパク質に翻訳される領域を指します。
・シグナル伝達
 細胞外から受け取った情報(シグナル)を細胞内部へと伝え、その情報に従って細胞が応答(細胞の増殖、アポトーシス(細胞死)etc.)する様に変換されていく過程のことです。


【株式会社 医学生物学研究所について】URL http://www.mbl.co.jp/
 医学生物学研究所は、昭和44年に日本で最初の抗体メーカーとして設立され、現在では、免疫学的領域のみならず、遺伝子や、遺伝子の翻訳後修飾の領域にも事業を拡大して、臨床検査薬および基礎研究用試薬の研究・開発・製造・販売を行っています。

○基礎研究用試薬事業
 5,000種類以上の抗体や、特注抗体の受託製造、mRNAの同定キット販売、核酸オリゴや人工遺伝子など、多くの研究用試薬をグローバルマーケットに向けて販売しています。

○臨床検査薬事業
 自己免疫疾患、がん、代謝異常疾患等の検査薬、および遺伝子検査試薬の開発を行っています。自己抗体診断分野では国内トップメーカーとして製品ラインナップの充実を図り、難治性疾患の多い当該分野の医療に貢献しています。

○細胞診事業
 子宮頸がん検査のためのスライド標本作製システム、原因とされるウイルスの検出・判定試薬、および細胞採取ブラシ等を販売しています。

印刷する